EX.5 「旅立ち ーいざ駆け出しの街へー」
「えー!? ルミネルちゃん、この街から出るのかい?」
「はい。冒険者業に就こうかなと思ってます……」
「そうかい……うちの店も寂しくなるね……」
「今までお世話になりました!」
あの日から三年が経ち、私は十四歳となった。
魔法学校を卒業した私は、旅立つための手続きだったり、準備だったり、資金集めに働いたり……一年もかかってしまった。
今日で資金が集まったので、仕事をやめて――ついに明日ここから旅立つ。
「あ、ルミネル! 明日、旅立つ前に時間ある……?」
「大丈夫だけど……どうしたの?」
「ちょっと大事なお話!」
「ふーん」
最近のメイラが大事な話と言うときは、大抵は大事じゃない気がするが……今回は大事そうな気がした。
「ルミネル、おっはよー!」
「早くない!? まだ日が昇りきってないけど?」
「そんなことはいいから、いいから! 最後にさ、あの森に行こうよ。――昔、二人で遊んだあの場所。」
私たちは森の小川で水遊びをしたり、魚を獲ったり、子どものように遊んだ。
小川が朝日に照らされ、輝いている。
「ところで、メイラ? 大事な話って……?」
「うーん。ルミネルと遊びたかっただけ!」
「期待して損した……」
「てのは、冗談だよ!? ルミネルは、あの日のこと覚えてる?」
「あの日って……?」
「私が黒い羽の男に攫われて、ルミネルが私を助けてくれた日だよ。」
「うん、もちろん覚えてる。」
私は、絶対にあの日を忘れられない。
あの日、私の人生は分岐点に立たされた。"チカラ"を取るか、"友情"や"絆"を選ぶか。
「ルミネルは後悔してないの?」
「私を選んだこと……とか言ったら、怒るよ? 私は、一度も後悔なんてしてないよ。」
「ルミネル……!」
「メイラはそのすぐに泣く癖直そうね?」
「だって……! ルミネルって、かわいいんだもん!」
「理由になってないよ……」
「そうだった! はい、これ。」
メイラから袋を手渡された。
「メイラ、これは?」
「開けてみてよ!」
「うん!」
袋を開けると、そこには"漆黒のローブ"と"黒に赤を差した三角帽"が入っていた。
「ふふん! どうかな……そのローブと帽子。」
私は思わず、そのプレゼントに見惚れてしまった。
「もしかして……気に入らなかった……?」
「ううん……すごく……すごく嬉しいよ!」
「ルミネルが今着てるワンピースに合いそうかなと思ったんだ! 杖にも合いそうだしよかったよ!」
「メイラ……ありがとう!」
「いえいえー! 私も、もう少し落ち着いたら、旅立とうかな……」
「いいと思うよ? 私は、スウェリア行こうと思ってるけど……メイラは?」
「私もスウェリアかな……ねえ、ルミネル?」
彼女は私の目を見た。彼女の紫紺の瞳が輝いている。
「次、会うときは――親友として、そして、冒険者として会おうね! いってらっしゃい、ルミネル!」
私の旅は、ここから始まる。
「うん! いってきます!」
私は、荷物を背負って、馬車乗り場へと駆け出した――
 




