EX.3 「信じるべきモノ ー思い出の輝きー」
「私の信じるべきもの……」
何を信じればいいのかが、わからない。
――魔法を信じて放ったラディアント・バーストは、小さな光の球が出ただけだった。
――どうしても、自分だけは信じられない。
親友に嘘をつく自分を信じることはできない。
「ねえ、ルミネル!」
後ろから急に背中をポンと叩かれた。
「うわあ! め、メイラ……びっくりさせないでよ!」
「えへへ、ごめんごめん! あ……今、笑った。久しぶりに見たなー、ルミネルの笑顔。」
「そ、そうかな……?」
「うん。最近のルミネル、何か思い詰めてたみたいだしさ……」
「心配かけちゃって、ごめんね。」
「ルミネルの可愛げに免じて許してあげる! その代わり――少しだけ、森で遊ばない?」
――裏山
小さい頃、私とメイラはよくこの森で遊んでいた。
「懐かしいなあ……ねえ、ルミネル。この川!」
メイラが小さな川を指差す。
「もしかして――あのときの川?」
「そう! 私が追いかけっこしてるときに落ちた川!」
「懐かしいね……たしか、その後――メイラのこと助けようとして、私も落ちたんだっけ。」
「そうそう!」
この森で遊んだ懐かしい思い出が呼び起こされる。
昔遊んでいた場所が、今は秘密の修行場になっている……なんてことは、言えない。
「ねえ、ルミネル。大事な話があるの。」
「どうしたの? 急に改まって――」
メイラは私の頬を掴んだ。
「すごく大事な話だから、ちゃんと聞いて。」
「うん。わかったよ。」
「ルミネルが何を隠してても、ルミネルの身に何かが起きても、何があっても、私は絶対に――ルミネルのことを信じるからね。」
心にじんわりと響くその言葉。
信じるべきもの……それは、きっと――
「ルミネル? 急に泣き出して、どうしたの?」
「だって……だって……」
「はいはい。よしよし、わかったわかったー」
「子ども扱いしないでよ……」
「ふふっ、そうだね。じゃあ、今日はここまでにしよっか。」
メイラが笑う。その笑顔が、やけに胸に焼き付いた。
――まるで、この日が“最後”みたいに。
「ねえ、ルミネル? このまま、まっすぐ行けば、村だったよね!」
「うん! たしか、そうだったと思うよ。」
夕方は苦手だ。だって、別れる時間だから。
きっと、また明日も会える。そうわかっていても、苦手だ。
「ルミネル? どうしたの?」
「ううん、なんでもないよ!」
空から黒い羽が舞い降りる。
「これ、鳥の羽かな……?」
「いや、儂の羽であるぞ。」
「――え?」
空から声がした。黒い羽を持ったツノの生えた男がいた。
「我が主からの命により――」
その男はこちら側へと降りてくる。
「ルミネル! 下がってて、私の魔法で! 《ライトニングショット》!」
メイラは魔法を放つ。彼女が得意とする魔法だ。
「――この者の身柄はいただいていく。」
「メイラ!」
男は目にも止まらない速さで、メイラを人質に取ってしまった。
「メイラを返して!」
「断る。儂は、偉大なる魔導師アスター様の影。この者を助けたくば、この羽に示された場所へ……"一人"で来い――とのことだ。それでは、失礼する。」
アスター……もしかして、師匠が?
でも、どうして?
男に投げ渡された羽を見ると、この森の奥にある採石場跡が示されていた。
アスターがなぜこんなことをしたのか――そして、何よりもメイラを助けるために……私は採石場跡へと向かうことにした。




