EX.2 「師匠と弟子、私と親友。 ー信じる力ー」
「ルミネルー! おっはよー!」
後ろから元気のいい声が聞こえる。
「あ、おはよう、メイラ。」
「大丈夫? 昨日、ちゃんと寝た?」
「え?」
「すごく眠そうな顔してるよ? 何かあったの?」
言えない。アスターと結んだ契約――それは、"この出会いは誰にも話してはいけない"ということ。
「大丈夫だよ。早く学校行こ!」
「そう? なら、いいけど……」
いつも通りの授業。
そこで教わる魔法に、私の覚えたい魔法はない。
私の心は――まだ昨夜の光の中にあった。
「ねえ、ルミネル。やっぱり、何か隠してるでしょ? 授業中の顔つきがいつもと違ったよ?」
「……隠してないよ。ほんとに。」
「ほんとに? なんか……ちょっと遠くに行っちゃったみたいな顔してるよ。」
メイラに嘘をつくたびに、胸がちょっとだけ痛む。
授業に全く身が入らない……そして、そのまま放課後になってしまった。
「ねえ、ルミネル! 一緒に帰ろっ!」
「ごめん! 今日は用事があって! ごめんね、また今度ね。」
「そっか……じゃあ、また明日ね。」
「うん。また明日、メイラ。」
私は居ても立っても居られなくて、その場を逃げるように去った。
「――ルミネル、どうしちゃったんだろ……」
――夜
「――あら、今日も来てくれたのね……じゃあ、始めましょうか。」
「お願いします。」
嘘をついてでも、強くなりたい――見返してやりたい、そんな気持ち一心だった。
「魔法はね、信じることで形になるのよ。自分の力でも、運命でもなく――何かを信じる力があるかどうか。」
「信じる……力……」
「そう。それが、あなたに足りない最後のピース。」
「信じるって何を……?」
「何を信じるか――それは、ルミネル。あなた自身が決めることよ……」
「私自身が決めること……」
「そうよ。ただし、選んだ道は二度と戻れない。」
「……え?」
その沈黙のあと、アスターは小さく微笑んだ。
「――そう、時間は巻き戻せないのよ……」
その言葉には、何かに未練があるように見えた。
アスターの目は月明かりに照らされ、輝いていた。
何を信じるか――それは、魔法? もしくは、自分?
「いいかしら、光魔法はその人の心を反映するの。私は……信じるべきものを間違えた。ラディアント・バーストの全ては伝授し終えた、あとは信じるべきものを間違えないことね。」
そう言うと、アスターは霧深い闇へと歩み始める。
「待ってください! まだ、教えてもらいたいことが――」
「付いて来ちゃダメよ。最後にこれだけは教えてあげる――もしも、悩んだときはね。"自分自身の心にある深淵"に問いなさい。」
と言って、微笑んだ。
そして、そのまま――彼女は深い闇の奥底へと消えていった。




