EX.1『ラディアント・バースト ー少女を魅せた魔法ー』
私には誰にも言えない秘密がある。それはメイラにすら言えない。
「――また失敗か……」
秘密とは家の裏にある森で毎晩毎晩、魔法の特訓をしていることだ。魔法は知ってる、魔法を覚えるためのスキルポイントも足りてる…それなのに、魔法の名前は光らない。
今日もいつものように森で特訓をしていた。
そのとき、森の奥が激しく光った気がした。
「――今のは何?」
私はその"光"に興味と少しの恐怖を持った。
その光に導かれるように辿り着いた先には、角の生えた女性がいた。
「ハア……しつこいわね! ――て、アビスの子ども?」
その女性は、舌で唇を舐める。
「ねえ、あなた――いい魔力持ってるじゃないの。」
「え?」
驚いた。だって、あの女性の風貌は"魔族"のそれだった。それに、魔族は"魔力を多く持つ子ども"……もっとも、女子を好んで食糧にすると言われていた。
「あなた、何か悩んでる顔ね……私でよければ、話を聞かせてくれない?」
私は、魔族のことを信じられなかった。
それでも……この女性に話したら、楽になれる――何かが変わる気がした。
「――なるほどね、魔法が覚えられないの……もしかしたら、あなたの体に魔法の属性が合ってないのかもしれないわね。これが魔法石……触れてみなさい。」
私は紅く輝く石に触れた。
「……あれ?」
その石は輝きを失ってしまった。
「他にも触れてみなさい……」
私は、様々な色に輝く石に触れていく。それでも、輝きを失っていってしまう。
そして、最後に触れようとした優しい純白に輝く石に触れる。すると――その石は輝きを増したのだった。
「やっぱりね……たまにいるのよ、こんな感じの子が。」
「え……? こんな感じってどういうことなんですか?」
「あなたは、光の魔法以外は使えないの。」
「え?」
「たまにいるのよ、特定の属性魔法しか使えない子……そんな子達を、"特異点"って呼ぶのよ。」
「特異点……? 私が?」
「そうよ。あなたは光魔法を使う魔法使いの中では――"最強"よ。」
最強……その言葉に思わず、息を呑む。
私がそんな存在になれるのだろうか?
「光魔法は使い手が少ないの。だから、あなたがこの魔法を覚えれば、間違いなく、"最強"になれる。――あなたは、"最強の魔法使い"になる覚悟はかしら?」
「なります! 絶対に――なってみせます!」
「じゃあ、この魔法を見なさい……」
女性の髪が逆立つ。
「漆黒を裂く断罪の白、崩壊を孕む黎明よ。我が右手に集い、万象を焼き尽くせ――」
すごい……私も――
「――《ラディアント・バースト》。」
森の木々が轟音を立てて、薙ぎ倒れる。森中のモンスターが逃げるように駆け出す。
そして、森には眩い光が残っていた。
――こんな魔法を使いたい! 絶対に使ってみせる!
「……どう? あなたも――覚えたい?」
「……」
もうすでに答えは決まっていた。
「――はい! 私に――その魔法を教えてください!」
女性はにこやかに微笑んだ。
「わかったわ……私があなたを"最強"にしてあげる。私の名前は、アスターよ。」
「私は、ルミネルです! よろしくお願いします!」
私の運命が動き始めた気がした。




