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「ふむ……なるほど、なるほど! 実に興味深い!」
「悪魔にそんなジロジロ見られると気持ち悪いんだけど……」
「失敬失敬。加護のチカラで姿を変えられる……面白い以外ないではあろう!?」
「まあ、言われてみれば……そうだな。」
「その新たなチカラとやらを見せてくれたまえ。」
「いいけど……そんな期待されると緊張するな。」
「緊張など不要だ。吾輩の前で倒れぬ限り、恥ではない。」
「いや、ハードル高すぎるんだけど!?」
カシオが口元を緩め、手をひらりと上げる。
すると、訓練場に魔法陣が広がり、三体の木人形が召喚された。
「魔力反応を感知し、回避もする木人形だ。遠慮は無用だぞ。」
「よし……行くか!」
俺は呼吸を整え、構えを取る。
ベルトに手をかけ、叫んだ。
「女神・ミリアの叡智、その光を――我に!」
光の魔法陣が展開し、淡い銀光の装甲が体を包む。
背中に小さな羽が展開し、視界が一気に冴え渡った。
『――《ソフィアフォーム》、起動!』
「視界が……広い!? 敵の動きが、見える……!」
(ふむ、光のエレメントゆえか……知覚と反応速度の強化型――)
カシオが興味深そうに目を細める。
「タイガ、光を制する者は戦場を制す。お前の力、試してみるといい。」
「了解――行くぞっ!」
その瞬間、銀の残光を引いて駆け出した。
回避行動を取る木人形を先読みして、連撃を叩き込む。
フォームチェンジによる強化だけじゃない。
まるで――戦いの流れが“見えている”ようだった。
「……なるほど。知恵と希望、ね。」
「どうだ、カシオ。これが――“光の叡智フォーム”だ!」
「ふふ……上出来だ。だが、希望は光の中にこそある。ならば、闇に立ち向かう覚悟を、そろそろ学ぶべきだな。」
「……闇に?」
「そうだ。お前がその力を得たのは、偶然ではない――必然だ。」
そのとき、カシオの包帯の下から、わずかに紅い光が漏れた――。
「さて、打ち込み稽古と行こうか。その武器のチカラも使いこなすのだ。」
俺は右手を前に突き出す。
ベルトから剣が出て右手に収まった。
「それは貴様の戦闘スタイルを変えられる。タイガ、貴様に問おう。その姿と合いそうな武器はなんだ。」
「相手の行動が先読みできるなら、剣とか……?」
「確かに、その姿は知略に優れる……ただし、肉体的な強さは変わらないみたいだ。そこから考えられるのは――」
「遠距離系?」
「大正解だ。弓での予測撃ちを光のチカラで強化……百発百中の狙撃手となれるやもしれんぞ?」
「めちゃくちゃ強そうじゃねえか!」
「そうであろう? ならば――吾輩との実戦型訓練と行こうか、無論準備はできているな?」
「ああ!」
銀色の光が走り、オーロギアが弓へと姿を変える。弓を手にし、俺は構えを取る。
カシオは紅い魔力をまとい、妖しく輝いた。
「行くぞ、タイガ。悪魔相手に怯むなよ?」
「望むところだ……!」
瞬間、俺とカシオの間に稲妻のような衝撃波が走る。
光と闇――二つの力がぶつかり合い、訓練場を震わせた。
その日、俺は初めて“悪魔の力”と本格的に相対した。




