17-2
「なかなかやるではないか……!」
「まだまだ!」
(ふむ……悪くない。だが――)
カシオの手刀が、俺の視界を切り裂いた。
頬ににかすかな風圧。
「圧倒的に――経験が足りん。」
「経験不足?」
「いかにも。先ほどの戦いの最中、貴様の心を――読ませてもらった。」
「あのなかなかにハードな戦いの中で!?」
「貴様の過去についても見させてもらったぞ。実に興味深い過去であった……まさか、この世界とは違う世界の存在があるとはな。後ほど、じっくり談義させてもらいたいものだ。」
猫のような口元が、不敵に笑う。
「話は変わるが、貴様は――なぜ“ヒーロー”に憧れる?」
「理由……? それは――戦って、守る姿がかっこよかったから……とかかな。」
「やはりな。先ほど貴様の心を覗いて確信した。エンドウ・タイガ、貴様は――ヒーローの“姿”しか見えておらん。」
「――姿……しか?」
「タイガ、貴様は“憧れの原点”を忘れている。だが、それを思い出すのは他でもない――貴様自身だ。思い出せた時、きっと――お前は"ヒーロー"になれるはずだ。」
「ヒーローに?」
「……ヒーロー“みたいになる”んじゃない。“ヒーローになる”んだ。覚えておけ、タイガ。」
吾輩いいこと言った――みたいなポーズを取っている。
でも、その言葉が、まっすぐ胸の奥に突き刺さった。
それが何を意味するのか、まだわからないけれど――確かに、何かが変わった気がした。
「なんとなく、わかった気がする……」
「ふむ、少しは目つきが変わったな――では、もう少し打ち込み稽古と行こうか。」




