15-2
「か、かっこいー!」
俺が初めてヒーローを見たのは、三歳のときだった。
テレビの中で、赤いマスクの男が悪を倒していた。
キラキラと光るバイクにまたがり、ボロボロになりながらも立ち上がる姿に――心を撃ち抜かれた。
「――決めた! 俺、ヒーローになる!」
その言葉を、何の迷いもなく言えたのを今でも覚えている。
バイクに乗る"姿"がかっこいい。
チームで戦う"姿"がかっこいい。
ロボットに乗る"姿"もかっこいい。
巨大な敵と戦う"姿"も、かっこいい。
目に映るヒーローの"姿"は、どこまでも強くて、どこまでも輝いていて――俺の憧れそのものだった。
――それなのに……今の俺は、仲間を助けることさえできない。
……俺は、ただの無力で弱い人間だ。
嫌なことから逃げて、学校に行くことさえやめた。
ヒーローになるとか豪語したくせして、何も努力すらしなかった。
「大我ならきっとなれるわ! お母さん応援してるよー」
「大我はきっとすごいヒーローになるぞー! お父さんにはわかるんだー!」
やめてくれ……俺は弱いんだ。
全てを諦めて、呆気なく死んで――異世界に来たのだって、“何かができるんじゃないか”っていう、ただの淡い期待からだった。
……いや、きっと自分に、何も期待なんてしてなかったんだ。
それでも……
助けたい、仲間を――そして誰かを。
目の前で脅かされようとしている大切な仲間を――!
「――う……」
「さあ、見せてくれ! キミの芸術を!」
デリウスはルクスへと狂気的に語りかける。
「――るかよ。」
立ち上がるよりも先に口が開いて、勝手に言葉が漏れていた。
「んー? なんて言ったのかな?」
「させるかよ……って言ったんだ。」
俺は再びベルトを手にし、ゆっくりと立ち上がる。
「ははっ! キミ……まじ? もうボロボロなのに!」
「マジの大マジだ……」
後ろには、レイとルミネル、と……俺たちを守るために傷ついたカグラ。
そして、目の前にはルクスを手にかけようとしているデリウス……
ベルトを腰に巻いたとき――いつもと違う感じがした。
「――装……着!」




