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この異世界は、ヒーローでありふれている!  作者: やまぬこもち
第01話『最弱職と最上級職』
4/111

1-1

※ 2025/9/29 改稿しました

話数分割+地の文補強

異世界生活、たった二日目にして早くも壁にぶつかった。

――レイが起きない。

ギルドの受付は八時半から。早めに行って手続きを済ませたいのに、このポンコツ女神ときたら爆睡中だ。


「おい、起きろ! おい! まじで起きてくれ!」


それでも、レイは起きない。その上、大きないびきをして、腹を出して寝ている…正直言えば、今すぐにでもこいつを送り返して、今から使える能力と交換してほしい。


「もう、俺だけ手続き済ませに行くからな!」


俺はレイを置いて、手続きを済ませにギルドが貸し出してくれた部屋から出る。扉を開けると、すごく騒がしい。


 ギルドの中は朝から大騒ぎだ。

依頼書を睨んで作戦会議をするパーティー、報酬の分配でケンカ寸前の連中、朝飯がわりに酒をあおる猛者たち――カオスそのもの。

 でも、この雑多な空気は嫌いじゃない。

 俺もこの中に加われる。そう思うと気持ちが昂ってくる。


「あ、エンドウタイガさんですよね?」


「はい、そうです!」


昨日、担当してくれた受付のお姉さんだ。


「では、手続きを…あれ? レイさんは?」


「…起きなかったのでまだ部屋です。」


「……な、なるほど。では、先にエンドウタイガさんの手続きを済ませるとしましょうか。」


手続きか、めんどくさそうだ。役所のように数時間かかったりするものなのだろうか。すると、お姉さんが謎の機械を出した。


「ギルド登録手続きは、この機械を使って行います。では、こちらに顔を向けてください。」


俺が機械に顔を向けるとスキャンのようなものを開始した。


「えっと、今のは?」


「今のは冒険者カードの顔登録です。では、次にこちらの機械に手をかざしてください。」


俺が機械に手をかざすと、機械から文字が浮かび上がった。そして、カードに次々と文字が吸い込まれていく。


「では、このまま五分ほど待機してください。」


と言うとお姉さんは、レイがまだ眠る部屋へと入っていった。何やら悲鳴が聞こえた気がするが気のせいだろう。


機械の動作が終わったので、お姉さんが戻ってくるまで待機だ。


「ねぇ、タイガ。私のこと起こしてくれてもよかったと思うの…」


レイは水に濡れ、床まで水が滴り落ちている。


「俺は起こしたぞ。」


「え?」


「ところで、何があったのか聞いてもいいか?」


「あの人にね、思いっきり水をかけられたの。あの人は鬼だわ。」


レイはお姉さんに話しかけられるだけで、ビクッとしている。余程、怖かったのだろう。あのお姉さんは怒らせると容赦ない人みたいだから気をつけることにしよう……


「あ、エンドウタイガさん。お待たせしました。今確認しますね!」


これでようやく、俺の異世界でチヤホヤされる生活が始まるのだろう。そう思うとわくわくしてくる。


「えっと…選べるのが《オールマイティ》だけですね。」


「《オールマイティ》?」


名前からして、強そうだ。これは期待大だ。


「レイ、見ろよ。《オールマイティ》だってよ、なんか強そうじゃね?」


俺は機械に手をかざしているレイに自慢する。


「は?あんた何言ってんの? 《オールマイティ》は二番目の最弱職よ?」


「え?お、おい、まじか?」


「ええ、本当よ。真の最弱職はスキルを扱えなくてね、役職名は《収集家》って言うんだけどね、まあ弱いのよ。《オールマイティ》はこの世の全役職スキルを使えるの!」


「じゃあ、最強じゃね?」


「ただ、その代わりに、どの役職スキルも扱いにくく、本職にはどう足掻いても及ばない。その上、スキル習得に使うスキルポイントは本職の倍かかるの! だから、器用貧乏って感じね!」


「そ、そうなんですか?」


お姉さんは静かに頷く。


「《オールマイティ》以外は選べませんが……本当に登録しますか?この職を選ぶくらいなら冒険者を諦める方も多いんです。最弱職の代名詞ですから」


「――《オールマイティ》でお願いします…」


俺は半泣きくらいでそう言った。


「ま、まあでも、職業変更もできますから! 何かあったら言ってください!」


「……あ、ありがとうございます。」


…こんなのあんまりだ。


「ふう、終わった終わったー。」


レイも手続きが終わったようだ。


「…レイさん! 素晴らしいです!」


は?


「え? どれどれ?」


 周りの受付さんも集まってくる。そして、ギルド中の注目がレイに集まる。


「え? なんかすごいのでもあったの!?」


「はい、レイさん。あなたは…上級職の一つにして、ほぼ出てくることのない超レア役職です!」


「え? 何かしら何かしら! ほら言ったでしょ、タイガ! 私の凄さを思い知りなさい! きっと、役職は《女神》とかかしら!」


 ギルド内もお姉さんの話を聞いて、歓声を上げ、レイを見守る。


「では、役職を言いますね…レイさんの役職は《プロフェット》です!」


《プロフェット》…ゲームとかで聞いたことがある。たしか、預言者だ。預言者がレアなのだろうか。


「《プロフェット》は僧侶系や神聖系の最上級職で、僧侶系役職スキルも神聖系役職スキルも、全て扱うことができる最強クラスの職業です。その上に、レイさんの魔力量が膨大なことと魔法耐性が高いこと、そのおかげで賢者スキルも一部扱えます。後方支援も前衛もこなせる…まさに最強職です。《プロフェット》が出るのはこの国での記録上だと千年ぶりとかです。我々ギルド一同、レイ様の活躍を期待しております。」


 ギルドの中が騒然となら、近くにいた冒険者たちが口々にレイへと応援の言葉をかける…え、こんなイベントって普通は俺に起こるんじゃないの? 嘘でしょ? 俺なんて最弱職の一つである《オールマイティ》だぜ? これから最弱職として、バカにされるのだろうか…。冒険者は荒くれ者が多いと聞くからありえない話ではないか……。


 何はともあれ、これでようやく俺の異世界ライフが始まった。これで俺の冒険が始まるのだ。

【あとがき】

ついに冒険者としてのタイガを描く物語が始まります!

このテンポ感はなるべく崩さないようにしつつも、さらに面白くできるように精進していきます!

感想お待ちしたおります!

では、また次回!

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