12-1
「お、おにいちゃん!? お、俺が!?」
「はいっ! そうですよ? おにいちゃん!」
リアがイタズラっぽく笑う。
……いや、照れんな俺。
「タイガさん、タイガさん。いくらなんでも、おにいちゃん呼びさせるのはよくないと思うわよ?」
「やい! やかましいっ!」
このポンコツはあとでお灸を据えよう。
「いやー、よかったですね! 妹ができて!」
ルミネルがからかいながら言った、そのとき――
後ろから重たい足音が聞こえた。
鎧のきしむ音。衛兵たちだ。
「おい、あれって――」
「おにいちゃん! 逃げましょう!」
「――え? でも、どうして?」
「話はあとですっ!」
「――お待ちを……」
鋭い声。現れたのは、金髪でキリッとした目をした鎧を着た女だった。
ただの衛兵じゃない。雰囲気が明らかに違う。
「リアーナ様。家へ戻りましょう! お父様が『娘が反抗期だ!』とおかしくなっています! 壊れる前にはやく!」
その一言で、周囲の空気がピンと張りつめる。
……リアーナ様? って言ったか、今?
「も、もうっ! その呼び方で呼ばないでって言ってるのにーっ! お父様は過保護すぎ!」
「ああ、もうなんだかわからないけど! リアちゃんが嫌なら仕方ない! えいっ!」
ルクスの煙幕が炸裂し、白い霧が路地に広がる。
俺たちはその隙に一斉に駆け出した――!
「こっちだ、タイガ!」
カグラが前を走る。俺の後ろにはルミネルとレイが続く。ルクスはリアを抱えながら屋根の上を颯爽と駆ける。
「うおおお、なんで俺たち追われてんだあああ!!」
スウェリアの路地を駆け抜ける。
リアの笑い声と、遠くで響く「リアーナ様ー!!」の声が、街の喧騒に溶けていった――。




