11-4
「なあ、聞いたか? 王都エルセリアから第三王女が家出したらしいぞ?」
「え? それほんとか?」
へえ、王女が家出か――でも、この街って王都からそこそこ距離あるみたいだし、この街にはいないだろうな……
「目撃情報によると、青い髪に宝石みたいな瞳をしてるんだとよ。」
「へえ、そんな目立つ子、すぐ見つかりそうだけどな。」
ん!? ま、まさか……!?
俺は慌てて屋台のほうを振り向いた。
そこでは、リアがルミネルと一緒に笑いながら綿あめを頬張っていた。
光に照らされた髪が――まるで、水面のように淡くきらめいている。
「……いや、まさかな。」
自分に言い聞かせるように、俺はため息をついた。
「どうしたんですか、ため息なんてついて。」
「ルミネル……お前って、お子ちゃまなのに妙に大人びてるときあるよな……」
「お、お子ちゃまは余計です! そうですね……生まれがそうさせたのでしょうか?」
「た、助けてー!」
リアの悲鳴が聞こえた。
「タイガ!」
「カグラ! あっちの方からだな。」
「ああ! 急ぐぞ!」
声の聞こえたほうに向かうとそこは路地裏だった。
「くそ、路地裏には行くなって言っておくべきだった……」
「タイガ……後悔している暇はない。行くぞ。」
カグラを先頭に俺とルミネルが続く……
「いたぞ……」
「リア!」
リアはチンピラ七人衆に囲まれていた。
「なんだ? てめえら……こいつは高く売れそうなんだ……邪魔すんじゃねえ……!」
このチンピラたちはただの盗賊じゃない。金だけを見ている……そんな連中だった。
「リア! 今助けるぞ! カグラ頼む!」
「わかっている!」
カグラが鉄球付きの鎖を取り出し、一撃を放った。
「ぐあっ!」
チンピラの一人が鎖で拘束された。
「ちっ! て、てめえら! こいつがどうなってもいいのか!」
「……卑怯な奴らだな。」
リアを人質に取られてしまった。
「タイガ……ここは変に刺激しないほうが得策だな。」
「ああ、カグラ。俺も同感だ……ルミネル、ルクスを呼んできてくれ。」
「わ、わかりました! 絶対に! 絶対に無茶はしないでくださいよ!」
俺とカグラはルミネルにサムズアップして見せた。
ルクスから教わったスキルの中にアクセルブレイクという加速できるものがある……がまだ使いこなせていない。
もしも、使って失敗、そしてリアが傷つくなんてことがあってはならない。
「て、てめえら! そこを一歩も動くなよ!」
チンピラたちは殴りかかってきた。
さすが鬼であるカグラは殴られてもびくともしない。俺は殴り飛ばされてしまった。
「――ッ!」
「タイガッ! しっかりしろ!」
「おっと……動いたらこいつの命はねえぞ?」
「――くっ」
そこにルミネルがルクスを連れて戻ってきた。
「タイガくん!? ちょっと――キミたち痛いどころじゃ済まさないよ……アクセルブレイ――」
ルクスが攻撃に転じようとする、その瞬間にリアが泣きそうな声で言った。
「……よくも――」
リアの肩が震えていた。瞳の奥が、まるで蒼く燃えるように光っていた。
「ああん? なんか言ったか?」
「……よくも――わたしの兄を、姉を傷つけたな!」
次の瞬間、リアは一回転した。そして、リアの足元には先ほどまで彼女を人質として抑えていた男が倒れていた。
「て、てめえ! な、何しやがった!?」
「絶対に――許しません。」
そして……リアは拳を振り上げた。
――ダメだ。お前は人を傷つけるような子になってほしくない……これは俺の身勝手なエゴだ。それでも――
「やめろ……アクセルブレイク!」
俺は加速した。そして、リアとチンピラの間に割って入った。
「あっ!」
リアは拳を下ろした。そして、チンピラたちは逃げていった。
「なんでっ!? どうして、止めるんですかっ!?」
「リア、俺はな、お前に人を傷つけるような子になってほしくないんだ。だから――」
リアが俺に抱きついた。
「あ、あのー? リアさん?」
カグラは微笑みながら、ルクスはあちゃーとした表情を浮かべながら、ルミネルはわなわなと震えながら、レイは何があったのかも知らないまま――リアは俺の胸に顔を埋めた。小さな肩が震えている。
そして――
「ありがとうっ! おにいちゃん!」
彼女は笑顔で抱きつきながら言ったのだった。
それはそうとしても――
「お、おにいちゃん!?」
リア以外の俺を含めた全員がポカンとした表情を浮かべた。
【あとがき】
リアかわいい! ってなった人が少しでもいてくれたら嬉しいなあ……どうも、やまぬこもちです!
10/11は統計上だと一番晴れる日みたいなんですけど……今日はあいにくの雨。残念です。
さて、話は変わって、今回のお話はどうでしたか?
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