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「わああ……ここがスウェリアの中心街なんですねっ!」
リアは目を輝かせながら、きょろきょろと辺りを見回していた。
「そんな珍しいか?」
「珍しいですよっ! お店がずらーっと並んでて、みんな楽しそうで……!」
駆け出しの街、スウェリア。
石畳の上には冒険者も行商人も、みんな笑っている。
まだ発展の途中だが、それゆえに新しいモノも多い。
「なんだかんだ、俺もこの街をぶらぶらするの初めてなんだよな……ルミネルは美味しい店とか知ってたりするか?」
「私も少ししか知らないですね……でも、冒険者ギルドを中心としたら、西側に出店が多い……みたいなのは聞いたことありますよ。」
「へえ、そうなんだな。」
「ルミネルの説明は間違ってはないけど、少し違うな!」
ルクスが言った。
「冒険者ギルドの北は住宅街エリア。僕たちの家とかモルちゃんの店があるのは北側だね!」
モルちゃんって……モルティナのことか?
「南は鍛冶屋みたいな冒険者にお役立ちアイテムが多く売ってるエリア。そして、西側は繁華街だね! 屋台とかが並んでるよ! 東は酒場とかが多いんだけど……まあ昼間の活気は屋台とかに負けててね……でも、屋台と酒場を合わせて――スウェイルグルメロードって言われてるね!」
「スウェイルグルメロード……!」
リアの瞳がきらきらと輝いた。
「ねえねえっ! 行ってみてもいいですか!?」
「もちろんだ。今日は食べ歩きデーだしな。」
「やったーっ!」
リアはスキップしながら走り出す。
その姿を見て、レイが小さく笑った。
「まるで子どもみたいね。……いや、子どもだったわ。」
「お前が言うな。」
俺は呆れつつも、少し口元が緩む。
――スウェリアの西側、グルメロード。
焼きパン、果実ゼリー、香辛串、甘い魔力水……。
どこを見ても人だかりで、香ばしい匂いと笑い声があふれていた。
「あっ! あの人、お金を渡してる……! あれって、賄賂ってやつですか?」
「いや、そんなわけないだろ……」
「わああっ! 見てください、あれ! 光ってるお肉ですっ!」
「それは《ルミナ串》だな。魔力で加熱した肉を光魔石で飾る、スウェリア名物だ。」
カグラが優しく微笑みながら言った。
「食べても……いいんですか?」
「食べられるよ! むしろ光ってるほうが当たりなんだよ! ここまで光ってるのは僕も見たことないね、すごいよ! リアちゃん!」
「えへへへ、いただきまーすっ!」
リアがかぶりつくと、頬がとろけるように緩んだ。
「ん~~~っ! おいしいですっ! 幸せって、こういう味なんですねっ!」
「お前、なんか一々感想が詩的だな……」
その後もリアは果実ゼリーや甘い魔法水などに目を輝かせ、
レイは「女神として味見してあげるわ」と言いながらちゃっかりつまみ食い。
ルクスは財布を握られている役、カグラは黙って袋を運んでくれている。
まるで、家族旅行みたいな雰囲気だった。
「はあ……すっごく楽しかったですっ! わたし、こんなに自由に歩いたの、初めてで!」
「初めて?」
俺がそう聞くと、リアは少しだけ口ごもった。
「えっと……あ、あの! 気のせいですっ! ほら、次はあっちの――」
リアがごまかすように走り出す。
けれど、その笑顔の奥に、ほんの少しだけ影が見えた気がした。




