11-2
「ふわあ……おはよ、ルクス。」
「珍しく早起きだね、タイガくん。」
「まあな……」
そのとき――
「きゃあああ! ま、また出たあああ!!」
屋敷にルミネルの悲鳴が響いた。
「ルミネル! どうした!」
「どうしたのー?」
「全くうるさいわねえ! 女神である私を少しは休ませてちょうだい!」
「年中休んでるみたいなものだろう?」
カグラって、レイに厳しいよな……と思いつつ、
ルミネルの見つめる先を見ると――そこには、白いあたふたする生き物がいた。
俺は思わず目をこすった。
白いシーツにくるまり、まるで巨大な繭のような物体が床をもぞもぞと動いている。
「お、お化けかと思いました……!」
ルミネルがまだ震えている。
「ち、違いますっ! わたしです! リアですっ!」
「なにしてんだ……」
「えっと……こうやって寝るのかなと思って!」
「いや、布団置いてあったよね!?」
「使い方がよくわからなくて……」
ルクスが笑いをこらえながら繭をほどくと、中から顔を真っ赤にしたリアが現れた。
「ううう……寝てる間に転がり落ちちゃったみたいで……」
すごく微笑ましい。まるで、妹でも見ているかのような気分だ。
日本にも妹はいないけど――。
「朝ごはんができたぞ。」
カグラが言った。
「やたー! ご飯よ、ご飯!」
「早く食べよ食べよ! タイガくん、早くいつもの合図ちょうだい! もう僕はらぺこだよー」
「はいはい……それじゃあ、手を合わせて――いただきます!」
「「「いただきまーす!」」」
リアだけ反応がない。
「リア……? どうした? お腹空いてないのか?」
リアは首を横に振った。
「皆さん、なんで食べる前に呪文を唱えるのかな、と思って……」
リアは小首を傾げながら、ぱちぱちと瞬きをした。
「リア、今のはな……食べ物への感謝の言葉なんだ。だから、呪文じゃないんだ……」
「そうなんですねっ! じゃあ、わたしもっ! いただきますっ!」
もしかしたら、リアは世間知らずなのかもしれない……
「わたしっ、食べ歩きがしたいですっ!」
リアが昼頃に突然言い出した。
「カグラとルミネルが昼飯作り始めてるしな……」
「これなら、夕食に回せるぞ。お昼は外に出てもいいんじゃないか?」
「やったーっ!」
カグラが少し微笑んだ気がした。
「ねえねえ、それさ、僕らもついていっていい?」
ルクスにルミネル、それにレイもいる。
「――こんな大所帯で動くのもな……ま、たまにはいいか!」




