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「あ、タイガ! それに、ルクスとカグラまで! どこに行ってたんですか! もう全部食べちゃいますよ!?」
口いっぱいに食べ物を詰め込みながらルミネルが言った。
「飲み込んでから喋ろうな? ちょっと話してただけだよ、お子様にはわからないような!」
「誰がお子様ですか!? 力の差というものをですね、見せつけてやりましょうか!?」
ルミネルがムキになって怒った。
「いや、ルミネル。私とルクスは、タイガがまたお風呂を覗きに来ないように言っていたんだ。」
「うん! そうだよ! この前なんて、僕がお風呂に入ろうとしたら覗きに来たんだもんね!」
「ご、誤解だ! そ、そんなことはしてない! だから、そんな目で見ないでくれ!」
ルミネルの視線が痛い……。
「いやー、食べた食べた! お腹いっぱいだよー!」
ルクスが満足そうにお腹を叩く。
「たまにはこういうのも悪くないですね!」
ルミネルも笑顔だ。
「ふう……たしかに、平和な日も悪くない。」
カグラが珍しく微笑む。
みんなの表情を見ながら、俺は思う。
――たまにはこういう日もいいな、と。
そのとき、レイが立ち上がった。
「みんな! ちょっと待って! 女神としての威厳を取り戻す時が来たのよ!」
……嫌な予感しかしない。
「見なさい! これが新しく覚えたスキル――《エンター・テイナー》!」
バシュウウウン!!
レイの背中から光の羽根が広がり、空中に小さな光球がぽんぽんと浮かび上がる。
一見きれいだが、なぜか音が――「パーン!」とか「ドンチャン!」とか――うるさい。
「な、なんだこれ!? 爆竹みたいな音がしてるけど!?」
「ふっふっふっ! 女神流の宴会芸よ!」
「宴会芸って言った!? 神聖さどこいった!?」
ルミネルが苦笑し、ルクスが手を叩いて笑っている。
「すごいねレイさん! 空が派手だよ! あ、でも――ちょっと火がついてない?」
「ふえ?」
光球の一つが爆発した。
「ひゃああああ!! また爆発したあああ!!」
「だから言っただろうがああああ!!」
「お、自称女神が自爆した……」
カグラが呆れたようにため息をつく。
――空に上がる光の花火。
それはまるで本物の打ち上げ花火のようだった。
「タイガ……みんな笑ってるわよ……!」
「……うん、たぶん爆発する自称女神様が滑稽で面白いんだろうな。」
「自称じゃないから! 本当に女神だからああ!」
レイが涙目で喚く。
その背後で、もう一発「ドカーン」と爆発音が響いた。




