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「ねえねえ! ここの木の下にシート敷きましょ! 川からも近いし、ここが一番だと思うの!」
「僕も賛成!」
「ああ、私もここがいいと思うぞ。」
「たしかにここからの眺めは良さそうです!」
「じゃあ、決まりだな!」
スウェリアから少し出たところにある平原。ここはモンスターが生息していない区域のようで、スウェリアに暮らしている人々にとって憩いの場となっているらしい。
ピクニックを始めてから少し経った頃――
「ねえ、ちょっとこっち来てくれない?」
突然、俺はルクスに呼び出された。
「どうした? 一人でトイレに行くのが怖いのか?」
「行かないよ! 仮に行くなら、何も言わずに出ていくよ! そんな話じゃなくて……カグラの話だよ。」
パーティーメンバーがわいわいやっている場所から少し離れた木の下へと連れ出された。
「――で、話ってなんだ?」
「あのね、カグラは実は人間じゃないの。」
「……それはどういうことなんだ? 魔物とかアンデットの類ってことか?」
ルクスは静かに首を振る。
「カグラは鬼族の子なんだ。あの子、腕細いでしょ? それなのに、あれだけの重さの鉄球を軽々と振り回せるのは鬼族だからなんだ。」
たしかにこの前のお風呂での"事件"のときに、あの細い腕で鉄球を軽々と鉄球を振り回すことは謎に思ってはいた……が、特段気にしていなかったので踏み込んでいなかった。
「でね、この世界で鬼と人間は友好関係を表向きは築いているんだ……でも、鬼のことをよく思わない人もいる。だから、カグラはどこのパーティーにも入らなかった。僕は、キミに問いたい。それでも、カグラとパーティーを組み続けてくれる?」
なるほどな。お試し期間ってのは、俺たちと相性が合うか……ということではなく、鬼をパーティーに迎え入れられるか、ということだったわけか。
「もちろんだ! カグラ、料理もできるし……それに、鬼って強いしな!」
「あはっ、あはは!」
ルクスが腹を抱えて、笑い出した。
「キミって、僕たちが思ってる以上に本当に面白いっ! うん、ありがとう! じゃあ、改めてこれからもよろしく! カグラから改めて話があるかもだけど、そのときも優しくしてあげてね!」
俺はルクスにサムズアップして見せた。
……少しして、木陰からカグラが顔を出した。
「何をこそこそ話しているんだ?」
「いや、なんかさ、ルクスがお前のこと好きらしいぞ。」
「……は?」
ルクスが慌てて俺の背中を叩く。
「ちょ、ちょっと! 違うってば!」
「ふっ、何をしているのやら。」
カグラはほんの少しだけ、笑ったように見えた。




