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この異世界は、ヒーローでありふれている!  作者: やまぬこもち
プロローグ『異世界への扉は女神から』
3/121

プロローグ-3

 目を開けると、俺たちは異世界に来ていた。

道は日本と違って、未舗装だ。前を歩く人の服装は、異世界に来たんだ、ということを思い知らせてくれる。俺みたいな普通の人間。耳が特徴的なエルフ。そして、いかつい見た目のドワーフ。それにケモ耳の獣人がいる。

 

これは現実で、まごうことなき“異世界”だ


「…俺、異世界来たよ! 来ちゃったよ! 異世界来たああああああっ!」


ついに来たのだ、異世界に! 夢にまで見たあの異世界が今俺の目の前に広がっている。日本では黒歴史的な情け無い死に方をしたけど、この世界での俺は『真の勇者』だ。


「いやああああ!」


横でレイが叫ぶ。せっかくの異世界に浸っているのだから邪魔しないでほしい。


「おい、女神。人が感動しているんだから黙ってくれ。それに帰りたいなら帰ってもらっても構わないからな。」


「…ねえ、私が困ってる理由を知ってから言ってるの?」


「いや、知らない。」


「私ね、あなたが転生するときの特典に選ばれたの。だから、あなたが魔王討伐をーー」


 魔王倒さないと帰れないってことか?


「……まじで?」


レイはこくりと頷く。


どうしよう。急に申し訳なくなってきた。


「…えっと、他に帰る方法ないの?」


「この世界に迫る全ての災厄を退けたあとにね、女神から願いを叶えてもらうことができるの、それで私のことを天界に帰せるわ……もう一つの方法は、あなたが天寿を全うする…ことよ。」


と言いレイはまた泣き喚いた。

 レイへの罪悪感がひしひしと身に染みた。


「わかったわかったから! 魔王討伐は頑張ってやるから…で、どうしたらいいんだ? 女神。」


「女神って呼び方はやめて、レイって読んでよね。私もあなたのことタイガって呼ぶから。」


「とりあえず、まずは冒険者ギルドとかに行くのがいいと思う。」


「そ、そうなのね! ゲームばっかりしてただけはあるわね!」


一言余計だけど、まあ許そう。


「それで、レイはギルドの場所とか知ってるか?」


「知らないわよ!」


「…え?」


「だから、知らないわ! だって私はこの世界担当の女神じゃないもの!」


おいおい、嘘だろ。てっきり有能な案内役になってくれるかと思っていた。…とんでもないお荷物となってしまった。それなら、動物と話せる能力とかの方がよかったのではないだろうか。

少し後悔しているとどこからか放送が流れた。


『こちらスウェリア冒険者ギルドです。迷い人のお知らせを致します。――――』


スウェリア? この街の名前だろうか。とりあえず、この世界に冒険者ギルドがあることがわかっただけでも進展だ。俺は近くにいた見るからにいかつい人に話しかける。


「一つ聞いてもいいですか?」


「いいぞ、なんだ?」


「ギルドの場所わかりますか?」


 冒険者ギルドというものは、冒険者たちの拠点的存在だ。ここがなければ冒険者たちはクエストを受けることができない。つまり、冒険者ギルドとは、冒険者たちの生命線なのだ。


 スウェリア冒険者ギルドは街の中央に位置している。内装はザ異世界と言った感じだろうか。街の旗かと思われる物や、牛の頭のような骨、重装備の騎士像などが飾られている。中にいる人たちは、鎧を着た騎士や、身軽な装備をした盗賊のような人、魔法使いのような人など様々だ。

 ただ、全員が共通して持っているモノがある。それは、謎の《ベルト》のようなものだ。あれはなんだろうか。


「ねえねえ、タイガ! 早く登録手続きを済ませましょ!」


 レイが俺を急かす。もう少し、異世界を楽しませてくれてもいいのではないだろうか。そんなことを考えながら俺は受付に向かった。


「こんにちは! 普段見ない顔ですね…冒険者ギルドへの新規登録でしょうか?」


受付のお姉さんも美人だ。やはり、異世界とはいいものだ。そう思う。


「…お客様? どうなさいました?」


「あ、いえ。新規登録です! 俺とこの隣にいる女の子もお願いします。」


「わかりました! では、登録する前に…」


「何かあるんですか?」


「適性検査を受けていただきます。」


「その適性検査って?」


「はい。一応やらせていただいております。」


「それはどんな検査なのでしょうか?」


「これを腰に付けてください。」


と、ギルドのお姉さんにあの謎のベルトを手渡される。レイはそのベルトを不思議そうにいじくりまわし、お姉さんに軽く怒られている。


「…これを付ければいいんだな。」



 正直言って、少し怖い。得体の知れないものだからだ。付けてみて、もし合わなかったとき、ベルトが爆発四散する可能性もあるかもしれない。


俺は深呼吸をして、恐る恐るとベルトを腰にかざした。


すると、勝手にベルトの帯がシュインと音を鳴らして、腰を回り、装着された。


「はい! お二人とも適性検査合格です!」


横を見ると、レイも装着できたようだ。


「では、続いて諸々の手続きがあるのですが、本日はギルド業務は終了で飲食業の時間となってしまいます。なので、こちらの部屋を利用してください。」


ありがたい。追い出されるかと思っていたから、手続き用の部屋があるのはすごくありがたい。



何はともあれ、手続きさえ終われば、晴れて俺も冒険者だ。きっとここで、才能が開花して『真の勇者』とか言われるのだろう。想像するだけで楽しみだ。


「ねえ、タイガ? 何をニヤニヤしているの?こんなに美しく、かわいらしい私と一緒の部屋だからって欲情しないでくれる?」


「しっ、してねーし!」


 こんなやつに罪悪感を感じた俺がバカだった……


何はともあれ! まだまだ俺の異世界ライフは始まったばかりだ!

【あとがき】

見つけて読んでくださった皆様ありがとうございます!

これから完結までお付き合いしていただけるととても嬉しいです!これからよろしくお願いいたします!

感想等お待ちしております!

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― 新着の感想 ―
このすばのような王道的展開で難しく考えずにサクサク読みやすかったです! 満点評価とブクマさせていただきましたので、これからも頑張ってください!
とりあえずプロローグまで拝読させて頂きました。 もしや例の駄女神が出てくる異世界作品とか好きですか? 違ったらあれですけど、色々とライトでコメディ調なのが似ていたので。 僕も好きなので話が合いそうです…
死因が風船って、歴史に残る黒歴史じゃないか。 ここの文章、本当に面白かったです! びっくりして魂って抜けちゃうんだ、私も気を付けねば……と思いました。 タイガくん、マイナスからどうやってプラスにして…
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