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この異世界は、ヒーローでありふれている!  作者: やまぬこもち
第09話『女神クッキング』
27/111

9-2

「カルパッチョは諦めて……次はパンケーキを作るわよ!」


 すごく諦めが早い。このポンコツでも、もしかしたらパンケーキなら作れるかもしれないな。


「……」


「ん? どうしたんだ? 早く作れよ。」


 レイは首を傾げる。


「どうしたんだ?」


「女神に伝わる魔法があるのよ。パンケーキを作る魔法が……」


 そんな魔法あるのか!? 女神ってどんな生活してるんだよ。


「思い出したわ!」


 そして、レイは謎の詠唱を唱えて、フライパンへと人差し指を向けた。

 すると……パンケーキがフライパンから生み出された。


「おお!」


「ふん! これが女神の力よ!」


 パンケーキは無限に生成され続ける。


「……なあ、レイ? パンケーキの溢れ出す勢いが一向に収まらないんだけど?」


「あ、そうだった。この魔法は発動すると十分間は止まらないわ! 一秒に一個パンケーキが生成されるから――」


「六百もパンケーキ食べられるか!」


 すでに台所はパンケーキパニックだ。四方八方どこを見てもパンケーキで埋もれている。


 そこにモルティナがやってきた。


「いい魔道具が入ったんで――ええ!? だ、大丈夫ですか!?」


「助けて……」


 モルティナは二つ魔道具を取り出して、パンケーキを吸い込んだ。


「パンケーキを魔道具で収集したので、もう大丈夫ですよ! こっちの魔道具で魔法を強制終了させましたので!」


 やはり、頼りになるな。


「ところで、このパンケーキ貰っていいですか?」


「あ、ああ。俺は構わないぞ。」


「私もいいわよ!」


 ……お前が始めたのにいいんだ。


「お店のおやつ用に貰ってきますねー!」


 モルティナはルンルンで帰っていった……何しに来たんだ?


「タイガさん。私、そろそろ本気出すわ!」


「おう、期待はしてないけど頑張れ。」


 すると、玄関が開いた音がした。

 

「ただいまー!」


 どうやら、ルクスが戻ってきたみたいだ。


「タイガくんたち何してるの?」


「女神たる私が直々に料理してるのよ!」


「へ、へえ。そうなんだ。」


「俺は心配だから見張ってるだけだ。」


「僕も少し見ていこうかな!」


 見物客が一人増えた。


「で、次は何作るんだ?」


「カレーよ! カレーなら作れると思うの!」


 レイは手際よくカレーを作っていく。これは期待できそうだ。


「レイさん、結構できてるじゃん!」


 あとは煮込むだけだ。ここまで来たら、もう大丈夫だろう。


「じゃあ、俺は少し離れるからちゃんとやっておけよー」


 俺はリビングへと移動し、ソファーに寝転がった――そのときだった。

 ぼんっ、と台所から嫌な音がした。


「た、タイガくん! 早く来て!」


 ルクスが壁からひょっこりと顔を出して、そう言った。


「お、おい! 火事になってんじゃねえかよ!」


 鍋が火を吹いている。これは非常にまずい。

 俺は急いで消火した。


「まじ危ないところだった……何があったんだ?」


「えっとね……レイさんが『煮込むのって面倒くさいから時短しましょ! しかも、これなら一晩寝かせたような味になるわ!』とか言って、いろんな魔法をかけたら――ぼんってなったんだよね……」


 容疑者は横でこくりと頷く。


「お前……料理禁止に――」


 いや、ここで禁止にしていいのだろうか? ここまでの彼女の頑張りは俺たちのためだ。ズレてはいたけども――


「はあ、仕方ねえなあ……一つだけ教えてやるよ、料理の作り方。」


 レイの曇っていた顔が一気に明るくなった。


「あ、僕はさっきの爆発で汚れちゃったからお風呂入ってくるね!」

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