第31話『企み』(3)
「え……本当にあの子だったの?」
「こんなに早く見つかるなんて……」
ルクスとメイラが呟く。
「ブモ?」
「それで……このウシはどうするんですか?」
「うーむ……タイガは何か牧場の人から聞いてないのか?」
「――何も聞いてない……」
「何か聞いておいてくださいよ!」
「お、お前なあ……ここに置いていってやってもいいんだぞ?」
ルミネルは魔力切れで背中で揺られてるだけなのに、口だけは達者だった。
でも、とりあえず……ウシは捕まえた。
となると、次に探すのは――ブタの“トンカツ”と“カクニ”か。
二匹で行動するって言ってたし……サーロインよりは見つけやすい、はずだ。
「じゃあ、次はブタ探し……しながら、レイも探さないとだな……」
「そうだね、本当にどこに行っちゃったんだろ……」
「まあ、きっとそこら辺にいますよ!」
「そうだな。アイツのことだ、どこかにいるだろうな。」
「まあ、あのバカは最悪いなくても問題ないしな。」
「あの……皆さんって――レイさんのこと、何だと思ってるんですか?」
「……」
「どうして黙るんですか!?」
――ここは黙っておくのが一番の正解な気がした。
その時だった。
「ブヒィイイイ!!」
森の奥から、明らかに“何かが揉めている”鳴き声が聞こえた。
……この声――絶対ブタだな。
「なんか、うるさいですね……」
「ああ、そうだな……」
「ルミネルもカグラさんも、なんで落ち着いてられるんですか!?」
茂みをガサガサと揺らして、二匹の丸々としたブタ――“トンカツ”と“カクニ”が転がり出てきた。
「ちょっと待て……この羽音って――」
ブウン……ブウン……
俺の背筋が凍りつく。
この音――それにあの黒光りする体とこの独特な臭い……
“マムシ”!!
「ぎやああああああああああ――!」
「ちょっとタイガくん!? どうしよう、タイガくんが壊れた!」
ルクスが俺をさすりながら、叫ぶ。
かつて……俺を借金に突き落とした生き物が目の前にいる。
「一旦、落ち着きましょう! 魔力さえ放出しなければ、襲われないはずです!」
「あ、待って! カグラに虫を見せたら――」
「――カグラさん!? しっかりしてください!」
カグラが呆然とした顔で突っ立っていた。
「あ、あ、あ……ああ――」
「カグラ? カグラー? 大丈夫ですか?」
ルミネルがカグラの顔の前で、手を振るが――反応がない。
「あはは……実は――カグラは虫が大の苦手なんだよね……」
「ルクスさん! もっと早く言ってくださいよ!」
「ごめんね、メイラちゃん! すっかり忘れてて……」
「はあ……タイガくんだけじゃなくて、カグラまで! もう――二人ともしっかりしてよおおお!」
ルクスの声が森へと響いた。




