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夜遅く。屋敷へ続く石畳を、レイたちが歩いていた。
「ねえ、三人とも! タイガとルミネルに悪戯でもするのはどうかしら!」
「レイ……もう夜は遅い。それに、あの二人は寝てるかもしれないだろ。」
「カグラの言う通りだよ! 絶対に――起こしちゃダメだよ……!」
「そう言ってる、ルクスさんの声も大きいと思いますよ?」
メイラの冷静なツッコミに、ルクスが「あっ」と口を押さえる。
「それにしても、クエストが早く終わってよかったわね!」
「レイの飲み屋からの借金がなかったら――あんなことにはならなかったのだがな……。」
「えっと……何があったの?」
「まあ――色々とな……」
カグラが遠い目をする。
それだけでルクスとメイラには察したらしい。
「カグラさんも、大変だったんですね……」
「ああ。ところで、ルクスとメイラはどうだったんだ?」
「盗賊ギルドの定例会? いつも通り、つまらなかったよ。メイラちゃんは……実家でしょ?」
「はい! ウィザードガーデンの実家に行ってきたんですけど……特に変わってなかったので、一泊して帰りました!」
話しながら、屋敷へたどり着く。
「ただまー!」
「だからレイ! 寝てるかもしれないと言ってるだろ!?」
「まあまあ、カグラ落ち着いて!」
ルクスが慌ててなだめ、メイラがリビングの扉をそっと開ける。
「寝てたら……ごめんなさ――え?」
「メイラ? どうしたの? ちょ……え? えええええ!!?」
レイの叫びに、ルクスとカグラも慌ててリビングを覗く。
「どうしたのだ二人とも――っ!?」
「そんなことある!? な、なにこれ、何があったの!?」
そこには――ソファの上で、くっついて、ぐっすり眠るタイガとルミネルの姿があった。
「……僕たちがいない間に、何が……?」
「ルクス、落ち着け! 二人は寝ているのだ……よし、邪魔しないように……そう、静かに、静かに……!」
「カグラさんが一番うるさいです! ルミネル……何があっても、私は親友だからね……!」
「こんなに早く進展するとは思わなかったけど……女神レイから祝福を!」
レイがそっと両手を掲げ――
「――えいっ!」
小さな光の粒が舞い落ちた。
タイガとルミネルは気づくことなく、穏やかな寝息を立て続けていた。




