表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/121

28-5

 いつもの平原で、魔獣たちが唸り声を上げていた。

 ルミネルの髪が風に舞う。


 今日はレイたちがいない。だから――偶然近くにいたギルとコットンを連れてきた。

 

「ルミネル! 俺がアクセルブレイクで一箇所に相手をまとめる! そしたら――」


「いつも通り、ぶっ放せばいいんですね!」


「正解だ! それじゃあ……行くぞっ!」


 俺がルミネルから離れようとした瞬間――思い出した。


「やっべ……」


「で、ですよね!? こっち来ないでください!」


「と、止まれえええええっ!」


 またもルミネルとぶつかる。


 その後も何度も何度も――衝突を繰り返す。


「またかよ!」


「またですか!」


「あの二人、戦闘中でもイチャついてんのかよ……」


 ギルが空気を刺す。

 

「ちがうっ!!」


「ギル……あれは違うよ。喧嘩が正しいかも……」


 周囲に険悪な空気が漂った。


 ※


「先輩! 空気が悪くなってますよ!?」


「しーっ! ミリアちゃんは"恋"って何だと思う?」


「え……異性でも同性でも――好きになった相手を追いかけること、じゃないんですか?」


「半分だけ正解。」


「半分だけ?」


「そう。もう半分……それは私の"持論"。」


「……持論?」


「そう……でもね、知ってる? 本当は、私自身も――恋を知らないの。」


 フェアリーが少し寂しそうに笑う。

 

「だからこそ、人の恋を応援したくなるのかもね。」


「で、半分は?」


「すぐに答えを急ぐ、キミの悪い癖だよ……ま、ミリアちゃんは知恵の女神もんね。」


「別にそういうわけじゃ……」


「相手に本心から想いを伝える――それが怒りでも、涙でも、叫びでもいい。それが、私にとっての“恋”の定義だよ。」


「で、でも……あの二人……あのままじゃ……!」


「……大丈夫。タイガくんには期待してるんだ……あの子なら、"恋の加護"を使える。」


 ミリアの瞳が一瞬、大きく揺れる。


「……"恋の加護"って……あの危険な――!」


 ※


 俺たちは言い争いをしていた。

 それはとても子供じみた論争だった……家事ができるできないだの、頭がいいだの悪いだの――本当にどうでもいいことを。


「あー、もう! 弱い癖に! 黙っててください!」


「ちょーっと強い魔法が撃てるからって! 魔法以外――」


 ……その瞬間、言い過ぎたと気付いた。

 でももう遅かった。

 

 ルミネルの目元が一瞬揺れる。

 ――目元の光るものが落ちる前に、彼女は顔を背けた。


「そうですね! 私にはどうせ魔法以外ありませんよ! なら、もう――」


 肩が震える。


「このパーティーにはいらないですよね!」


 叫んだあと、ルミネルは半ば自暴自棄に魔獣の群れへ走りだした。


 ……呪いは発動しなかった。


(……あいつ、本気で俺のこと……突き放して――)


「追いかけないの?」


 コットンの目が、まっすぐ俺を刺す。


「……」


「タイガ……俺はな――仲間を失ったことがある。」


「ギル……?」


「いいんだ、もう吹っ切れてる。」


 ギルが拳を強く握る。


「そんとき気づいたんだよ。"後悔"ってのは、言葉を飲み込んだ瞬間に生まれるんだ。後で言っても――遅ぇんだよ!」


「そんなことはわかってる……わかってるよ……」


「"時間は前にしか進まない、後悔しても時間は戻らない"。――俺の師匠の受け売りだけどな。


「――!」


 胸の奥が、刺されたみたいに熱くなる。


 俺がルミネルに伝えたいのは、異性としての好きとか嫌いとかじゃない。


 本当はずっと――

 感謝を、言いたかったんだ


「ありがとう……ギル。行ってくる――アイツに、ちゃんと伝えたいことがある。」


「……おう、行け! そこまでの道のりは切り開いてやる!」


 ギルは剣を抜く。

 その鍔は――砂時計のような不思議なデザインだった。


「ギル……それは?」


「んなもんはどうでもいい! 早く行け!」


「ああ!」

 

 《アクセルブレイク》!!


 俺は全身で地を蹴り、ルミネルへ一直線に走った。

 

 ※


「さあ、見せてごらん――タイガくん。」


 月光のような瞳でフェアリーが微笑む。


「キミが、“恋の加護”にふさわしい人間かどうか。」

【あとがき】

今回はタイガとルミネルの心のストーリーです。


"心と体の距離ゼロメートル作戦"はYouTubeなどで見かける『24時間男女で手錠生活』的なものに影響を受けています!


さて、喧嘩してしまった二人は仲直りできるのか!

お楽しみに! 29話は明日公開予定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ