28-2
外から鳥の囀りが聞こえる。
朝日がカーテンの隙間から覗き込んでいた。
「ん……朝か――」
ぼんやりと目を開け、布団から出ようと手を伸ばす。
だが、そこにあったのは――
「ん? なんだこれ……あれ? 柔らか――」
指先に伝わる、弾力と温もり。
そして次の瞬間、視界が完全に覚醒した。
「ル、ル、ル……ルミネル!?」
「……ん、んん? あ、おはようございます。」
「お、おはよう……?」
ルミネルが目を擦りながらゆっくりと起き上がる。
その寝癖のままの髪が、妙に可愛いのがまた腹立つ。
「あれ……? なんで、私のベッドにタイガがいるんですか?」
「いや、ここ俺のベッドなんだけど!?」
「え……? ど、どど、どういうことですか!?」
「それは俺が聞きたいわ!!」
ルミネルが立ち上がろうとした、その瞬間――
「きゃ、きゃあああああ!!」
「お、おい!? なんでこっち来――ぐぼっ!!」
ルミネルの肘が見事にみぞおちにヒットした。
視界がぐるぐると回る。
「タイガ!? タイガー!?」
意識が――遠のく。
※
目を開くと、そこにはミリアがいた。
「えっと……お久しぶりです?」
「今回は私の先輩がすみません……」
「先輩って……レイですか?」
「いえ……"恋の女神・フェアリー"の仕業です。」
恋の女神? そんなのもいるのかよ!
「――で、あれはなんですか?」
「お互いの距離が一メートル以上離れると、強制的に引き寄せられる――って呪い的なものです。」
「なんとも迷惑な……」
「頑張ってください。一日で解けるようになってるはずなので! 明日の朝まで頑張ってくださいね!」
「……ちなみに、レイがいないと俺死んでません?」
「ああ、実は! 加護を与えた女神はいつでも通信が可能なんですよね! 今はただ気絶してるだけですよ!」
「ああ、そうなんですか……て、え? 気絶!? ルミネルの肘の威力おかしくね!?」
「はい! では、頑張ってくださいね? それじゃあ、スタート!」
※
「――イガ!? タイガ!」
「ん……んん……」
「よかった……生きてた……!」
ルミネルの顔が近い。
近い。というか――近すぎる。
「ルミネル。残念な話がある。」
「え?」
「どうやら……俺たち、明日の朝まで一メートル以上離れられないらしい。」
「……え?」
「一メートル超えると、引き寄せられてぶつかる。」
「…………は?」
「……まあ、要するに――距離ゼロメートル確定ってことだな。」
「えええええええええええええっ!!??」
平穏な一日になるはずが――波乱に満ちた一日が、幕を開けた。




