27-3
ルミネルとメイラが料理してる間、俺たちはリビングのテーブルで紅茶を飲んでいた。
異世界に来る前は紅茶なんて大嫌いだったのだが……この世界に来てからは、よく飲むようになった。おそらく、日本と異世界のギャップによるストレスのせいもあるのだろう。
ゆったりとした雰囲気の中――突然、レイが俺に話しかけた。
「ねえ、タイガ……」
「どうしたんだ?」
「――好きな子っている?」
「ぶーーーっ! ゴホッ……ガハッ……は、はあ!?!?」
紅茶を盛大に吹き出した上に、変なところに入った気がする。
横ではルクスとカグラも咽せていた。
「お、おいレイ! いきなり何言ってんだよ!」
「えー? ちょっと聞いてみたくなっただけよ!」
「そんな気まぐれで爆弾投げるな!」
「だって、タイガっていつも鈍感なんだもん。ほら、誰かのこと“特別”って思ってたりするんでしょ?」
「な、な、なに言ってんだお前は!?」
「図星?」
「違うわ! ……たぶん!」
レイがニヤリと笑う。俺の紅茶は、もう味がしなかった。
「でも――最近、タイガってちょっと雰囲気変わった気がするのよね。」
「……は?」
「昔より優しくなったっていうか――ちゃんと“誰か”を見てる顔になってる気がするの。」
そして、レイはいたずらっぽく笑い、紅茶を一口すすった。
本当にいきなりどうしたんだ――。
「急にびっくりしたなあ……」
「あ、ああ……」
そう言いながら、ルクスとカグラが再び紅茶を飲もうとした――その瞬間、台所からドゴォン!という音が響いた。
ルクスとカグラがまたも紅茶を吹き出した。
「……うちの台所、よく爆発するな……」
「――タイガ、そんな呑気なこと言ってる場合か!?」
カグラの言うことはごもっともだが――うちの台所は定期的に爆発する。
レイが手で煙をはらいながら言った。
「ねえ、すごく焦げ臭いんですけど……」
「また、いつも通り――燃えたんじゃね?」
「……また燃えたのね。」
「お前も燃やしたことあるけどな……?」
「そ、そんなこともあったわねー」
「いや、慣れたらダメでしょ! 二人とも!」
「ああ、ルクスの言う通りだ! タイガ、レイ! 確認に行くぞ!」
――台所は黒煙が立ち込めていた。
「おーい、二人とも生きてるかー?」
「なんとか生きてます……」
「ほんっと、ごめんね! ルミネル……調味料間違えちゃって――」
調味料間違えただけでこんなことになるか……普通。いや、待て――ここは異世界だ。
「爆発する調味料ってのもあるんだなあ……」
全員が可哀想なものを見る目で俺を見つめる。
「タイガ……何を言っている。そんな調味料があるわけないだろ……」
この世界の常識に歩み寄った瞬間――この仕打ちかよ!




