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「……え?」
家に帰ってくると――すでに工事が始まっていた。
「さすが、貴族ですね!」
「うんうん! さすが、リーベルト家だね!」
「関心してる場合か! いくらなんでも、着工までが早すぎるだろ!」
「リーベルト家は決定からの実行が早いで――良くも悪くも有名な一族だからな……」
「ああ……やっぱりあの人も――貴族なんだな……」
カンカンカンッ! 金属の音と木槌の音が入り混じる。
作業員の中にはドワーフの姿も混じっていた。金槌を握る姿は、職人というよりも戦士のようだった。
「おい、あの梁もう少し右だ!」
「はーい! 急げ、領主様からの直命だぞ!」
……いや、直命って、そんなに急ぎ案件のことか?
作業員がこちらへと駆けてきて、口々に「お疲れ様でした。」と言って、去って行った。
「これ、突貫工事とかじゃないだろうな……」
建てられた小屋は"見た目"はしっかりしていそうだが、あれほどのスピード工事だし――中身もしっかりとしてるのかよ……
「……貴族って――すごいんだな。」
「そうですね……貴族――すごいですね。」
「ねえ、タイガ! もちろん、その卵は私が温めるでいいわよね!」
「断る!」
「だが、タイガ……卵に魔力を注ぐと強くなる――という研究があるのだが……」
「え……そうなの?」
さすが、魔法がある異世界なだけはある。
「でもな……レイに渡すと――ないな。ダメだ、絶対にダメだ。」
「ちょっと、アンタね! それはどういう意味なのよ!」
ルミネルがローブをはらって、いかにも厨二病なポーズをした。
「ならば、私がこの卵を孵化させてみせましょう!」
「いーや、お前も魔力供給だけな。この卵は俺が育てる。」
「えー! ずるい! 僕もやりたいー!」
「む、ルクスずるいぞ。タイガ! 私にもぜひ、やらせてくれ!」
「はいはい……それじゃあ、頑張りますか。」
……それにしても、この卵――不思議な温もりがあるな。




