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「――なるほど、なるほど! 皆様、素晴らしい!」
「そ、そんなになるほどですか?」
「はい! それはもう素晴らしい功績ですよ!」
アルフォンスは目を輝かせ、俺の手を掴んだ。
「私も冒険者を志していた頃があったので、凄さがより分かるのですよ! それにしても、討伐したのが先々代剣聖を殺したといわれているベルフェゴールとは……ますます恐れ入りました!」
「剣聖を殺した?」
「知らないのですか? "御剣の血脈"と言われる剣聖一族"アークレイン家"第五十代目……初の女性当主にして、先々代剣聖――セレナ・アークレイン様を。」
……ご存知ないです。
「今から三十年も前ですかな。あれはまだ私が子供の頃でしたね。あの人の剣は歴代の剣聖とは違った……光そのものでした。あ、すみません……少し重くなってしまいましたね。」
「全然、大丈夫ですよ……ただ、すみません。こいつが寝てて――」
横でレイが爆睡していた……
「ははは、私が退屈な話をしてしまったのがいけませんよ。では、報酬の話に移りましょうか……百万メル――ペク換算で一億でいかかがでしょうか?」
「い、い、一億!?」
思わず叫んでしまった。
「そ、そんなに貰っていいのでしょうか……?」
「はい、ルミネルさん。あなた方が倒したのは、それほどの強敵です。」
全員で見つめ合う……こんな大金貰っていいのか――
「あと、私からのお礼がございます。こちらへ――」
アルフォンスに付いていくと、そこには小屋があった。
「我々の一族は代々地竜の飼育を行っているのですが、ぜひ一匹貰っていってくださいな。」
地竜ってこんな感じなのか……いやいや、そうじゃないだろ――
「こ、こんなものまで貰っていいのだろうか……」
「ええ、カグラさん。これは私からのお礼ですので、先ほどの報酬金はどちらかといえば国からのモノですから。」
なるほどな……どれにしようか悩ましい。
「アルフォンスさん、オススメとかありませんか?」
「オススメですか……この子とかは速い個体ですよ。」
「……ん? あれは――?」
そこには卵があった。
その卵は淡い金色の模様が走っていて、時おり“トクン”と微かに鳴った。
まるで――心臓が鼓動しているかのように。
「――それは! お目がたかいですよ! それはまだ卵段階ですが――何か他の地竜と違って……"鼓動"を放っているのです! さすがですよ、タイガさん!」
「鼓動……?」
「はい、鼓動を持つ地竜は世界中探しても――数千万から数億体に一体いたら奇跡と言われる存在です。」
「そんなの貰ってもいいんですか?」
「もちろん! あなたは――英雄ですから。」
ちょっと遠慮の気持ちも覚えながらも……ここは好意に甘えさせてもらおう。
「……じゃあ、この子でお願いします!」
「……ふふ、やはりそう選びましたか。――かしこまりました。」
アルフォンスは微笑みながらも、その目はどこか遠くを見ていた。
「いずれ、この子が“あなた方の力になる”日が来るでしょう。それと竜車も差し上げますね。」
「そこまでしてもらっていいのかな……」
「何をおっしゃいますか、ルクスさん! ここからさらに、皆様のお屋敷に地竜用の小屋まで建設する予定でいますよ!」
「そ、そこまでしてもらわなくても大丈夫で――」
アルフォンスの目は完全に――キマっていた。
「――あ、やっぱりなんでもないです……」




