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スウェリアの北東部にある大豪邸。そこがスウェリア地区領主を務める――リーベルト家だ。
「大きいですね……ここで魔法をぶっ放したら――」
「おい、やめろ。それだけは絶対にやめろ。」
「タイガ、さすがに冗談ですよ! 私がそんなことすると思いますか?」
――絶対にしないって言えないからな……
「そこの方たち、当家へ何か御用ですか?」
屋敷の警備兵らしき人が話しかけてきた。
「領主さんから招待を受けてきました。」
「エンドウ・タイガ様でしょうか? こちらへ――」
俺たちは警備の人に連れられ、屋敷の敷地内へと入った。
敷地内は花畑が広がっていた。そこには、池があったり、彫刻があったり……とさまざまだ。
「当主を呼んで参りますので、こちらで少々お待ちください――」
「私はすでにここにいますよ。」
「アルフォンス様、失礼しました。」
「いえ、大丈夫ですよ。それに、私だけでは民を守れませんからね。」
どこか柔らかな雰囲気を放つその男は、優しい声で警備を労った。
「改めて、よく来てくれたね。エンドウ・タイガくん――いや、堅苦しいのはやめようか。君たちは、魔王軍幹部を倒した英雄だからね。私は、アルフォンス・リーベルト。この地区一帯の領主をしている。」
……なんだろうな。もっと偉そうで、冷たい人を想像してたのだが――この人を見てると俺の中での貴族像が狂いそうだ。
「えっと……アルフォンス、さん?」
「アルフォンスで構わないよ。」
「では、アルフォンスさん。俺はエンドウ・タイガです。で、こっちが――」
「私はレイ! プロフェットにして、癒しの女神よ!」
アルフォンスはぽかんとした顔を浮かべる……当たり前だ、初対面の女が突然――私は女神だー、とか抜かすのだから。
「私はルミネルと言います。役職は、魔法使いの最上級職アビスです。」
「僕はルクス。役職はシーク! よろしくお願いします!」
「私はカグラと言う。……よろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしく頼むよ。さあ、屋敷に上がってくれ。君たちの話を――ゆっくりと聞かせてもらいたい。」
大きな扉を開くと豪華な玄関が広がっていた。
「今、お手伝いさんたちにお茶でも淹れてもらいますね。」
「あ、ありがとうございます……」
貴族がここまで善人ムーブだと――調子が狂うな……




