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転生した異世界でヒーロー始めます!〜俺だけ弱くない!?〜  作者: やまぬこもち
プロローグ 「異世界転生ですが、チートは貰えません!」
1/9

プロローグ-1

※ 2025/9/29 改稿しました。 話数分割+地の文補強

 俺はゲーム内では《ヒーロー》と呼ばれるほど有名なプレイヤーだ。俺の趣味と言うと、特撮ヒーローやアニメ、ゲーム、ラノベと…まあこんな俺みたいなやつのことを世間ではオタクと呼んでいるのだろう。その上、俺は不登校だ。引きこもりオタク…否定したいが否定できないのが現実だ。

 今やってるゲームは多人数で協力してモンスターを討伐するゲームだ。


 さすがに腹が減った。昨日の夜からやっていて、もう朝日が上り、昼になりかけている。


階段を降りて、台所に向かう。母の書いたものであろう置き書きがある。読んでみると、


『急に仕事が入ってしまったので、今日のご飯はお金置いておくので、自分で買いに行ってください。』


…どうしよう、めんどくさい。ただお腹が空いたので行くしかない。幸いにも、昼時なので同じ高校の生徒に会うことはないだろう。日頃引きこもっている身体にはちょうどいい運動だ、と思うことにするか……


俺は玄関の扉を開ける。


「――ッ」


日頃太陽にすら当たらず、怠惰を極めている俺の身体に太陽は毒だ。太陽って、こんなに眩しかったか――いや、これも地球温暖化のせい……と言うことにしよう。

 近くにコンビニはない。スーパーまで徒歩十分。カップ麺を買うためだけに命を削る俺、えらい。


 家の周りは少しの田畑と住宅だけだ。そして、みんな仕事に出ているので、昼間は誰もいない。唯一、横をすれ違うのは農作業中のおじさんやおばさん、あとは軽トラだけだ。


 日頃の運動不足もあるのだろうか、とても疲れる。近所のスーパーでは何か祭りのようなものをしているようだ。


 俺は店から出て、家へと帰ろうとした――そのときだった。俺の真横で何かが破裂した。そして、俺はそのまま………



「――そう、俺は爆発に巻き込まれて……」


悔いのない人生だったか、と聞かれたら間違いなく俺は、いいえと答えるだろう。


「遠藤大我さん。残念ながら、あなたは魂が抜けてしまいました。」


後ろから声が聞こえた。その声のほうをみると、俺と同じか、少し年下かのように見える少女が座っていた。その少女はアイドルのような可愛らしさと、清楚な美貌を持ち合わせている。透き通るような美しい瞳に、薄い灰色の髪、そして、整った顔立ちに体格をしている。


「私は、若くして死んだ人を導く女神で、名をレイと言います。そして遠藤大我さん、あなたには今…四つの選択肢があります。」


その少女は美しくも可愛らしい声でそう言った。


「……四つ?」


「一つ目は魂を体に戻すこと」


「いや、俺……爆発で死んだんじゃ?」


「いえ、真横で割れた風船に驚いて魂が抜けただけです。

ただ、体はほぼ死んでますけど」


「…………」


……恥ずかしい。

死因が風船って、歴史に残る黒歴史じゃないか。


「ちなみに、あなたが魂を抜かれた瞬間、多くの人が目撃しています。今ごろ救急車で病院に運ばれて――」


「やめろ、もういい!」


レイはプルプル震えながら笑いを堪えている。

この女神、性格悪くないか?


「二つ目は天国行き。でもつまらないわよ? ある意味では地獄」


「逆に気になるけど怖いな……」


「三つ目は記憶を消して日本に転生。ただし、今までの経験は全リセット」


「なるほど。で、最後は?」


「――とっておきの四つ目。《異世界転生》です!」


来た。ラノベ定番のやつだ。

チート能力を貰って無双する、あの夢のプラン。


「しかも今なら記憶も身体も引き継げるの! 言語も女神パワーで即習得! さらに! 日本での善行ポイントに応じて特殊能力や武器もプレゼント!」


通販や勧誘を見ている気分になってくる。

だが、俺の心は完全に踊らされていた。


「俺のポイントは?」


「三十。だいたい平均ね」


悪くない。

……と思ったら、レイが顔を曇らせた。


「ただし――マイナス七百点です」


「は、嘘だろ!?」


「理由は……不登校の動機が“面倒だから”判定、あと親への感謝不足ポイントでドーンと減点」


そんなシステムある!?

 こんな不明確な採点基準がこの世界にはあるらしい……


「歴代最低点よ! おめでとう!」


全然おめでたくない。


「でも安心して。マイナスでも能力は貰えるわ。ただし、どれも中途半端だけどね」

 

 俺はレイから手渡されたパンフレットのようなものを見る。《芸能の才》や《動物と話せる》など、あまりなくてもいいけど、あると嬉しい…そんな能力ばかりだ。《武器は一度だけ強い斬撃を放てる剣》など、ないよりはマシ程度のアイテムだ。


「ねー、早くしてー…まだ今日のシフト終わりじゃないのー。それにあなたには期待してないからー、早くしてー、どうせすぐ死ぬでしょー?」


レイはゲームをやりながら、俺にそう言う。


こいつに痛い目を見せたい。そう思っていると、パンフレットに一際目を引くものがあった。それは手書きで書かれていた《女神・レイ》…と。


「これでお願いします。」


俺はレイの名が書かれたところを指す。


「うん、わかったわ。それでいいのね?」


「ああ、問題ない。」


そのとき、天井がパアッと光った。


「…レイ様、私が業務を引き継ぎますので安心して行ってきてくださいね!」


「――え?」


レイは俺の指先を見た。


「…ねえ、前見たときはそんなものなかった気がするんだけど…」


「だって、レイ様が…『こんなマイナスになる人はろくでもない人だと思うの!だから、私が手助けしてあげようかしら!』とかお酒を飲みながら言ってたじゃないですか。」


「…冗談に決まってるじゃない! でも、これを書いたのはアンタでしょ!?」


「……いえ、レイ様です。」


レイは途端に黙った。どうやら、レイは自ら選ばれる "道具" になったようだ。


「それではレイ様行ってらっしゃいませ。」


「…とのことだ、女神。行くぞー。」


「…ダメだからっ!絶対に私は行かないからーっ!」


レイは泣き喚いた。そんなの関係ないと言わんばかりに、レイの代役女神は右腕を前に出した。すると、俺の下に魔法陣が現れた。


「おお! すげえ!」


感動する俺の真横で、レイは暴れ、泣き喚く。


「いやあああああ! 絶対に行きたくないーっ!」


おもちゃを買ってもらえなかった子どもを彷彿とさせる暴れ方をするレイに対して、本当に女神なのか、と疑念を持ってしまうくらいだ。


「――遠藤大我! あなたは、自分自身で選んだ道具…いえ、仲間と共に魔王討伐を目指すのです! 我々女神一同応援しております! …では、レイ様行ってらっしゃいませ!」


俺とレイを囲っていた魔法陣が光り出す。そして…

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