前章
ーーーねぇ、覚えてる?僕たちが出会った日のこと。
気が付いたら、僕はどこかの洋館の前に佇んでいた、いや・・・座り込んでいた。
なぜ、ここにいるのかも覚えていない
それどころか以前の記憶もない。
なぜ、ここにいるのか。この洋館ははたして何なのだろう・・・?
外観をよく眺めていると何かのお店みたいだ、中は閉まっているのか暗くよく見えない。
何かが聞こえてくる
耳をよく澄ましみると、遠くの方で何か音が聞こえる
賑わった声、楽しそうなどこか懐かしく感じる幸せそうな人々の声
今自分がいる場所はどこかの裏路地にいるんだろう
ふと窓に映った自分の姿が目に入る。
体のあちこちが汚れていて、着ているものは所々ボロボロになっている。
部分的に赤くなっているところがある・・・これは血か?
怪我でもしたんだろうか、だが痛みはない
赤くなっている衣服の部分をすこし捲り上げてみる
うん・・・大怪我だ
なんかこう・・・なんとも言えないほどにグロい。
痛みを感じない方がおかしい
なぜ感じない?
足元で何かが光ったのが目に入った
ガラスの破片だ
それを拾い上げる
これは自傷でもなんでもない、ただのお試しだ
拾い上げたガラスの破片をそっと肌に当てる
すると赤い線が滲む
「・・・・・・?」
おかしいな、痛みを一切感じない。
何度も切りつける
ない
ない
ない
ない
ーーーーーー痛くない
ああ。
僕は記憶も痛覚も失くしてしまったんだ。