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神様と紡ぐ物語  作者: かーたろう
第一章 出会い、そして羽ばたき
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第5話

どうも、かーたろうです。風邪気味でしたが一日寝るとほぼ全快しました。更新頑張ろうと思います。

 九重真理子は夢を見ていた。

 夢では、痛かった後に寒くなりそして、寒くなくなった後に重くなったのだ。よく分らない夢だったが、寒くなった後、とても屈辱的な感情を向けられたような気がする。

 そんなこんなでうめいていると、誰かに、呼ばれている気がした。

 その後、頬に鋭い痛みを感じ、少女の意識は急速に覚醒へと向っていった。





「ん…ここは…」

「目が醒めた、真理子ちゃん?ここは、神月北警察署の医務室よ。」


その言葉を聞き目を開けると、傍に先輩の斉藤良子がいた。

 真理子の意識は一気に覚醒した。

 が、同時に鳩尾の痛みにうめく。


「良子さん…?そうだ、私はっ!

っ!うぅぅ」

「大丈夫?すぐに治るだろうけど痣になっているわ。

 もう少し休んだ方がいいわ。」

「い、いえ、大丈夫です。だから、報告を行いま、 っっ!!」


と、心配する良子を振り切って報告を行おうとする真理子だった。

 が、鳩尾と右足の甲から伝わった鈍い痛みの為に、途中で呻き声を上げてしまい、報告を続ける事が出来なかった。戦いで受けた損傷が回復しきっていない為に未だ、まともに動く事も出来ない真理子の状態を呻き声や態度から把握した良子は、今度は休む事を勧めるのではなく、休む事を命令する。


「そんな状態では、まともに報告するのも難しいわよ。

 確かに、こういう事態は初動の早さが解決の決め手になるけど、今回はどこまで効果があるかは疑問ね…

 まあ、その理由は後で説明するとして、とにかく今はもう少し休んで体調を整えなさい。

 そうね、1時間後にもう一度来るから、それまで休んで話が出来るぐらいまでは回復させなさい。見た目はそれほど酷い怪我はしてないようだから回復の施術は掛けなかったんだけど、必要なら私が掛けてあげようか?

 それとも自分で掛ける?」

「自分で掛けられますので、大丈夫です。」

「わかったわ。じゃあ、いったん私は部屋を出るわね。」


そう言って、部屋から出て行く良子。

 良子の姿が完全に消えるまで、真理子はその姿を見送ったのだった。






良子が部屋を出た後、真理子は回復の施術を自身に使い始める。


「淑き人の 良しと吉見て 好と言ひし 芳野吉見よ 良き人よく見。

 天地の気よ、集いて我を癒せ。」


唱えた祝詞によって、真理子の体から痛みや痣が徐々に消えてゆく。

 流石に、骨折や内臓を刺されたりなどの大怪我になると、回復までに1時間ぐらいはかかるであろうが、この程度の痣や痛みならば、術を唱えて数秒で完全に回復する。それにもかかわらず、良子が一時間もの時間を真理子の休息に与えてくれたのは、神月市立第三公園で起きた出来事を報告として纏める時間をくれたのだという側面と、おそらく、敗北して混乱しているであろう気を落ち着けるようにと言う配慮なのだろう。


「それにしても、二人掛かりであったとはいえ、術も使わない相手と、術は使うが明らかにそこいらの雑魚としか言いようのないチンピラ異能者に敗北したのか…

 その上、おそらく犯罪異能者は取り逃がしたのだろうから、任務も失敗したな。

 私もまだまだ未熟と言う事か…。

 だが、それよりも逃げた犯罪異能者が今後起こす悪事の方が気がかりだな…」


と、自分の任務の失敗よりも、まず犯罪異能者が起こす悪事の方を心配する真理子。この事から真理子の生真面目な性格が窺える。

 だが、いくら心配した所で現状が良くなるはずも無い、と気持ちを切り替えて報告内容の整理へと移るのだった。







コンコンッ と、真理子のいる部屋にノックの音が響く。


「良子よ、入ってもいい?」


ノックは良子からだった。ノックするまで、まるで足音も立てず気配もかなり希薄に保たれている。

 だが、真理子は並の実力者では殆んど感じ取る事のできないその希薄な気配を容易く察知出来ていたので、かなり前から良子が近付いて来ているのに当然気付いていた。だから良子のノックにも特に慌てる事も無く、入室を許可する返事を返す。


「ええ、どうぞ。」


 部屋に入ってきた良子は、真理子の泰然自若とした様子から真理子が良子の来訪に、かなり前から気付いていた事を察して、こりゃかなわないな~、といった苦笑をしながら声をかけてくる。


「まったく大したものだわ、真理子ちゃんは。今の私は殆んど気配を殺している筈なんだけどなぁ~…。その様子だとかなり前から私が近付いているのに気付いていたんでしょ?

 流石は本家の者をも凌駕するかも知れないと言われる程の逸材ね~。」

「そ、そんな事ありませんよ。まだまだ私は未熟者です。実際今回の件も…」


 と、良子の誉め言葉に最初は照れていたが、今回の件の失敗を思い出しすぐに表情を暗くした。

 そんな真理子を良子は気遣わしげな表情で見たが、安易な同情など真理子の為にならないし、これからの役にもたたないと気分を切り替え話を進める。


「ま、その話は今は横に置いときましょう。これから報告を聞きたいんだけど、身体はもう大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫です。」

「それならいきなりで悪いけど、ここで何があったのか教えてくれない?

 確か、今日この辺で貴女が犯罪異能者の討伐を行っているとの知らせは伝達が来たからある程度は知っていた。

 でも3時間ほど前に裏声の相手から、第三公園で全裸の男が奇声を上げながら、少年(・・)を追い掛け回していると、通報があったんだけど?

 そして到着してみたら、写真で見た犯罪異能者の男が全裸で貴女の上に覆い被さっていたじゃない。

しかも野次馬は沢山くるし、吃驚したわよもう。」


と、少し気の毒そうに真理子の胸を見つつ告げる。その言葉と視線に、真理子は瞬間的に頭に血を上らせたが、自身の失態なので何も言う事も出来ずにいた。

 そして暫くおいて気を落ち着けると、そこで、少し気になった事があるのに気付く。

 確か、自分は気絶に追い込まれたはずだ、なら当然あの時の二人は逃げ出しているのが普通だ。

 一人しか報告されていないから片方は逃げたのだろう。が、犯罪異能者は裸で倒れていたと言う。

 不思議に思ったので確認の為、良子にその部分を尋ねてみる。


「ちょっと待って下さい。犯罪異能者は捕まっているのですか?」

「ええ。

 私達が現場に到着した時には、意識を完全に失っていたわ。

 通報があった為に先に現場に到着した所管の警察官によって、とりあえず、猥褻物陳列罪で逮捕されたようだけどね。

 まあ、状況を考えれば猥褻物陳列罪の方は冤罪の可能性が高いけど、あの犯罪異能者の余罪はいくらでもあるのだから、そのまま霊能刑務所行きは確実でしょ。」

「そうですか…」


その情報に、犯罪者が野放しにされなくて良かったと安堵する真理子。

 だが、もう1つ気になっている事を尋ねる。


「それで、私とその犯罪異能者の他に誰かいませんでしたか?」

「貴方達二人以外は、誰もいなかったわ。

 …私も、あの状況は第三者の手によって調えられたものだと言うのは察しているわ。普通に考えれば、その想定外の第三者が通報してきたのだと言う事は容易く想像出来るわよ。だから、公園での出来事と合わせて、その第三者について報告してくれないかしら?

 前科がある人物の可能性もあるしね…」


その要請を聞いた真理子は、公園での出来事を報告する。


「私は、人払いの術を掛けた後、異能者を第三公園に追い詰めました。

 でもそこで、さらにもう一人の男の異能者に遭遇。年齢は私と同じ位で、身長は175~180cm、眼鏡を掛け、髪はオールバックで体形は少し太っていました。

 仮に前者を異能者A後者を異能者Bとします。

 それから異能者Aとの話では、異能者Bは最近神と契約したばかりとの話で犬系統の神だとか、それと術は一切使わずに異能者Bは異能者Aと連携して戦っていました。

 異能者Aは勝手に戦っている感じでしたが、異能者Bは異能者Aとの連携を常に意識して、かなり巧みに戦っていました。

 戦闘は20分程膠着状態になりましたが、そのうち一直線に並んだ時を好機として私は術を放とうとしたんです。ですが、異能者Bは異能者Aを後ろから私に向って蹴り飛ばしてそれで出来た隙をつかれて、気絶に追い込まれました。

 おそらく、異能者Aを裸にしたり、警察にした通報は、その異能者Bの仕業であると思われます。

 それと、話では異能者としましたが確認が取れていないので、異能者Bは神格者の可能性もあります」


と、和範が変装していたり、敢えて紛らわしい情報を言った事を知らないので、捻じ曲がった情報を真理子は報告してしまうのだった。






報告を聞いた良子は、はぁぁと溜息をつく。

 あの犯罪異能者を捕まえ、任務を達成できたのはまあいい。

 が、その過程はあまり頂けない。

 絶対に桂の本家の次男坊とその取巻き連中が、難癖を付けてくるだろう。真理子は、本家の上位の者達にすら匹敵する逸材だ。

 だが、当主と時期当主、それに馬鹿の三男坊以外の本家の連中はそれが気に入らないらしい。

 特に先に述べた出来の良い現在の本家の3者の実力と比べれば、あまり術者としては出来の良くない次男坊は真理子を目の敵にしており、真理子を失脚させようと常に隙を窺っている。

 今回の異能者討伐もそうだ。

 異能者の詳細な力も不明なのにバックアップ無しで真理子にその討伐を押し付けた。

 幸い討伐そのものは完了したといって言いが、過程での失態は、異能者Bが通報などしたせいで知れ渡ってしまった。

 彼らは大喜びで、真理子の失態をあげつらうだろう。あるいは、真理子にしつこく言い寄っていた本家の三男坊との結婚を推し進めて、真理子を活躍できなくするか。

 せめて、異能者Bが神格者なら真理子の今回の失態は無かった事に出来るだろうが、その可能性は低い。

 真理子の話では、その異能者Bは、真理子の術を避けていたと言う話だ。術が通じない神格者なら避ける必要もない。それに、分類に異能者が出来て以来、神格者はそうそういないのだ。

 気が滅入るが、仕方ないので良子は話を続ける。


「そう、とりあえず報告はあげておくわ。

 それと、異能者Bが犯罪に手を染めてるかどうかは分らないけど、規則では全ての異能者や神格者は"高天原"に登録しないといけないし、下手に、黄泉比良坂や怪異連合、曼珠沙華に流れると、どんな文句を言われるか分ったものじゃないわ。

 だから、異能者Bの似顔絵作製に協力しなさい。」

「はい。」


そして、二人は似顔絵作りと事後処理へと移るのであった。





…このように、九重真理子と相馬和範との最初の出会いにおける真理子の第一印象は最悪といっていいものであった。

今回も色々な単語が出てきましたが、後日に説明のための話を入れますので、それまでお待ちください。

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