プロローグ最終話
貴秋の失踪から、一週間が経った。
学校内では、まだ、貴秋の失踪の話で埋め尽くされている。
当然だろう。家出とかではなく、大勢の同級生の前で光に飲み込まれて消えたのだ。グランドで起こった出来事の為、校舎にいた者も意外と多くが目撃していたのだ。
ただ単純に不可思議な現象を見て興奮する者、自分も巻き込まれないか心配する者、貴秋に好意を寄せていたがゆえに泣いている女子など、周りの人間の反応は様々である。
だが、それでも徐々に学校の状態も落ち着きを取り戻し始めていた。
貴秋の失踪から、一年が経った。
和範も中学3年になり、今年は受験生だ。
この頃には既に貴秋の事を口にする者も殆んどいなくなった。今も口にする者は貴秋と特に親交があった者位で、それも時折思い出したかのようにする程度になった。
二年経ち、和範も地元の公立の神月高校へと進学した。
意外と偏差値は高いが、普通に勉強すれば充分に入学できる高校だ。
中学からの同級生が20人位入学していた。
この頃には貴秋の事を言う者はいなくなり、和範も昔仲の良い友人がいなくなったな、と思う程度になっていた。そして、新しい学校で新たな友人を作り、それなりに過ごしてゆく。
だが、失踪から2年2ヶ月目にまたもや大きな変動が起こる。
それは、貴秋の失踪とは趣が異なり、和範と八重香の存在に関わる事だったのだ…