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神様と紡ぐ物語  作者: かーたろう
第一章 出会い、そして羽ばたき
29/44

第26話 桂家での攻防その一、前哨戦

以前に話を飛んで書いていたので意外と早く今話は書けました。

誤字脱字などありましたら指摘してくださると幸いです。

遂に始まった鬼ごっこ。

 清光達は薄笑いを浮かべながら術を放とうとするが、その前に和範の祝詞が小声で紡がれる。


「ひふみよいむなやこと。

 神法をもって我、汝に支配下へ下る事を命ず。水霊の存在よ我を守る鎧と化せ。水霊纏鎧!」


唱えられた術により、体の表面を薄い水の膜が覆っていく。

 和範が術に込められた殆んどの力を隠蔽させている為に、大半の者には水霊纏鎧に込められた力の大きさを正確には測れず、過小評価をしてしまう。

 当然、術から感じ取れる呪力が小さいゆえに、和範が使った術など気にせずに清光達も術を放つ為に、呪歌の詠唱を口々に唄う。


「燃ゆる火も 取りてつつみて 袋には 入ると言はずや 逢はむ日招くも。

 呪歌によりて、我は火霊の気を凝縮させ、放たんとす! 火呪の轟き!」

「奥山の 菅の葉しのぎ 降る雪の 消なば惜しけむ 雨な降りそね。

 呪歌の下に我、水霊の気を氷弾となす! 氷麗槌!」

「大汝 少彦名の いましけむ 志都の石室は 幾代経ぬらむ。

 我、呪歌を唄い、土霊を槍となさしめんっ! 岩林槍破!」

「み吉野の 山のあらしの 寒けくに はたや今夜も わが独り寝む。

 呪歌よ、風霊を御して風刃を創造せよ。風刃旋!」

「大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも。

 呪歌によりて我、厳霊を束ねんっ! 雷辰球!」


 ドゴウッ!

 ボゴンッ!!

 ズガガガガガガガ!!

 シュシュシュンッ!!

 ピッシャァァアアン!!

 炎弾・氷弾や岩の槍、風刃、そして雷撃で辺りに轟音が響きわたり、土煙が舞い上がる。

 少々下卑た連中とはいえ、流石に名門の術者の家系の者達らしく、清光達から放たれた術の威力はそれなりのものになる。少なくとも、神月公園で暴れた犯罪術者とは格が違った。

 その威力と、和範が特に回避を行わなかった事から、多くの者達が勝負あった、と思ったが、清光達はその後も気にせずに術を放ち続けた。

 ゴウンッ!

 ヒュパッ!!

 ズズンッ!!

 ドガンドガンドガンッ!!

 殺さない程度に注意して微妙に着弾点を調整しながら暫く術を放っていた清光達は、そろそろ殴る蹴るのリンチに移行しようかと思い術の行使をやめて、土煙が収まるのを待つ。土煙が晴れた先にはかなりの負傷を負った和範が這いつくばっているはずだった。少なくとも清光達はそう確信していた。

 だが、土煙が収まった時に現れたのは何の負傷も負っていないどころか、着ている服すら綺麗なままの、薄ら笑いを浮かべた和範の姿だった。

 殺さないように直撃こそさせなかった攻撃が多いとはいえ、それでも何発かは直撃させたはずだ。

 それなのに、何一つとして怪我を負っていない和範に清光達が驚愕する。

 そんな清光達を眺めながら和範は内心で少しだけ感心する。

 "中々大した威力だった、考えうる限り最高の集束を持って全員の力を一転集中し直撃されていたなら、水霊纏鎧の薄い部分なら突破されていたかもしれないな" 、と。

 さて、それじゃあ今度は此方の番だな、と攻撃態勢に入る。そして、足に呪力を込めて発動させる高速歩法を用いて桁外れの速さで一人の少年に迫る。

 高速歩法の技そのものは術者の間では割と一般的だが、和範の速度は一般的な術者の速度を遥かに凌駕していた。

 何とかその速度を感じ取る事だけは出来た数人が驚愕する。

 この速度、九重真理子や春人とほぼ互角かっ!?

 そして彼等が驚愕した時には、既に和範は右手部分の水霊纏鎧を鋭利な刃物のように変化させて、少年の左手を切り落としていたところだった。

 スパッ!! ボタリッ!

 辺りに響く鈍い音。それは、和範に切りつけられた少年の左手が落下していき、地面へと打ち付けられた音だった。

 ほんの一秒ほど静寂が場を包んだ後…

 ぶしゃぁぁぁぁあああ!!

 切断面から血が吹き出る。

 そして、血が噴出するのを見て我に返った少年が絶叫する。


「グギャアアァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」


その様子に清光達は全員が混乱の坩堝に叩き落され右往左往する。そして、和範はそんな隙を見逃したりはしない。

 手近の敵に対して下段蹴りを行い右足の骨を粉砕する。悲鳴を上げて倒れた相手の鳩尾に止めの一撃を与えて気絶に追い込む。それが済むと、少し離れた場所にいる6人ほどの集団に対して攻撃を行う。水霊纏鎧の特性を用いた特殊攻撃で、正拳の打ち出しと共に1m程の6つの水の拳が手から伸びてゆき、6人に命中する。

 ドゴンッ!!

 という音が響いたかと思うと、6人は10mほど吹っ飛び、そして、全然華麗でない着地を決める。頭から落ちていないから多分死んではいないだろう。

 さらに、我に返り反撃してきた少年の拳打を軽く避けながら、相手の腕を取りそしてへし折る。

 ボギンッ!! 腕の骨がへし折れる鈍い音が辺りに響く。

 そして上がる悲鳴…


「うぎゃぁぁああああ!?」


絶叫を上げる相手が五月蝿いので和範は手刀で首筋に攻撃を加え気絶に追い込む。

 そして、一番遠くにいる一人に対しては祝詞で攻撃する。


「ひふみよいむなやこと。

 神法をもって我、汝に支配下へ下る事を命ず。水霊の存在よ敵を切り裂く刃となれ、水刃」


祝詞によって巨大な水の刃が生まれ少年に襲い掛かる。

 だが距離があった為、少年は回避行動を取り避ける事に成功する。安堵する少年だが、水の刃はブーメランのように途中で戻ってきて背後から少年を襲いその左足を切断する。

 そして上がる絶叫。


「ゲギャアアァァァァァアアアアアアア!!!!!」


泣きながら転がりまわる少年。和範が攻撃を始めてからまだ1分も経っていない間に行われた暴虐とその結果たる惨劇。

 それを目の前で見せ付けられた清光と、おそらく取巻きの中でも側近とでも言うべき者達は全員が顔を青褪めさせていた。

 こんな筈ではない、こんな筈ではなかった。自分達は無力な獲物をいたぶる立場だった筈だ。

 そう考えてしまうのも無理はなかった。

 和範が自分の力を徹底的に隠蔽していた事だけでなく、清光達の実力の高さゆえにだ。

 実際に清光達はこの年代の者としては間違いなく優秀な部類だ。彼等の中で最も劣っている者でも、普通の術者なら30歳ぐらいになってようやく辿り着ける実力者なのだ。特に、彼等の中で一番優れている清光の実力には、一生掛かっても辿り着けない者もかなりの数が出てくるほどだ。そもそも清光自身劣等感を抱いているとはいえ、桂家本家の歴史上においては平均よりほんの僅かだけ下、といった程度なのだ(単純に高之助や高志、春人が優秀すぎるだけ。)。

 彼等は決して弱くなどは無い。術者全体で相対的に評価すれば、この年代では間違いなく上位である。

 なのにこの結果。何故だと思い悩むうちに、和範の馬鹿にしきった薄ら笑いを見てようやく清光達は認めたくない真実へと到達する。

 いや、和範の高速歩法を見た時から薄々感じ取ってはいたのだ。

 それでもいきなりの急展開で混乱した事と、清光達の自尊心が理解する事を拒んでしまっていたのだ。

 だが、認めざるを得なくなった。

 そして確認の言葉が漏れる。


「ま、まさか、今まで、お前が怯えたり青褪めたりしていたのは…」


その言葉に満面の笑みを浮かべた和範が返答をする。


「そう。ぜ~んぶ、え・ん・ぎ。」


その満面の笑みで放たれた言葉を聞いて、清光達は顔を引きつらせた。その清光達に対して和範は態と種明かしをしてゆく。


「最初からこういう話の流れにしようと思っていたんだよねー。

 そういう意味では、鬼ごっこの内容を最初の比較的まともな状態から、こういうかなり暴力的な内容にする為に話をどうもっていこうか悩んでいたんだ。でも、君らが態々自分達から提案してくれた時は本当に助かったよ。

 手間が省けてさ。

 じゃあ、そろそろ、御仕置きの続きといこうか。」


 そういって隠蔽を解き、水霊纏鎧に天地の気を充満させてゆく。ここに至って、清光達も和範の実力が自分達を超えている事を完全に理解した。

 そして、顔色はもはや青を通り越し白くなりかけていた。

 それを見た和範は満足そうな笑みを浮かべる。

 和範が彼等を残したのは偶然では決して無い。態と、真理子の敵対集団の上層部を残したのだ。今までの下っ端とは違い、肉体的だけでなく、精神的にも叩きのめす為に。

 はっきり言って彼らはそれなりの力を持ち合わせているとはいえ、全員の実力を足し合わせても和範や真理子には及ばない。

 それは、個々の実力を単純に足すだけでなく、連携攻撃をしたとしても、だ(神月公園での和範と犯罪術者の連携が真理子に通用したのは、純粋に和範が強かった為)。

 実力差が然程無いなら、確実に一人一人潰してゆくつもりだったが、実力差に開きがあるなら、後に残す相手を選ぶ事が出来る。ゆえに、それを見切った時点で、上層部だけは残して、じっくりとお仕置きを行い、場合によっては精神的に壊れてもらおうとまで和範は考えていたのだ。

 さて、どんな風に壊そうか、と考えていると、彼らは身の危険を感じたのか、審判の少年に向って敗北宣言を行う。


「おいっ! 新見、此方の負けで言いから、今すぐこの勝負を止めろっ!!!」


新見は目の前の出来事に呆然としていたが、仲間の必死の叫びを聞いて鬼ごっこを和範の勝利で終らそうとする。


「で、では、この鬼ごっこは…」


 ドゴンッ!! ヒュンッ!! ボダンッ! ズシャァァァァァアアアア!!

審判の少年が和範の勝利を宣言しようとした最中に和範から放たれた水弾を受け、5mほど吹っ飛びそのまま気を失う。

 この暴挙に周りの皆が唖然とした表情を見せる。

 しばしの時が流れた後、清光が呆然とした口調で誰にとなく問い掛ける。


「あ、ああ、何、が……?」


和範はそれに律儀に返答する。


「俺があの新見とか言う奴に水弾で攻撃をして、その結果として新見が吹っ飛んだ。それだけだ。」


それに対して、清光が当然の主張をする。


「な、貴様、審判に攻撃したんだぞ? どう考えてもお前の反則負けだろうがっ!」


思わぬ所からもたらされた幸運に取巻き達も追随する。


「そ、そうだそうだ、審判に攻撃するなんてお前は狂ってる。」

「ど、どちらにせよお前の反則負けは確定だな。」

「ふん、野蛮人がっ。」

「ぼ、僕達の勝ちだよね、これで?」


彼らにとっては当然の主張をまくし立てるが、和範は、ルールの空白部分をついた反論を行う。


「勘違いするな馬鹿共。

 あの新見とか言う奴は、俺が動けなくなったかどうかを判断するだけの奴だった筈だぞ?

 少なくとも俺は奴が審判をするなどとは一言も聞いていない。

 それに奴もお前達の仲間である以上、俺の攻撃対象の一人に過ぎん。」


和範に指摘されて、清光達は、あっ! という顔をした。

 そうなのだ、確かに新見の役目は和範が動けないかどうかを判断するだけで、審判をするなどとは一言も言っていなかった。

 和範に関する敗北判断を与えただけで、勝負の審判権まで与えた気になっていたのだ。

 確かに和範の言は、筋が通っていた。

 そして、今の状況を考え、顔を青くしている清光達に声がかかる。


「仮に、奴が審判だったとしても、今度は審判に対して攻撃をしてはならないなどというルール自体が無かった筈だ。」


しばしの時を置き、清光達の恐怖を盛り上げてから、止めの言葉を紡ぐ。


「まあ、気にするな。

 確か、不幸な偶然が重なろうが何だろうが桂家の術者なら臨機応変にそれに対応して事件に対処せねばならない、だったっけ?

 これはまさしくその状況だ。桂家の術者なら見事対応してみせろよ?」


清光達を更に追い詰める言葉を吐き、清光達の退路を断っていく。清光達はその状況に絶望する事しか出来なかった。

 が、そこで彼等に救いの手が差し伸べられる。

 和範の背後からこの勝負の制止を要請する声が響いたのだ。


「お待ちください!

 この勝負は傍目には、もう既に主様の勝利で決着がついています。ここまでにして下さい!」


声の主は和範の従者である真理子だった。

真理子自身に清光達を助けたいと思う気持ちは殆どありません。

 真理子が制止に入ったのは、ただただ和範の立場や評判に気を使っただけです。

 また、祝詞≒呪歌、ですのでどちらも作品内では同じようなものをさしていると考えてください。

 それと、審判に攻撃してはならない、というのは、ルール以前に常識の問題ですけど、その辺は深く考えないで下さると幸いです。

 

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