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神様と紡ぐ物語  作者: かーたろう
第一章 出会い、そして羽ばたき
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第15話

少し遅れ気味ですが、頑張って更新していこうと思いますのでご容赦ください。

次の日の日曜日の朝9時。真理子は和範の家たる相馬家へと訪れていた。そして、一言。


「うわ~。広い土地だな~。」


そう、相馬家はかなり大きかった。この辺一帯に住む者は大抵の者が知っている事だが、相馬家はかなり古くからこの辺一帯に土地を持つ地主の家系で遡れば平安時代に荘園を管理していた貴族にも行き当たるらしい。その後武士の台頭で大半の貴族が荘園を取られた時も派遣された武士と婚姻関係を結んだりして、したたかに土地を確保しつつ時代を生き延び、結局は大戦後の農地解放まで土地を確保し続けたとか。そのしたたかさが地元ではちょっとした昔話として残っているのだ。

 だから真理子もある程度は相馬家に関して知っていた。だが知っているのと、実際に見るのとでは色々違う所も出てくる。真理子は、相馬家の大きさは、どんなに大きくとも桂家と同じ位だろうと漠然と思っていた。いかにかつての名家と言えど、昔から続く、しかも術者としての名門家の1つ桂家には及ばないだろうと。

 だが、現実にそこにある土地と屋敷は、桂家本家の1.5倍はある。まあ、分家まで含めたら、桂家の方が圧倒的に広くなるだろうが。とりあえず、和範と会うために真理子は門の呼び鈴を押す。

ピンポ~ン 呼び鈴の音の後、女の子らしき声が、用件を尋ねる。


「は~い。相馬です。何か御用ですか?」

「はい。私は九重と言う者です。ある…ンッ、ンンッ。…と失礼。相馬和範さんはご在宅でしょうか?」

「あ、昨日の夜、お兄ちゃんが言っていた方ですね。はい、すぐにお兄ちゃんに迎えに行かせます。」

と言って、インターホンは切れた。そして、5分ぐらい経った後、和範が門を開けて迎えに現れた。

「やあ、おはよう真理子。とりあえず中に入ってよ。」

「は、はい、主様。では、失礼します。」


そして、敷地の中に入ってみて真理子はしばし呆然とした。なぜなら、そこには田園風景が広がっていたからだ。

 屋敷は、塀の外から見えた通りの古く威厳のある昔ながらの武家屋敷そのものだが、普通そんな屋敷にあるべき白洲や松の木はまるで無い。その代わり、田んぼや畑、用水路に井戸が存在していた。随分と本格的で、水車や水車小屋まである。

 ちなみにそれなりに大きな池はあったが泳いでいるのはどう見ても観賞用ではなく食用の魚達だった。植えられている木も梅や柿、蜜柑、桃といった果物の木ばかり。3棟ほどある離れの屋敷と合わさってまるで小さな村でも存在しているかのようだ。真理子としては、桂家のような武士や貴族の庭園を想像していたので余計に驚いていた。

 だが、その風景は決して不快なものなどではなく、それを見る者の心に言い知れぬ郷愁のようなものを呼び起こさせる古き良き時代とでも言うべきものだ。真理子は思わず感嘆の声を上げる。


「うわあぁ~」


それを見た和範は苦笑を浮かべながら話す。


「はは、驚いたかい? まあ、どうしても塀の外から見て思い浮かべる庭の姿と実際の姿は全然違うからな。」


それに、真理子は頷きながら返答する。


「はい、驚きました。でもこの風景は心が和みますね。武士や貴族の屋敷のようなのよりも私は此方が好きです。」


その返答に和範は嬉しそうに返す。


「ありがとう。田や畑を耕したり、木を剪定したりするのを俺も手伝っているから、そう言ってくれると嬉しいよ。」


その和範の言葉に真理子は照れて赤くなる。そして、思った事を述べた。


「でも、かなり本格的ですね。見た感じあの水車小屋とかかなり年月が経ってますよね?」

「ああ、水車なんかは流石に十数年に一回程度は取り替えてるけど、水車小屋は江戸時代には既にこんな感じだったらしいよ。それに、ここの用水路を流れている水の水源って実は湧き水なんだよ。だから、その気になれば自給自足も可能なんだ。」

「ちょっとした集落ですね。…こういう環境で主様とゆったり暮らすのも悪くないかも…」

「ん? 何か言ったかい?」

「い、いえ、大した事じゃありません。気にしないで下さい。」


と、和やかな会話をしながら、本宅の方へと向ったのだった。






玄関を開けると、紗奈が、出迎えの体勢で待っていた。

 だが、紗奈を見た真理子は何か気になる事があるのか紗奈を凝視するが、すぐに平静へと戻る。

 そして、中に入ってきた真理子の対して紗耶が出迎えの挨拶をしてくる。


「いらっしゃいませ、九重真理子さん。私は、相馬紗奈といいます。今後ともよろしく~。」


挨拶をする紗奈の声は、少し緩み、顔はうっすらと赤くなっている。どうやら、真理子の凛々しさに少しやられているらしい。だが、そんな紗奈の様子に気付いていないのか、あるいは単に慣れているのか、真理子は気にせずに挨拶を返す。


「はじめまして、九重真理子です。おじゃまします。それと、よろしくね紗奈ちゃん。」


それを聞いて、更に顔を赤くする紗奈。そして、思わずといった感じで真理子の感想を漏らしてくる。


「ふわぁああ、お兄ちゃんが言っていた通り、本当に綺麗ですぅ~。」


その感想に少し照れながら真理子はお礼の言葉を返す。


「ふふ、ありがとう。でも、紗奈ちゃんも可愛いわよ。」


そして、紗奈の頭を軽く撫でる真理子。紗奈は、えへへへぇー、と喜びながら撫でられるに身を任せていた。






紗奈と玄関で別れた後は、父が今日は休日出勤のために誰とも会わず、和範の部屋まで辿り着いていた。そして、和範の部屋に辿り着いてすぐに真理子が紗奈について、気になっていた事を和範に尋ねてくる。


「主様、紗奈ちゃんの事でちょっと尋ねておきたいのですが…」


それを聞いて和範はすぐに、真理子が何を問いたいのかを察した。そして、皆まで言うなとばかりに問い返してくる。


「分っている。紗奈の魂から放たれている波動が、普通の人間とは異なる事だろ?」


その言葉に頷きながら真理子は話を続ける。


「はい、紗奈ちゃんから放たれているあの波動、人のものというよりは神のものに近く感じられます。」


ここで、和範の中から出てきた八重香が話しに加わる。


「まあ、そんなに気にする事もあるまい。妾は意外と長く生きてきたから分るが、十数年かに一人か二人はあのような者が現れていたしのう。その者達も妙な事をしたりもせなんだし、他の妖物も逆に警戒して近付かなんだしのう。

 まあ、一応妾が隠蔽の術を掛けておるから、真理子、お主のように妾達との相性が抜群な上に、主従の儀式をした者でない限り気付く事は無いじゃろうから大丈夫じゃと思うがのう。それとも、何か他に気になる点でもあるのか?」


その八重香の発言に真理子は安堵しながら言葉を返す。


「いいえ、それなら大丈夫だと私も思います。紗奈ちゃんのような"神返り"は悪意ある人達に付け狙われやすいんですけど、八重香様が隠蔽の術を掛けておられるのなら特に問題は無いでしょう。」


その言葉に和範が気になった事を問う。


「神返り、ってどういう意味だい?」

「えと、大体の人に言えるんですけど、日本人の大半はどこかで神の血が混ざっているんです。ほら、物語でも神と人との間に生まれた子供なんていうのが出てくるでしょう?

 神は、一応肉の身を持って生まれてくるから、人との間に子供を作る事が出来るんです。そして、日本神話では、天皇家や古い有力者は神の血筋で、日本人はさかのぼっていけば全員がそれらの家系に行き着きますから。そして、紗奈ちゃんのような人達は、その遥か遠くの先祖の魂や血が隔世遺伝した先祖返りなんです。」

「神の魂や血の隔世遺伝か…それってどんな危険性があるんだい?」

「ほんの数十年前に、そういった特殊な魂や血を生贄として巨大な力を得るという、危険な術を開発した犯罪術士がいたんです。その術士は既に討伐されましたけど、術士が開発した術の使用法は既に巷に流されてしまった後で、その後も犯罪に手を染めた術士や異能者が同様の術を何度か行使しているんです。その為神返りが誘拐され、かなりの高値で売りさばかれると言う被害が出ていて…。その上、歪な形で得た力の為に暴走も起き易くて、いろんな意味で危険な術なんです。」

「そんな事が…八重香が隠蔽の術をかけていて正解だったな…」


紗奈がかなり危ない状況にあったのだと知り、八重香と出会えていた幸運に感謝する和範だった。

とりあえず、紗奈にかけてある術を隠蔽だけでなく守護と反撃の術も隠蔽して重ね掛けしておく事でこの話は決着をつけたのだった。


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