表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様と紡ぐ物語  作者: かーたろう
第一章 出会い、そして羽ばたき
15/44

第12話 主従の儀式

第一章前半の実質的な最終話。

 目の前には、気絶して動かない真理子が横たわっている。勝利はしたが、勝った和範の顔はあまり浮かない顔だ。

 それに対して、気絶していたが、真理子の顔はとても満足した顔だった。

 和範はそれを見て苦笑すると、八重香に話し掛けた。


(これは、なんていうやつかな、この複雑な感情は?)

(まあ、試合に勝って勝負に負けたと言うやつじゃろうな。

 お主が最初に定めておったルールだと、妾の力無しで勝つ事が勝利条件だった筈じゃろ? でも敗北寸前まで追い詰められて咄嗟に妾の力を使ってしまったからのう…で、感想は?)

(はいはい…九重真理子は、今まで戦った事のある術者の誰よりも強かったよ。それも、比べ物にならない程の、段違いの実力差だったよ。

 まあ、今まで俺が戦った事のある奴なんてヤクザや術士崩れのチンピラばかりだったから、正当な術士と戦った事はこれが初めてになるけどな…

 それにしても、これが一般的な術士の実力だとすると、俺だけの実力じゃ正規の術士相手に勝つ事は、かなりの労力を使う事になるな。二人以上なら八重香の力無しで、まともにぶつかるのは論外だな。)

(ふむ、己の未熟を自覚するのは良き事じゃ。これからも精進を怠らぬようにの。

 …とはいえ、今回の相手は相性が最悪だったと言っても良いからあまり気にする事も無かろう。

 それにこの小娘と妾達は何かの縁で結ばれとるような気がするしのう)

(ああ、それは俺も感じた。何か八重香と初めてあった頃のような感じがした。あの阿保男もいた最初の出会いじゃあそんな感じはしなかったんだけどなぁ。

 同じ人物と出会った筈なのに、何か違いでもあったんだろうか?)

(最初の出会いでは、何らかの条件が整ってなかったんじゃろ。それが、二回目の出会いでは条件が整っていた、と言う所じゃろう。

 尤も小娘の方も二回目の時には何かしら感じているようだったがのう。

 と、そろそろ起こしてやったらどうじゃ?)

(ああ、そうだな…)


そして、和範は真理子を起こす事にしたのだった。







 八重香に促されて、真理子を起こす事にした和範。

 真理子の頬をペチペチやっていると真理子が呻き声を上げ目を覚ます。


「う、うう。う~ん…

 あ、こ、ここは…」

「あ、目を覚ましたようだね、九重さん。

 ここは学校の裏山。ここに来た経緯は覚えてる?」


その問いかけに真理子はしっかりとした頷きを見せ、返答する。


「ええ、覚えているわ。

 私は、貴方と勝負する事になって…そして、負けたのね?」


その確認の問いに和範は苦笑しながら否定の言葉を返す。


「いいや、勝負は君の勝ちだよ。」


その言葉に真理子が怪訝な顔をして問い返す。


「私の勝ち?

 でも、私は貴方に術を簡単に弾かれ、気絶させられたわ。」


「あれは八重香の…俺の中にいる神様の力を借りたズルだからね、純粋な実力では君の勝ちだよ。」


だが、和範の答えに真理子は否定の言葉を述べる。


「それは違う。貴方は…いえ、貴方様は紛れも無く神格者です。

 神格者が己が宿す神の力を用いて戦うのは当然の事。それは、ズルでも卑怯でもなく神格者の戦闘方法の1つでしかない。

 だから、貴方様はこの戦いの勝者です。」

「う~ん。単純な認識の違いだと思うけど。

 ま、それなら君にとっては負け、と言う事にしようか。で、これからどうする?」


和範にこれからの事を尋ねられた真理子は少し俯いて考え込んだ後、意を決してとんでもない事を語りだした。


「私は、貴方様に仕える従者になりたい。お許し願えますか?」


この言葉には、和範も度肝を抜かれ慌てふためく。

 そして、真理子に思いとどまるように説得を行う。


「ちょ、ちょっと待った、九重さん。いきなりそんな事言われても困るし、もっとよく考えた方が良いよ!」

「いいえ、私は先の戦いで貴方様こそが主となるべき御方であると悟りました。

 そして、この直感に間違いは無いと既に確信しております。

 ですから、九重真理子を己が従者として認めてください。お願いいたします。」


と言って、此方に平伏してくる。

 和範はその後も何とか説得したが真理子は決して譲らず暫くの間押し問答をして、話が平行線になりかけた時に、二人の会話に八重香が割って入り真理子の味方をする。


「和範よ、真理子の提案を受け入れて従者にしてやったらどうじゃ?」


八重香が言うのならと思うが、一応、和範は理由を問い返す。


「まあ、八重香が言うのならそうした方が良いんだろうけど、一応理由は教えてくれないか?」


「理由としては、妾は真理子に対して何らかの特別な縁を感じる事が一番じゃの。

 それはお主もじゃろ?

 そして、その他にも、これだけ関わってしまった以上今後を上手く乗り切る為にも協力者の存在は絶対必要じゃからの。」


その理由に確かに頷けるものを感じた。


だが、一人の人間を己の身の周りに侍らす従者とするのには、まだ抵抗があった。

 暫くの間、「う~ん」と唸ったり、「確かに、でも…」と何度も考え直したりしながら、悩ましい時間を過ごすのだった。






悩んでいた間、度重なる八重香の説得や真理子の懇願の声に、遂に色々な葛藤を押しやり、ようやく和範も真理子を従者として受け入れる事に納得した。

 そして、自身の従者として認める事を真理子に告げた。


「分った。

 九重真理子さんだったね?

 君を我、相馬和範と我に宿る神、八重香の従者として認めよう。今後ともよろしく。」


 その言葉に、真理子は満面の笑みで頷く。

 そして、主従の誓いの儀式をしたいと申し出てきた。


「私の事は真理子で良いです。

 つきましては、主様。主従の誓いの儀式をしたいと思いますが、よろしいでしょうか?」

「主様か…まあ、呼び易い呼び名で呼んでくれればそれでいいか…それで真理子、儀式の内容は?」


主様という呼び名はかなり恥ずかしいと感じるが、正規の術者の家系なのだからそういう堅苦しい呼び名の方が当たり前なんだろうなと真理子の雰囲気から納得して呼び名の事は主様という呼び名を受け入れる事にする。

 そして、主従の誓いの儀式の内容が分らない和範は、儀式の内容を真理子に尋ねると、真理子は、顔を赤く染めながら内容を告げる。


「その、まず主従の誓いの言葉を従者から述べて、それに主が答えます。」

「ふむ、特に問題は無いよ。次は?」

「次は、二人で絆が永遠のものである事を誓約として述べます。」

「分った、次は?」

「それから最後は、その…主従の主が男性で従者が女性の時は、その…二人で接吻へ至るのです…」

「接吻?

 って、え~と、その、真理子と口付けしろと?」

「あの、その、おいやなら最後のはしない簡略化した儀式でも大丈夫ですけど…でも…」


 それきり真理子は顔を真っ赤にして黙ってしまう。

 和範も少し顔を赤くしていたが、そこへまたも八重香が助け舟を出した。


「女がここまで勇気を出して言ったのじゃ。男がそれに答えんでどうするのじゃ?」


それを聞いて、和範も決心して真理子に告げる。


「真理子の思いを受け入れて、正式な主従の誓いの儀式を行おう。」


その答えに、真理子は、パッ!っと顔を上げて歓喜の笑顔を見せたのだった。






 そして、主従の誓いの儀式は始まった。

 まずは、真理子が誓いの言葉を述べる。


「我、九重真理子は相馬和範を己が主と定め、その従者となり、彼の者に忠誠を捧ぐ事をここに誓う。」


真理子の誓いの言葉に対して、和範が返答の誓いの言葉を述べる。


「我、相馬和範は九重真理子を己が従者と定め、彼の者の忠誠を受け入れ共に歩む事をここに誓う。」


そして、二人の誓った誓いの言葉が永遠のものである事を二人で誓う。


「「我らの絆と覚悟、これ、永遠のものとする事をここに誓う。」」


そして、二人は儀式の最終段階の1つである誓いの接吻の儀式へと移った。







 それは、一種異常な光景だった。互いを思い合いながらの接吻なのに、互いに一切恋愛感情は無い。

 しかし、荘厳な光景でもあった。

 何故なら、二人の間に、恋愛感情の代わりになる物があったからだ。

 それは、忠誠と覚悟と絆。

 真理子の中にあるのは、主たる相馬和範に己の全てを捧げると言う忠誠。

 和範に中にあるのは、真理子の全てを貰い受けそして守るという覚悟。

 そして、二人の忠誠と覚悟が接吻によって絆として結ばれていた。こうして、主従の誓いの儀式は成立したのだった。

ようやく真理子が従者となる第一章前半の山場が終わりました。長かった…

次の話が第一章の前半部分最終話にして、これまでの単語の説明を真理子がしてくれる話。ようやく神様と紡ぐ物語の世界観を説明することが出来ます。普通はもっと早くヒロインや仲間、師などが世界観を説明してくれますが…文才が欲しい。ま、それはおいといて、今後とも応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ