誘拐
4月9日
今日は虫取りでも行こうかな。
僕はそう思って虫取り網とカゴを持ってドリアン公爵邸の敷地内にある森へと向かった。
森の中に入ると早速虫を見つけたので、僕はそれを追いかけ回した。
しばらく追いかけ回していると、突然目の前に現れた黒い影が僕の顔に覆いかぶさってきたので驚いて尻もちをついてしまった。すると、僕の顔を覆っていた影が徐々に動き出し、やがて人の手の形へと変わっていき、そのまま僕を持ち上げたかと思うと、そのままどこかへと連れ去ろうとしたのだ!
「うわぁぁぁぁ!!助けてぇぇぇ!!!」
と僕は叫ぶも誰も助けに来てはくれなかった。
やがて僕はとある場所に連れてこられた。そこは薄暗くて不気味な場所だった。
「ここはどこだ……?」と僕は不安になりながら周りを見渡すと目の前には1人の少女がいた! その少女は僕より背が高くて、綺麗な金髪を肩くらいの長さまで伸ばしている美少女だった!しかし、その目は虚ろでまるで人形のように無表情であった。
「うわぁああ!美人だぁああ!!」と僕は思わず叫んでしまった。するとその少女はこちらを見ずにただ一言こう言った。
「うるさい」と。
「すごい!しゃべった!生きてる!?」
と僕はさらに興奮した。
「ちょっと君!もっとお話しようよ!」と言うとその少女はやっとこちらを向いてくれた。しかし、無表情のままなので何を考えているのか全く分からない。
「えっと……名前は?」と聞いてみると彼女は淡々とした声で答えた。
「私は……エター……」
その言葉を聞き僕は目を輝かせながら言った。
「すごい!!変な名前」「貴方の方が変な名前」
「えー!君の方が変だよ!」と僕は反論する。すると、その少女の顔はさらに無表情になり、淡々とした口調でこう言った。
「そう……なら貴方の名前は?」と聞かれたので僕は自信満々に答えた。
「僕の名前はドドンパ」と言って自分の名前を言うと、その少女は僕のことを嘲笑うかのようにクスリと笑った。
「ドドンパ?変な名前」と少女が言った。
「プリティーな名前といいたまえ」と僕はドヤ顔しながら言うと少女はさらに笑った。
「ドドンパ……ドドンパ……ふふっ……」
「笑うなぁ!」と僕は怒りながら言うも、彼女はまだ笑っていた。
そして、しばらく笑い終えた後に少女は僕にこう言ってきた。
「ねぇ、どうして貴方はここにいるの?」
「それはね!虫取りをしてたら黒い何かに連れて来られたんだ!」と僕は胸を張って答えた。すると、少女は無表情のまま首を傾げた。
「むしとり?なにそれ」と聞いてくるので僕は思わず自慢げに答えた。
「虫取りっていうのはね!虫を捕まえて遊ぶことだよ!」と僕が説明すると彼女は興味深そうに聞いていた。
「じゃあ、貴方はその虫取りをして遊んでいたらここに連れてこられたの?」と彼女が聞いてきたので僕は大きく頷きながら答えた。
「うん!そうだよ!」と言うと彼女は少し考え込んだ後に言った。
「……そう……でも、貴方はもう帰れない」と彼女は言った。
「え?どうして?」と僕は聞き返すと彼女は淡々とした声で答えた。
「ここは私のお城だから……私が貴方を帰さないと決めたから……」
と彼女が言うと、僕は驚きのあまり言葉を失った。しかし、すぐに我に返り彼女に質問した。
「どうして僕を閉じ込めるの!?」
すると彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「……貴方が気に入ったから」
「フフン……いけないよ。お嬢さん。いくら僕がイケメンだからって閉じ込めるなんて。でも、僕も鬼じゃないからね!ちゃんと帰してくれるなら許してあげるよ!」と僕はドヤ顔で言った。すると彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「いや、貴方はもう帰れない」
「え?どうして?」と僕は聞き返すと彼女は淡々とした口調で答えた。
「ここは私の世界だから。私が貴方を帰さないと決めたから……」
「わかった。じゃあ、エター、せめて僕とあつーいキッスを」と僕は目の前にいるエターにむかって唇を突き出した。
すると、彼女は表情一つ変えずに口を開いた。
「いやよ」と彼女が言うと、僕は絶望した。
「な……なんで……」と僕が聞くと彼女は無表情のまま淡々と答えた。
「私、そういうの好きじゃないから」
「ひどい!エターは僕の事嫌いなのか!?」
「うん」と彼女が答えるので僕はさらに絶望し、地面に膝をつけた。そしてそのまま泣き始めた。
そんな僕を見て彼女は言った。
「……泣くの?」
「号泣さ!」
「泣き虫」
「それより、ここに閉じ込められたら、僕はどうなっちゃうの?」
「私は貴方をここに閉じ込め続ける。貴方をここから出してあげない」
「ひどい!ひどい!エターは僕の事を愛していないのか!?」
と僕が叫ぶと彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「うん」
「っチ…じゃあ、いいや」と言って僕は立ち上がり、ズボンのポケットからハンカチを取り出して涙を拭いた。
そして、僕はエターに言った。
「じゃあ、エター!閉じ込められたら僕は何すればいいの?暇すぎるよ!」
「じゃあ、私のお城の中を案内してあげる」
「えー?お城?どこどこ?どこにあるの?」
「ここ」と彼女が言うと、地面が光り出し、次の瞬間には巨大な黒いお城が現れた。
その大きさは王都にある王宮にも匹敵する程だった。
「ふ、ふーん?こんなんじゃ僕は驚かないよ?もっと大きいお城もあるからね」
と僕が言うと、彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「そう……なら、これはどう?」と言って彼女が手を叩くと、今度は目の前に巨大な黒いドラゴンが現れた。
「……グス…べ、別に……グスン……僕はこんなのに驚かないもん」と僕は言った。
「じゃあ、これはどう?」と言って彼女がまた手を叩くと今度は巨大なドラゴンが3体も現れた。
「うわぁぁぁ!もうやめてぇぇぇ!」と僕は泣きながらエターに抱きついた。
すると彼女は僕の頭を優しく撫でてくれた。
「ドドンパは泣き虫ね」と彼女が言ったので僕は涙をまたハンカチで拭きながら答えた。
「お、お父様には秘密だよ?」
「わかった」
と彼女が言ったので僕は安心してエターの城の中に入った。すると、中はとても広くてまるで迷路のようだった。しかし、エターは迷う事なくスタスタと歩いていくので僕もそれについていった。そして、しばらく歩いた後、大きな扉が現れたので僕はその扉を開けた。すると中には巨大なベッドがあり、そこに横たわった。
「うわぁ……すごい……」と僕は思わず感嘆の声を上げた。
「どう?気に入った?」とエターが聞いてくるので僕は自信満々に答えた。
「うん!気に入った!」
「良かった」と彼女は無表情のまま淡々とした口調で言う。
「ねぇ、エター?」
と僕が聞くと彼女は無表情のまま淡々とした口調で答える。
「なに?」
「エターはどうして僕を閉じ込めるの?」と僕が聞くと、彼女は少し考えた後に答えた。
「……貴方を見てると癒やされるから」と言った。「え?」と僕は聞き間違いかと思い聞き返す。すると、彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「ドドンパを見ていると癒やされる」と言って彼女は僕のことを抱きしめた。そして、そのまま僕の頭を撫で始めた。
「エターは僕のことが好きなの?」と聞くと、彼女は無表情のまま淡々とした口調で答える。
「うん……好き」と言って彼女はさらに強く抱きしめてきた。
僕は思わずドキドキしてしまったが、すぐに照れながら言った。
「初対面の僕にそ、そんなにストレートな好意をぶつけられると……僕、困っちゃうな〜。
……お嬢さん、そ、そんなに僕の顔が気にきったの?照れちゃうなぁ……」
と僕が言うと、彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「ドドンパは可愛い」と彼女が言ったので僕は照れながら言った。
「か、かわっ……ま、まあ?僕のお尻はもっと可愛いんだけどぉ?見る?」と僕が言うと彼女は無表情のまま淡々とした口調で答える。
「ドドンパのお尻なんか見たくない」
「そう?残念」と僕はしょんぼりとした声で答える。
すると、エターが僕に言ってきた。
「ドドンパ、私のお城に住まない?」と。
僕は即答した。
「やだ!」「どうして?」
「だって、お城に住むとお母様に会えなくなるもん」
「そう」と彼女は無表情のまま淡々とした口調で言う。
「ねえ、エター。僕のお母様に会わせてよ」「ドドンパのお母様はどんな人?」
「えっとね……怖くて優しい人だよ!お母様は僕のことをいつも愛してくれるんだ!」
「ふーん……会いたいな」
「え?どうして?」と僕が聞くと彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「ドドンパのお母様に興味があるから」と彼女は言った。
僕は嬉しくなって思わず笑顔になった。
「じゃあ、エター!お城に住まないで僕のお家に来る?」と僕が言うと、彼女は無表情のまま淡々とした口調で答える。
「それはできない」と彼女は言った。
僕は不思議に思い聞き返す。
「どうして?」と僕が聞くと彼女は無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「ドドンパは私と一緒にいるべき」と彼女が言った。
「だから、私はドドンパをお家に帰さない」と言うと彼女の手が光り出し、次の瞬間には僕の体は動かなくなってしまった!必死に抵抗しようにも全く身動きが取れない。
「え?え?エター……ぼ、僕のことをどうするつもり!?」と僕は叫んだ。
すると彼女は無表情のまま淡々とした口調で答える。
「ドドンパは私と一緒に暮らす」と彼女は言った。
僕は恐怖のあまり泣き出してしまった。
「うわぁぁ!!助けてぇぇ!!」と僕は叫ぶが、誰も助けに来てくれなかった……
そして、僕は今日会ったばかりの不思議な女の子、エターの城に監禁されてしまったのだった……。
5月10日(水)
「エター!!アーンして!」
と僕は笑顔で言う。
「はい、アーン」エターがスプーンにのせたプリンを僕に食べさせてくれる。
「わーい!ありがとう、エター!」
と僕は喜ぶ。
エターに監禁されて1ヶ月が過ぎた。僕はもう完全にエターに懐いてしまっていた。
「エター!もっと食べさせてー!」
と僕が言うと、エターは無表情のまま淡々とした口調で答える。
「はい、アーン」と言って僕の口にプリンを突っ込んでくる。そして、僕はそれを食べる。すると彼女はにっこりと微笑んだ後、またスプーンにのせたプリンを差し出してくれる。僕がそれを食べようと口を開いた瞬間……突然扉が開いてお母様が入ってきた!僕は驚いて思わず声を上げた。
「お母様!?」
「ドドンパ!!!ドドンパ!!」
とお母様は泣きながら僕の名前を呼びながら駆け寄ってきた。僕は嬉しさのあまり、涙を流しながら抱きついた。
「お母様ー!!僕、寂しかったよぉぉ!」と僕は大声で泣いた。
そんな僕をお母様は優しく抱きしめてくれた。そして、エターの方を見て言った。
「エター!なんでこんなことしたの!?」
「姉さんが悪いんだ」と無表情で淡々とした口調のままエターは答えた。
お母様はそれを聞いて困惑した表情を浮かべる。
「姉さんはドドンパばっかり可愛がる。だからドドンパを監禁した」
「そう……それで、ドドンパはどんな目にあっていたの?」
とお母様は聞いてきたので、僕は涙ぐみながら答えた。
「エターに毎日お城で遊んでもらって、ご飯をアーンで食べさせてもらって、お風呂にも一緒に入って体を洗ってもらってぇ…、おやすみ前に絵本も読んでもらったりしてぇ…グスン……あとぉ、おやすみのキスもしてもらってぇ……エターのベッドの中で一緒に寝てもらってぇ……あとぉ、お城の中を探検したりしてぇ……エターが魔法で作ってくれた美味しいお弁当も食べさせてくれてたのぉ……」
「ドドンパ……あなた、エターの城でそんな生活をしていたの?」とお母様は呆れた様子で言った。
「うん!」と僕は元気に答える。
するとお母様はエターの方を向いて言った。
「エター!貴方はドドンパを何だと思ってるの!?この子は私の大事な息子なのよ!貴方が勝手に連れ去っていい存在じゃないわ!!」
するとエターは無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「姉さんがドドンパばっかり構うのを見て、私は嫉妬した。だから、私は姉さんを困らせてやろうと思った。だから、私はドドンパを私のお城に閉じ込めた」
と彼女は無表情のまま淡々とした口調で言う。
「そんなことで……」とお母様は言いかけたが、僕はそれを遮って言った。
「エター!悪いことしたら謝るんだよ!」と僕は言った。
すると彼女は無表情のまま淡々とした口調で答える。
「ごめんなさい、姉さん」と彼女は頭を下げた。僕はそんな彼女の頭を撫でてあげる。
「エター、いい子いい子」と言うと彼女は嬉しそうな表情を浮かべる。そんな僕らのやり取りを見たお母様がため息をつくと言った。
「はぁ……もう仕方ないわね。ドドンパ、帰るわよ」
「え?どうやって?」
と僕は首を傾げる。
するとお母様はにっこりと微笑んで言った。
「魔法よ」
「え?お母様って魔法が使えたの!?」と僕は驚く。
するとエターが無表情のまま淡々とした口調で言う。
「姉さんは魔法の天才」
「そうなの?お母様!」と僕は喜ぶ。
「うん!そうよ!」とお母様は笑顔で答える。
そして、僕に向かって手を差し出しながら言った。
「じゃあ、帰りましょうか?ドドンパ」
「うん!!」と言って僕はお母様の手を取る。そして、お母様はエターの方に向かって言った。
「エター、寂しいならこんなことしないで素直に会いにきなさい。あなたは私の大事な家族なんだから」とお母様が言うと、エターは無表情のまま淡々とした口調で答えた。
「わかった。姉さん」
「じゃあね!エター!!」と言って僕は手を振る。
すると彼女は無表情のまま淡々とした口調で言う。
「ドドンパ、お尻みえてる。パンツも丸見え」
「え?うそ!?」と僕はズボンの後ろ側を慌てて確認する。
「あら、ほんと……ドドンパ、ズボンはちゃんと履きなさい」とお母様が僕のお尻をペチっと叩く。僕は顔を赤くして俯いた。
「えへへ……」と僕は照れ笑いをして誤魔化す。
「はあ……ドドンパったら…。じゃあ、帰るわよ」と言って、お母様は僕の手を握って、魔法を唱えた。
「オウチカエール」
すると、僕とお母様の体は光に包まれて、次の瞬間には、僕達はドリアン公爵邸のすぐ外にいた。
「わー、すごーい!一瞬で家に着いちゃった!」と僕ははしゃぐ。
「ほら、ドドンパ、帰るわよ。お父様も心配してるわ」と言ってお母様は僕を抱きかかえた。
「うん!お母様!」と僕は嬉しくなって抱きついた。
「うふふ、甘えん坊ね」と言ってお母様は僕の頭を撫でてくれる。
そして、僕とお母様はお父様が待っている屋敷へと戻っていった。
PS:ちなみに、この後、僕は僕が失踪してからずっと意気消沈していたお父様に思いっきり抱きしめられた。
「ドドンパ!ドドンパ!良かった……無事で本当に良かった!」と言ってお父様は涙を流していた。
「お父様、ごめんなさい」と僕は謝った。
「いいんだ、ドドンパが無事ならそれで……」とお父様は優しく微笑んでくれた。
そして、その夜、僕はお母様と一緒にお父様に抱きしめられながら眠った。
エターの城は楽しかったけどやっぱり僕の家はこのお屋敷が一番落ち着くなぁ。




