表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたとみた、あの星空に。  作者: 半崎いお
6/32

あたりまえの、けっか(最善解)

しばし、連日更新になります



きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

叫んでしまった。

目が覚めて、すぐに、自分の声に驚いた。

ここはどこだか、わからなかった。

なにがおきているのか、も。

わからない、と思った瞬間に、声が溢れ出してしまっていた




ここはどこ?

わたしの家?

そんなわけない。

私のうちはこんなに広くないし、ベッドにカーテンなんてついてない。

ものすごいリアルで嫌な夢を見ていたような気がするけれど……

でも、私のうちってどんなんだったっけ?




突然、視界が歪む。

落ち着いた木材の、重厚な部屋が脳裏に浮かぶ。




そして、また、叫び声が、溢れてしまう。

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!


何度も、何度も、繰り返す。

いやだ、だめ、殺さないで!殺さないで!!!


ギラギラひかる刀や、キラキラ輝く魔法。

そんなもの達が、目の前にチカチカ映っているような気がする。

追い迫ってくる、金属の鎧達、肩についてるふさふさ

なにもかもが、脳みその奥底を棍棒でゴンガン叩きつけてくるように思えた


どうしよう

悪い夢なんかじゃない。

あれは、あれを夢なんて思えない

いたかった、こわかった、つらかった、いたかった、こわかった

またくるの? またいくの? 急いで周りを見渡す

……ちがう。

やっぱり、ここは、あそこじゃない。

あの王子のへや、じゃ、ない。




私は空中に浮かんでもいないし、周りには誰もいない。



きゃぁあああぁはははは!あははは!!


生きてる!死んでないよ、生きてるよ

私今生きてるよ。

あはははははっはは!!

あいつらがこない!こないよ!!!

あはははははっはははははは!!!



もう泣いてるんだか、笑ってるんだかわからなかった

口から叫びは溢れて、溢れて、止まらない

涙も、何もかも、止まらない。



ばんっ!


扉が開いた。

もう、耐えきれなかった。



++++++++++++++



参った。

これほどとは、

いや、無理もないが、これほど、とは予測していなかった。

頼みの綱!救世主になってくれるはずだ!と必死に即断を回避させた少女は

壊れていた。


狂ったように笑いながら泣き、しかし表情は無表情のまま



目覚めたと思えば、すぐに狂乱は始まり、疲れるのかまたすぐに気を失ってしまう。

ときには延々と、数時間も……狂ったように、泣き叫んだり笑ったり

昼夜問わず、火がついたように、または、何時間も何時間も微動だにせずに座っていたり



「狂ったような」なんてものじゃなく、彼女は、本当に、狂ってしまっていたのだ。



無理もない。

当たり前のこととも言えるのかもしれない。

そうだ、私が知っているだけで、10回以上、この少女は殺されてきているのだ。

出会い頭に、暴力的措置で殺される。

毎回、毎回、あらゆる手段で。

ほとんどはその空間にあらわれてすぐに。

抵抗など、逃げ出すことなど、できるわけもなかっただろう。

その痛みや恐怖はどれほどのものだろう。

ころされるのがわかっているのに、何度も何度もやってくる、その気分は。

何度も何度も、何度も何度も

殺されてしまうのに



もし、彼女が

ここまでの全てを覚えているのだとしたら……

いや、そうでなければ、



そうだ

彼女は、覚えているのだ。

今回起こったことしか知らないのであれば、

あれほど、あそこまでに怯えるはずは、ないだろう。

あの子は、何があったのかを、全て、わかっているのだ。





安堵、憐憫、希望、そして謝罪

さまざまな感情が吹き荒れる。



女神よ

この者に、安らぎと癒しを


自分にできる最大限の癒しの魔術を少女に降らせる。

この方の心を、少しでもお慰めできますように、と。


部屋には、沈静効果のある花の香りを満たし、渇きと空腹は最上級の魔法と材料でケアをした。

最も信頼できるパートナーである、美しい毛並みを持つ魔狼のシェリスをその傍に派遣し

癒しの風を吹かせることのできる精霊達の助力を乞うた

王子達の記憶からも彼女を消して、私の屋敷のこの部屋で、厳重に、匿った

私のできる最大限で、彼女を、守ったのだ。


それでも

彼女が目覚める……まともに起き上がり、会話ができるようになるまでに

3年半の年月が

必要となってしまったのだった。



3年半

とてつもなく長いようにも

とんでもなく短いようにも思えた、その年月を超えて




この国は、予定通りに、というか

以前の通りに、終わりを迎えようと、しつつあったのだった。

いつも、どおりに、また。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ