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あなたとみた、あの星空に。  作者: 半崎いお
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未来の思い出

夜中の密会が始まった。

密会と言ったら色っぽすぎるか

完全に会談という意味の「密談」の雰囲気である。



「さて、アカリは、やはり、すぐに戻ってきてしまったのか」

「はい」

「わたしは、いつも通り、あれから5年ほど前から開始している……あの後は数週間だな」

あの後。わたしが誘拐され、ジョルジェさまが腕を失ってから。

数週間は生きていらしたのか。

あの時はまだ、ご存命だったんだね

よかった?というのも変な感じだけど

「シェリスは、数日後、わたしが解放されてからすぐに発見された

衰弱はしていたが一命はとりとめ、終焉を迎える前に放したのでその後はわからない」

「……よかった、とても酷いことをされていたので気になっていたのです」

こくり、ひとくちお茶を飲む。

添えられていたのは、優しい甘さの焼き菓子。

ひとくち齧るとアーモンドの香りがする。

「わたしは、腕を喪ったものの、生命に関わりはなく、数日後に解放された。

 その後、やはり病の蔓延により、王都も堕ちてしまうとともに、私も」


「そうでしたか」やはり、あのまま病のせいで王都の人口が減り過ぎてしまい、都市を維持することができなくなり、魔物に蹂躙されてしまったのだ。今まで通り、彼はそこで戦って、戦い抜いてその命を散らしてしまったのであろう。隻腕ではハンデも大きい。

「そんな顔をしないでください」ジョルジェさまは言った。「わたしにとってはもう数年以上前の話です。大丈夫ですよ」

優しい笑顔。あなたがまた、そんなに辛い目にあってしまったなんて

「あなたは、連れ去られる道中で暴徒によって……と」

「はい。民衆によるものでした。さすがにあのボロボロの刀は痛かったです」

ジョルジェさまも、痛ましいかおをする。

「わたしにとってはほんのちょっと前のことですけど、終わったことです。大丈夫ですよ」

ジョルジェさまの笑顔をほんのちょっと真似してみる。

気づいて、笑ってくれた。

「お互い、大変でしたね」

そう言って笑い合う。

こんな未来。いや、過去? があるなんて、不思議だ。

なんでこんなことになっているのかなんて考えるのはとうの昔に諦めたけれど

今回に限っては、本当に良かった。

このひとと、また会って、笑い合えるなんて。

だめだ、また涙があふれてしまった。



ガタッとあせって席を立ったジョルジェさまが、わたしの傍にひざまづいて涙をふいてくれた



「また、あえた。そのことを心から嬉しく思いますよ」

そう言って抱き寄せてくれたかれの、やっぱりおちつく、大好きな香り。

ジョルジェさまが、優しい声で続ける

「今回のわたしは、5年前から頑張ったんですよ。

 あなたの教えてくれた方法が悪用されてたことには、あの日から数週間前に知りました。

 それを、今回では改善するために神殿の力を借りることを試みたのです。

 “神託を受けた”と嘯いてみました」


なんと大胆な。

神殿を騙したのか

「あなたは神が遣わした方だと、信じていましたので時期は前後しますが真実。騙していません」「あ、そうですか」

うそぶいたとか自分で言ったくせに





私たちは二人で、コロコロと、笑った


見えたのは、星空。

あなたの、広い肩。


わたしたちは、ここにいる





+++++++++++++++++++++++++++++++



それからの日々は、穏やかに過ぎていった。


朝起きて、侍女たちにより身支度を整えられて

朝食を自室でとり

それから昨日わたしが現れたあの部屋で、色々な人に会う

しばらく言葉を交わして、握手を交わし、別れ、の繰り返し

その間に食事やティータイムを挟み、午後少ししたら自由時間になる

自由時間には何かを作ったり、本を読んだり出かけたり…

特段何かを求められるわけでもなく、それだけで、日々は過ぎていった。

いつも、護衛には神官騎士団長であるジョルジェさまがついてくれているのでずっと一緒だ



夕刻のティータイムはいつも、庭にあるガゼボでジョルジェさまと過ごしていた

聖女なんて偉そうな立場を押し付けられちゃったから、ちょっとだけわがままを言ってみたのだ

「誰かと個人的なおしゃべりがしたい!」と

侍女や特定の話し相手が選定されそうになったけれど、駄々をこねまくったら通ってしまった。

大好きな、ジョルジェさまとの時間を確保できたことでQOLは格段に上がった。



ずっと、気になっていた王太子のことは、ジョルジェさまが事前に解消させてくれていた

わたしの取り扱いが「聖女」となることで、王族が手出しできない存在になっていたのだ

抜かりなさすぎる。

確かにこの国で政治が手出しできない部分として一番確実なのは、教会だ。

その教会の最高権力というか旗印としてわたしがいるのであれば、手出しは不可能

「顔を合わせることはあっても、基本的に近づかなくて済むだろう」とのことだった。

初日にそれを聞いた時が一番ホッとした。


「王太子」って聞くだけでやっぱり体がこわばるし、姿を見たら動けなくなる自信はある。

近衛騎士団を見たりしたら確実に取り乱す。




神殿でお客さまと話す、と聞いたとき、ものすごく怖かった。

“おたすけください!!” 系のお話をたくさんいただいてしまうかと思ったのだ

しかし、何やら事前に対応ができているのか、

ほとんどのお客様が皆 

 “女神さまをどう思っているのか” 

 “普段している善行”

 “衛生について思うこと”

などをお話ししていくので、それを認めたり、素敵ですねとか言って承認すればいいだけなのだ

こちらとしても、素敵なお話をたくさん聞けるし

何より、前回あれだけ大失敗した“衛生対策”が今回では成功しているのを聞くのは嬉しい



そして

風の噂、というかジョルジェさまに聞いたのだが

わたしと会った後に、軽く体調を崩す人が、とても多いそうだ。

二日ほどしてから、軽く咳や熱が出る、とのこと。


ほとんどの方がわたしとの会合から帰ってからすぐに帰郷されるため、

ご自宅で熱を出す、もしくは道中で熱を出し、同行者に同じ症状が出ていく

しかし、症状は緩いため旅程にもほとんど影響がない程度で過ぎてしまうとのことであった

あの疫病によく似ているけれども、軽い症状しか出ないその病は

しだいに、この国全土に広まっていくのであった。







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