接近
「——休憩しよう」
リーダが右腕を上げ、残りの諜報員二人も止まる。
休憩とは言いつつも、これくらいの行軍であれば三人の息は上がっていない。それだけで冒険者としての熟度が高いことが伺える。
一人は木の上に上り、身を隠しながらの索敵を行う。
「ソナーを使います」
眼鏡を掛けた男は即座に地面に手を着き発動。
おおよそ一○キロメートルごとに森の中を駆けては休憩と索敵を繰り返している。
ソナーで検知できる物はやはり少ない。
森というには、あまりにもここは静かすぎた。その事実が三人に静かなストレスとして降りかかっていた。
だが、今回のソナーでは明確な反応があった。
「——二五キロ先、反応があります」
「ケラ、サーチできるか」
あいよ、と軽いノリで頭上、太い枝の上に立つケラと呼ばれた男がサーチを使う。
通常、サーチ魔法は五キロも範囲を広げられない。しかしケラが使うサーチは魔力の延ばす方向を限定することで他とは比べ物にならない範囲をサーチ出来るのだ。
さらにジャウと同様に魔力を極限まで薄くすることで、相手に察知もされにくい。喩え察知されたとしても、相手のサーチは届かない。まさに諜報向きといえる人材だ。
「——見つけた。二人だ。さらに数キロ先に四人。うち三人はガキだな」
「情報だと八人居るとの話だったが、一人は商人だ。仲間をつれて出ていてももおかしくはないか。——セラ、他には何かわかるか」
「湖があるようです。あとは小型の魔物の反応もあります。明らかにこことは状況が違いますね」
眼鏡の男、セラは地面から手を離す。
「しかし侵入者用の魔法が使われているとも思えんが」
「バグ隊長、相手はエルフです。我々が知らない魔法を使っていても不思議ではありません」
「隊長は止せ。——しかしそうだとしたら既に相手はこちらに気付いているということか?」
「いやー俺にはそう見えねーけどな。そんな使い手だとしたら俺のサーチだって見破れるだろう。なのに奴さん、動きもねーぜ」
単純に湖の周りに餌を求めて魔物が集まっているだけなのか、とも考えられる。
どのみち依頼のためにはエルフの住まう集落に赴かなければならないのだ。
「一○キロ進んだらケラは待機。サーチで状況を見ながら、必要であれば撤退しろ。セラは集落に、俺は二人組のほうに向かう」
バグは匂い消しを食み、さらにはすり潰して露出している顔や手足に塗り込んでいく。
セラは匂い消しの外套に身を包んでいるため要らないが、動きにくくなるためにバグは軽装のままだ。
「よし、気を抜かずにいくぞ」
* * *




