歓迎、ラッシー一家
ヤトラに案内されてラッシー一家が案内されたのは、そろそろ小さな集落と言って差し支えないほどの場所だった。
家が三軒に畑がいくつか。集落のど真ん中に大木が聳え立ってはいるが、それもまた森の中の醍醐味。
ラッシー一家とラウダ一家の顔合わせの後、ラッシー達は引っ越し作業に入る。
先にアイテム袋から必要な家具などを出し終えたら、袋をヤトラへと渡す。
「頼まれていたものは全部その中に入っているぞ」
「ふむ、アイテム袋か。見るのは久々だけど、随分小さいものをつかっているんだね」
「小さいって……これでも金貨二○枚だぞ」
「なんだ、言ってくれれば作ったのに」
「なん……だと……」
絶望した顔のラッシーを置いて、ヤトラは袋をもってラウダ家にお邪魔し、それぞれに衣服と調理器具を渡していく。
「そろそろ箪笥がいるな」
「その前にラウダ、君には狩りに行ってほしい」
「狩り?この辺に獣がいるのか?」
未だ大きな獣にであっていないラウダ。
リスや小鳥などは見かけたが、食料にするには数が必要で、弓で射るにも的が小さく狙いにくい。
生憎と罠の知識はこれっぽっちもないので、ラウダとしてもそれらを捕まえられずにいた。
「ああいるとも。とびっきり凶暴で大きくて美味しいのがね。弓を渡すから、ジャウにも教えてあげてほしい」
「ヤトラ姉、僕も覚えるの?あとこの服のチョイスなんだけど」
ジャウが持っているのはスカート付きのパンツだ。ラッシーに渡したメモには森の中に住むこと前提でなるべく肌を隠すような物を頼んでいたが、同時におしゃれにも気を使ったものを、とお願いしておいた。
実用的な服だけだと二人から、とくにトリシャからは文句が出てきそうだったので気を使ったつもりなのだが、ジャウは気に入らないらしい。
もともと男の子だもんね。わかるよその気持ち。とはいえ。
「——ジャウも少しはおしゃれを覚えていった方がいい。人間の女性として生きていくしかないんだから、そろそろ割り切って考えておくれ。あと弓を覚えるのは、魔法が狩りに向かないからだよ」
「魔法って、狩りに向かないの?結構太い棒も切れるようになったのに?」
「うん。まぁ今度暇があったらやってごらん」
「……?わかった」
これは実際にやればわかるのだが、獣は魔力にとても敏感である。
とくに攻撃系の魔法は自分から魔力を放出し、それが形となって現れるだけに、獣は魔力を知覚するだけで逃げていく。
下手な魔法使いがサーチを行うだけでも逃げだすほどなのだ。
ラウダとジャウの片づけが終わるのを待って、ヤトラは自宅から二張の弓を持ってきた。
「どちらも私謹製の一級品だよ。大事に扱っておくれ」
とはいっても加護も何もない。
一応エルフが作る物には自然の加護を得るみたいな効能があるとかないとか言われているけど、特にヤトラには何も感じられないので、普通の弓だ。
「北に人食いカエルがいる湖は説明したね?あのカエルを狩ってきてほしい」
「か、かえるを食べるの?」
「そうだよジャウ。カエルは淡白で、鶏肉に近いんだ。それにこの辺りで皆のお腹を満たせるお肉と言ったら、あれくらいしかいないだろうさ」
「うへぇ……」
嫌そうな顔のジャウがラウダに連れられて出発したのを見送ると、次はトリシャの相手だ。
トリシャにはファイとヒュージに畑の世話の仕方と、魔法の鍛錬を二人と一緒に行ってもらう。
狼族の魔力は多くないから、不器用なトリシャと一緒の方がいいとの考えだ。
ジャウはというと先ほどの言葉にも合った通り、こん棒くらいの木であればスパっと切断できるほどに風魔法が使えるようになっていた。
飲み込みが早いと同時に、うまく魔法が使えないトリシャが毎回むくれてしまって大変なのだ。
「これはとっていいやくそうで、これはだめ」
「どうやって見分けるの?」
「みわけるのー?」
母親を殺されているだけに、他人と上手く接することが出来るのか心配だった、二人とは直ぐに打ち解けたようだ。
これが人間相手だとどうなるか、だ。
ファイとヒュージは狼族だからいいが、人間を相手にした場合どうなるか。変な話だが、人間が人間を恐れる事になるかもしれない。
「ヤトラお姉ちゃん、次はなにすればいい?」
「——ん、畑の世話の仕方はしっかり教えたかい?それじゃあ魔法の特訓に入ろうか」
「やった!私魔法は初めて!」
「はじめて!ぼくも!」




