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ハイエルフ様、生き急ぐ  作者: えだまめのさや
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加護

 ジャウを連れていくのは森の中を五分ほど歩いたところ。

 一本の大木のところだ。

 高さは一○メートルほど。しかし太さは大人一○人が両手を抱えても足りないくらい太い。


「今度狼族の商人が私たちと一緒に暮らすという話は覚えているね?彼らの住む家を建てるために、木を切り倒して木材を調達するんだ」

「木材って……この大木?」

「そう。まぁ今日は見るだけだから気楽にしていていいよ」

「——ヤトラ姉。それって『次はやってもらうから』ってことだよね?」


 苦笑するヤトラ。

 本当に察しが良い。弟子にしたいくらいだ。

 ちなみにラウダの家は建てた時は地精霊もぐらに全部任せたので加護もなにもついてはいないが、ヤトラが自ら木を切り倒す時は加護を掛けるようにしている。

 というか木々の悲鳴で罪悪感が酷いので、加護を掛けないと寝覚めが悪い。

 とはいえジュードに掛けた加護はやりすぎなので、まずはどれくらいの加護がいるのか聞いてみる。


「やぁ大木たいぼく君。ちょっと君が欲しいんだけど、いいかい?」

「ヤトラ姉、木に向って喋るのはもう諦めたけど、誘い方ってものがあるんじゃない?」


 確かにそうだ。

 言われてみれば随分上から目線で……、いやハイエルフだから元から存在として上だしいいのでは。


「うん、正直な物言いが私の良い所だね。——で、返事はどうだい?」

『ハイエルフ様のお役に立てるのであれば、なんなりとお申し付けください』

「……はい?」

『我ら森の民は、ハイエルフ様、始祖レリア様の加護を持つ貴女様には絶対服従を誓っておりますゆえ

「なん……だと」


 どうしたの?とジャウが不思議そうな顔でこちらを見ている。

 今までにここまで驚いたヤトラを見たのは初めてだろう。

 そしてヤトラも人生で久方ぶりに驚いている。

 それもそうだろう。

 ジュードの時はあれほど文句を言われたのだ。いくらハイエルフの加護を貰えるからと言っても、容易く切られることを許容できるなんて考えも出来ない。

 そもそも何故大木が、ヤトラにレリアの加護があるとわかるのか。

 いや、おそらくそれこそがレリアの加護なのかもしれない、とも思う。加護が自動で回りに影響を及ぼしていると考えた方がいいだろう。


「……ちなみに聞きたいんだけど、レリアの加護を授かった私が、ハイエルフの加護を君に授けたらどんなことが出来る?」

『それはもう、貴女様の加護を頂けるのであれば、不動の民である我らでも自在に動けるようになりますでしょう』

「……ちょっと見せて」


 興味が勝った。

 神様から貰った始祖レリアの加護。具体的な効果は今まで全く分からなかったのだが、その一端が今詳つまびららかになったのだ。

 すぐさまヤトラはジュードの時と同様、水場を形成。

 いつもと同じく加護を授けようとした時だ。変化はヤトラ自身に起きた。


「始祖レリアが授かり、受け継がれし力と《《加護よ》》。今ここに彼の者を繋ぎとめることわりを断ち切り、新たな役目を与えよ」


 無意識の詠唱が変わったのだ。

 これはどういう事か。

 詠唱とは画一的な能力をするために考案されたものではあるが、それが無意識化で変化するなどあり得るのか。


(あの神様だからなぁ)


 うん、ありそうだね。

 ともあれ加護が掛った一○メートルを超す大木がどうなるのか。

 ジャウに少し離れているよう言い、自身も少し下がる。


「どう?動けそう?」

『おお……これは、これが足ということですかな』


 ニュアンス的にはズボッとした表現が正しいか。大木の根がタコの様に動き、長い枝が手の様にバランスをとったり地面に着いたりして、大木が自ら抜ける。


「なにこれぇ……」


 加護を授けた本人が呆けるのだ。

 ジャウなんて開いた口が塞がらない。

 とはいえ当初のもくてきを見失ってはいけない。

 あくまでラッシー一家の住居用木材が欲しいのだ。


「ところで大木君。話は戻って、君を住居用木材として欲しいんだけど、いいかな?」

『もちろんですとも。なんなら住宅地まで馳せ参じましょうか』

「い、いやここでいいよ、うん」


 もともと住居周りの大木に「あのハイエルフに目を付けられたら切られる」という風評を懸念して少し離れた場所の大木を選んだのだ。目の前で大木が木材になるような光景を見せたら風評被害は天元突破だ。


「あ、もしかして枝とかなるべく真っすぐにすることって出来るのかな?それだと使える木材が増えて嬉しいんだけど」

『ふむ……出来そうですな』


 じゃあそれでお願い、とヤトラは続いて地精霊もぐらを召喚する。


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