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ハイエルフ様、生き急ぐ  作者: えだまめのさや
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ジャウの才能


 ちなみにこの夜光草よるひかりそう、一部の魔法使いの間では別の用途として購入されることが多い。

 生で食べると魔力が回復するのだ。

 とはいっても普通の生活で魔力不足になるようなことはあまりない。

 必要とするのは冒険者か国に使える者か、はたまた——。


「ヤトラお姉ちゃん……これにがい」

「文句言わないで黙って食べる。魔力不足でぶっ倒れたトリシャちゃんが悪い。あれだけ魔法の使い過ぎには気をつけてっていっただろうに」


 ラウダ一家の家。

 トリシャがベッドに寝かされていた。


「じゃあ私はジャウの続きがあるから行くけど、ラウダ。トリシャちゃんが魔法を使わないよう見張っておいてくれ。本当に魔力が空になってしまえば死んでしまう事だってあるんだからね」


 ラウダに見張りを頼み、ヤトラは外へと出る。

 先日の妖精遭遇以来、ヤトラは二人に本格的に「襲われても生き抜く」ための魔法を教え始めた。

 サーチだけでは逃げきれない場合は死んでしまう。またサーチを抜けるような隠密魔法を掛けられていたら、それもまた同じ。

 家の前、ジャウが練習するのは風の魔法。

 火や水は比較的難易度が高く、風や地は難易度が低い。これは風や地が実際にすぐそこにある物質に働きかける魔法だから。

 逆に言えば常に火種を持っていたり水を持ち歩いて魔法の触媒とすれば火や水も難易度はグッと下がる。


「トリシャは?」

「大丈夫。苦いって言いながら夜光草を食べてるよ」

「うわー……」


 ちなみにジャウもすでに二回ほど食べている。

 一回目はトリシャと同じように倒れた時。もう一回は自発的に、魔力が少なくなってきたからと。

 あんまり薬付けみたいな事を幼い時からしても良いことは無いのだが、身を守る魔法を覚えるまでは仕方ない。


「それじゃあもう一度、やってみようか」

「うん」


 ジャウから三メートル離れたところに立てられた棒がある。

 まずはこれを切れるようになる事が目的だ。


「何度も言っているように、人が作り出した体系的な魔法は便利だけど、魔法の本質を捉えていない。魔法はイメージ。対象をよく見て、頭の中で風が棒を切り裂く風景を想起そうきし、現実世界に重ねる」

「うん」


 素直でよろしい。

 魔法に対する熱意はトリシャが上だが、取り組みへの姿勢はジャウが良いし、魔力の使い方も筋が良い、というとこだ。


「詠唱は要らない。集中して、自分のタイミングで魔力を込める」

「……ふっ!」


 ゴンッ、と硬い音が鳴る。

 立てられた棒が横から殴られたようにかしいでおり、一部が引っかかれたように繊維がむき出しになっている。

 なまくらな刃物で叩いたような感じだ。


「もっと風を薄くなるように意識して。両手で潰すよりももっと薄く、ハンマーで叩かれてぺちゃんこになった風が幾重にも吹き付けるように」

「うん」


 キンッ、と今度は金属音に近い音がした。

 傾いだ棒は更に水平へと角度を変えているが、棒の途中で刃に切られたような断面をあらわにしていた。


「——やった!」


 ジャウがはしゃいで棒を引き抜き、持ってくる。

 触って確かめれば、鉈などで切断した断面によく似ている。

 やはりジャウは筋がいい。恐ろしいくらいだ。

 キュクロプス族が特段魔法に長けた種族だとは聞いたことが無い。人間も同じ。

 なのに一○歳程度のジャウがここまで魔法を使えるのは輪廻転生による影響か、ジャウの能力なのか。


(いや、見た目だけで言えばジャウも成人に近い。そこも考慮すべきか)


 輪廻転生した際ジャウは男の子から女の子へ、さらにラ・ヨウで子供たちをまとめていたという少女の姿に近いとの事だ。強い憧れからこのような姿になったと思うのだが、もしかしたら能力までも変化している?


「ヤトラ姉、怖い顔してる」

「……ああすまん。考え事をね。ジャウ君の魔法センスが正直良すぎて、どこまで教えようかと」

「ほんと!?」

「ああ。だが精度はまだまだだね。今度は立てた棒を切っても傾かないくらいの力の加減や風の使いかたを覚えよう」

「わかった」

「では、見本を見せようか」


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