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ハイエルフ様、生き急ぐ  作者: えだまめのさや
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夜の明かりに

 ヤトラが小屋に戻ると、薬草畑の雑草をこまめに取っていたトリシャが出迎えてくれた。

 こまめな仕事に薬草たちからの評判も良い。ジャウは……うん。元が男の子だからね。

 そろそろ家に戻ろうか、と声を掛ける。

 夕暮れ時だが、森の中は光が届かないためにかなり暗くなるころだ。

 ここが森の生活の難点なところで、外で活動できる時間が短いのだ。


「そろそろ夜光草よるひかりそうを探そうかなぁ」

「よるひかりそう?」


 夜光草とはその名の通り、夜に光る草である。

 明るさは蝋燭そうろくよりも明るく、ライトの魔法よりは暗い。また夜光草の大きさで明るさが変わる事や、根付きやすいのでどこでも植えられるために大きな庭園などの飾り付けとしても良く使われる。

 もっとも、見つけるのが大変なのだが。


「そうなの?夜にひかるんでしょ?」

「これがね、光らないんだよトリシャちゃん。夜光草の光る部分はね、普段は葉っぱに覆われているんだ。人が使うときは覆っている葉っぱを取ってしまうからいいんだけど、自生している時は光っているかどうか全くわからないんだ」


 とはいえこれだけの森。そう遠くない所に生えているだろう。


「そうだ、トリシャちゃんも今夜一緒に探しに行くかい?」

「いいの!?」

「いいとも。どうせならジャウも誘おうか。お父さんに許可をもらっておいで」

「わかった!」


 トリシャが走って小屋に向っていく。

 ここに来た最初の一週間は慣れないことも多かっただろうが、二週間も経ては子供は飽きてくるだろう。

 たまにはこういう刺激的なイベントがあってもいいだろうし、そろそろ夜の森の歩き方を教えておく必要もある。

 ラウダがどういうかはあれだが、森の中で生きていくのだ。夜の森を歩く機会だっていつかは訪れる。

 それなら早いうちに連れまわした方がいいだろうとの判断だ。


「さて、何をもっていこうかな」


 ヤトラはリュックの中から夜に歩く装備を選定し始める。ハイエルフであるヤトラだけなら何でもいいのだが、子供たちがいるとなるとまずは水だ。

 ラウダが先日竹で作った水筒をくれたので、ここに水と薬草をいれた。

 湖に流れ込んでいる沢から汲んできた綺麗な水だが、煮沸していないので薬草を淹れて毒素を消しておく。

 怪我をした場合に備えてジュジュからもらった大きな葉と、そこいらの草を数本準備して包帯替わりとして準備。

 果実も少しあった方がいいだろう。甘いものは疲れによく効く。

 ちなみにジュジュからよく貰うリンゴの様なオレンジはゴレンジと名付けた。

 トリシャから「変ななまえ」と言われたが、他に案もない。

 後はジャウかトリシャが寝ても良いように、太めの枝を三本。

 そのまま杖として使っても良いし、おんぶした時に杖を支えとして使うと楽なのだ。


「聞いたぞヤトラ。夜光草を取りに行くようだな」

「ああラウダが。君も来るかい?」


 ジャウとトリシャを連れたラウダが小屋から出てきた。

 二人とも、ラウダが作った木製のスコップを持っている。


「お前なら心配ないと思うが、娘たちを頼む。儂も夜に作業出来るようになればもう少し色々と作れるようになるとは思っていたところだ」

「おとう、まかせて。おっきいの採ってくるね」

「……行ってきます」


 ヤトラはそれぞれに杖を渡し、準備万端だ。


「三時間くらいで帰ってくるよ。たとえ帰ってくるのが遅くても、決して一人で暗い森に入ってはいけないよ。明るくなってから探すこと」

「分かっている。儂も流石になれない森の中へ真夜中に入ろうとは思わんよ」


 どうだかなぁ。ジャウが女の子になってからラウダはちょっと変わったようだし(ジャウ談)、片親になってしまった拍子に過保護気味とも見えるし。夜に連れ出しても文句を言ってこない所を見るに、まだ大丈夫だとは思うけど。

 三人は小屋から離れるとジャウ、トリシャ、ヤトラの順に森の中を歩いていく。

 夜光草はどこに生えているか分からないため、特に行く当てはない。ただし北にある湖に近寄るのは危険なため、そっちには行かないようと告げる。


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