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ハイエルフ様、生き急ぐ  作者: えだまめのさや
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そしてバブル

 これが美女に言われたのであれば舞い上がるのだが、太った男に言われたところで苦笑いしか出てこない。

 ラッシーはその場でほとんどの宝石を売り、軽くなったリュックでさらに道を進む。

 大口の取引先は先の宝石店だけなので、あとは個別に注文があったところを数店舗回る。

 最期はとある貴族のお屋敷だ。

 数年前から依頼を受けていた、極まれにしか市場に出ない宝石を持ってきたのだ。

 宝石だけならガジャル連邦では案外簡単に購入できるのだが、国外に持ち出そうとすると非常に手間のかかる宝石。

 用途は魔法の触媒。

 これ一つあるだけで使用者の魔法力を二倍にまで引き上げると言われる宝石は、ガジャル連邦が他国に漏れ出さないよう厳しく管理をしている。

 ラッシーが今回手に入れたのは実に幸運だった。

 屋敷を訪れると守衛からメイド、執事と取り次がれ、客間に案内される。さすがにラッシーも貴族の屋敷に入るのは経験が少なく、どことなく緊張が漂う。


「お待たせしました。ハイリー伯爵家に代々勤めております、執事長のフューフルと申します」


 部屋に入ってきた初老の男。

 簡単な挨拶ののち、さっそく仕入れた宝石の品定めに移る。

 ごとり、と鑑定台に置かれる宝石。

 今回仕入れたものはそこそこの大きさだ。宝石は大きさに比例して魔法力を伸ばすのだが、小さいものは武具に仕込んだりとそれはそれで使い道があるので、まずこの大きさのものが国外に出ることは無い。


「失礼ですが、試してみても?」

「どうぞ。ただし込める魔力はいつもよりかなり少なめに。この大きさだとマッチの火も火柱になりますので」


 執事長は綿手袋わたてぶくろを外すと、てのひらに宝石を載せる。

 途端に執事長の掌から水が溢れだした。


「素晴らしい……」


 メイドを呼びつけ濡れたカーペットの片づけをさせる傍ら、執事長は別のメイドに報酬を持ってこさせるよう指示。

 しばらくするとこれ見よがしに積まれた金貨が運ばれてきた。


「必要な分だけお取りください。残りは商人ギルドを通してラッシー様の口座へとお送りいたします」

「こ、こんなにもらっていいんですか?」

「はい。この宝の価値を考えれば当然ですが、さらにこの国では政治的価値を生むものです。そしてこの大きさ。通常ならまず手に入らない。であるならば、私どもは貴方の働きに見合った報酬を出すのが当然です」


 つまり、また手に入ったら持ってこいという事だ。

 まぁラッシーとしても滅多に手に入らない物ではあるので、そうそう何度も売りに来ることは出来ないのだが、それでも信用を勝ち取れたというのは大きい。

 であるならば、相談したいことがある。


「ところで執事長殿。実は折り入ってご相談がありまして」

「ほう……?素晴らしいものを持ってきていただいた貴方だ。お話でしたらお聞きいたしましょう」

「ありがとうございます」


 取り出したのはファーシュタイン王国に来る途中で出会ったヤトラから受け取った薬草の束。


「薬草ですか。失礼ですが、どちらで?」

「ガジャル連邦との街道沿いで。詳しい場所は流石に教えられませんし、偶然見つけた時も、群生しているようには見えなかったのでおそらくそんなには多くないと思います。御相談というのは、これをどうしようかというものです」

「——なるほど。確かに騎士団襲撃の件からまだ日が浅い。下手なところで売れば貴方の身が危ないというわけですな。——良いでしょう。こちらの薬草、私どもで買い取らせていただきます。ただし、相場よりは安くしていただく、というのが条件です」

「もちろんですとも。私としても危ない橋は渡りたくない。是非ともお願いしたい」


 執事長は薬草状態をチェックし始める。

 薬草の良しあしは基本的に大きさ、香り、乾燥状態で決まる。

 一応乾燥しすぎないように、運んでくる間に数度水に付けたりしたのでそれなりに瑞々しさは残っているはずだ。

 もとから大きさは良かったので、市場に出したらそこそこ良い価格になるだろう。


「大きさ、香りも悪くない。状態は少しあれですが、処理すれば十二分に使える範囲ではあるので、全部で金貨一五枚といった所でしょうか」

「金貨、十五枚……!?」

「えぇ。市場に出せば金貨二十五枚はするでしょうが、そこは貴方の安全と引き換えという事です。どうされますか?」


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