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ハイエルフ様、生き急ぐ  作者: えだまめのさや
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始動、薬草栽培

「だいぶいい感じに育ってきたね」


 畑一面に生い茂る薬草たち。

 ラウダ一家を迎え入れて二週間が経った。

 彼らの住処も地精霊もぐらにお願いしたが、木材の調達も一緒にお願いした。

 私がやるとハイエルフの加護を与えてしまうからね。

 ラウダ達が木々の声を聞こえるわけではないが、ハイエルフと明かしていない現状、下手なことはしない方がいい。

 木こりであるラウダは人間になってからも木こりを続けたがっているが、キュクロプスと人間では体格と筋力に大きな違いがある。

 切り倒した大木を一人で処理できない今、無理して木こりをしてもらうよりは湖から引いた水路の増設や、動物除けの策などを作ってもらっている。


「ヤトラお姉ちゃんは薬草とおはなしできるの?」

「そうだよトリシャちゃん。森に住むエルフは植物とお話しできるんだ」


 すごーいと隣りでしゃがみ込み、薬草をしきりに観察しているトリシャ。

 ジャウとトリシャの仕事は基本的には雑草取りだ。

 とはいっても雑草も毎日生えてくるわけではない。食料はジュジュから貰うリンゴ風オレンジと、森で集めてくるキイチゴなどが簡単に取れるため、今のところ困ってはいないのだが、栄養的に果物だけだと次第に偏りが出てしまう。

 ここは一つ、ラウダに弓でも持たせて狩でもさせようか。

 湖は人食いカエルがいるので行かせてはいないのだが、そのうち釣りも出来るようにしたい。

 ちなみにかすみも食べれるハイエルフの肉食傾向は強くない。自然と共生している身からすると、やはり果物や野菜が良い。


「ヤトラねえ。薬草ってどうつかうの?」

「良い質問だねジャウ。実は薬草にはたくさんの使い方があるんだ」


 女の子になったジャウは当初の身長よりも頭ひとつ分伸びたのだが、精神年齢は変わっていないのでまだまだ無邪気な子供だ。

 それでもトリシャの面倒をよく見ているし、最近は収獲に丁度良い薬草の、小さな変化にも気づくようになってきている。

 案外利発な子なのかもしれない。


「例えば傷口に使いたい場合、生の薬草を良く揉んで、傷口に当てて止血すると直ぐに血が止まる。乾燥させてお茶にして飲めば、体力が落ちている人も少し元気になる」


 まさに二週間前のトリシャのように。


「料理に入れることもある。主に香草こうそうとして入れるんだけど、毒草や魔物の肉と一緒に炒めることで、毒を打ち消す効果があるんだ」

「ま、まもののおにくを食べるの……?」

「トリシャちゃんは食べたことがないかな?魔物の肉には力を一時的に力を与えてくれる栄養がたくさんあるんだけど、一緒に毒も入っていたりするんだ。だから薬草と一緒に炒めて、栄養だけを取り出すんだ」


 ちなみに人間は良く勘違いするが、魔物と魔人族の間には明確な差がある。それは言葉を発するかどうかだ。

 意味ある音を発し、他種族とコミュニケーションが取れる魔物が、魔人族と呼ばれている。逆に魔物は人間や魔人族を見境なく襲ったり、犬の様に魔人族に飼われている魔物もいたりする。


「それじゃあ今日は薬草を採ってみようか。方法は覚えているね?」


 うん、とジャウとトリシャが頷く。


「薬草さんにはなしかける!」

「一回揺れたらまだ。三回揺れたら採れる。二回の場合は大きさで判断する」

「うん、そうだね。じゃあまずはこのかごいっぱいまで取ってみようか」


 籠はヤトラ謹製だ。植物を使った道具全般は大体作れるのがヤトラの強みであり、サバイバル生活の質向上に繋がっている。伊達に数千年生きているだけある。

 そしてジャウとトリシャに教えたのは、薬草との合図だ。

 ジャウもトリシャも薬草と話すことは出来ないが、コミュニケーションを取る事はできる。それはヤトラを通して薬草と相談して決めた事。

 言葉でなく動きであれば、人間である二人にも理解することが出来る。


「薬草さん、とっていい?」

「三回揺れた。——こっちは一回だからまだみたい」


 《《姉妹》》の作業を見守りながらヤトラはここ数日、そわそわしている自分を落ち着かせる。

 そろそろ商人であるラッシーが街道に来るのだ。

 今回はそれなりに薬草を用意できるし、欲しいものもいくつかある。

 まずは服だ。住人が一気に四人となったために、ヤトラとしては人の目を気にしなければならなくなった。

 一人であれば洗濯をして乾くまで葉っぱを着ていればいいのだが、男であるラウダがいるとなるとそういう訳にもいかず。

 更に皆が今着ている服しか持っていないので、全員が同じく困っているのだ。

 二つ目が調理器具。

 ラウダを狩りに行かせるとなると、捌くための包丁や煮炊きする大きな鍋が必要になる。

 今は拾ってきた旅人の調理道具で何とかしているが、基本一人用だ。サイズが小さくて一度にたくさんの料理は作れない。

 三つめが、肥料。

 薬草たちからは肥料の使い過ぎに注意されるが、何も薬草だけに使う必要もない。

 すでにハーブ類は少し栽培を始めたし、自生していた豆類や野生化した人参にんじんなども、この二週間で見つけることができた。

 しかし人参は葉が大きく、可食部である根が小さい。そこで少し肥料を使ってみたところ、ある程度根が大きくなることが分かった。

 今はまだ人参の種を取るために食べてはいないのだが、種が取れたら人参の栽培も始めたいと考えている。

 それに薬草の価格についても、もう少し詳しく聞きたい。

 この前の話だと薬草五本セット一束として、一〇束もあれば絹が買えるとの話だったが、この前渡した薬草はどれくらいの価格になっただろうか。

 状態の良いものを持ち込むには隣接するファーシュタイン王国もガジャル連邦も、どちらも若干遠い。

 そうなると必然的に少し乾燥させた状態として処理した方がいいのだが、本当なら生の状態だと高く売れるのだろう。

 本当はできない事もないんだけど。


「そのあたりはラッシーに聞いた方がいいな」


 素人考えほど当てにならないものはない。

 そもそも人の国が求めている薬草がどのような状態かもわからないのだ。とりあえずは乾燥させたものの方が保存も効くしいいだろう。


「よーし二人とも。薬草はそのくらいにして、次はキイチゴを取りに行こうか」


 * * *


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