これからのこと
ジャウが背後から飛び出してラウダにしがみつく。彼は両手にトリシャとジャウの二人を抱える羽目になったが、目の前であのような魔法を見せつけられたのだ、無理はない。
それよりもヤトラはラウダの言葉を吟味しなければならない。
冒険者が来た、と言ったが彼らは今、薬草取りに追われているというのがラッシーの情報。
今日出会ったばかりの彼が嘘をつくとは考えられないし、情報が誤っているにしては光魔法が使えないなどの事もあるので、考えにくい。
であれば、目的はただ一つ。
「ラ・ヨウで薬草を採取できるところはあるかい?」
「薬草か。確かにあの周辺は牧草地帯が広がっていて、日当たりの良い斜面にはよく薬草が生えていたな」
「おそらくそれだ。人間は今、回復魔法が使えない状態でね。血眼になって薬草を追い求めているらしい」
「……たったそれだけの為に、妻は、村の皆は殺されたというのか……!」
「はいはい怒らない怒らない。まずは事実の確認が先だ。ラ・ヨウの村人が殺されたというのは本当かい?」
終戦直後にいきなり敵国の人を殺すなど、普通なら考えられない。だが回復魔法がなくなってパニックになっている状態だというのであれば可能性はいくらでも考えられる。
「本当だ。妻は首を落とされ、皆も次々に火の中に放り込まれていた」
「……穏やかじゃないね」
本当に薬草が目的なのか?
普通に考えれば魔人族側は敗戦国だから、戦後処理として薬草でも金品でもせしめればいいだろうに、何故冒険者は村を壊滅させるなどという暴挙に出たのか。
いや、戦中の鬱憤晴らしとも考えられなくはない。
「もう少し詳しい情報が欲しい。あちらにテントを用意しているから休憩しながら話そうか。特にトリシャちゃんは見た目に反して軽すぎる。随分と無理をして逃げてきたんじゃないかい?」
ヤトラは一家三人を引き連れてテントまで戻ると、湯を沸かす。
先程の薬缶にお湯を足すとまずはトリシャがもつカップに並々と注ぐ。二煎目だが、薬草の効能はある程度あるはずだ。
「熱いから気を付けるんだよ」
「……うん」
トリシャは頷くが、飲む気配はない。
不思議に思っていたら横にいたジャウがカップを取り上げ、すこし飲む。
「大丈夫。どくははいっていない」
「君たちこの四日間で何を食べて……いやこの話題はやめようか」
ヤトラはリュックから果実を取り出した。ジュジュから貰うリンゴだかオレンジだか良くわからないあれだ。
商人を捕まえるために数日は街道で張り込むつもりだったので、それなりに数は持ってきている。
「ゆっくりお食べ。喩え毒が入っていなくても、いきなり食べたらお腹がびっくりして痛くなるよ」
「ありがとう、エルフのお姉ちゃん」
「なに、目の前で君たちからお父さんを隠してしまった事へのお詫びだよ。あと私はヤトラというんだ」
「済まないな、ヤトラ。食料まで分けてもらって」
「所詮一人暮らしのエルフだよ。食料なら困ってなくてね」
ちなみにハイエルフは霞も食べれる。美味しくはない。
「一息ついたら、もう一度状況の整理と、これからの事を考えようか」
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