儲けか地位か
回復魔法に代表される光魔法が使えなくなったことで、薬草が経済を回しているといっても良いような現状、薬草で富を築くよりも、薬草を手掛かりに地位を築いた方がいいな。
いつか薬草の需給バランスが安定した時に、ただ富が残るよりかは地位と富が残る方が遥かに良い。
ことハイエルフは長命なのだ。
地位があれば働かずして楽しく生きることも出来ると考えれば、今世のモットーにも適う。
「ラッシー、君は商人だよね?一つ私と取引しないかい?」
「キュクロプスを一捻りなあんたから取引だなんて、空恐ろしいな」
「あんなもの騎士団であれば誰でも出来るだろう。そんな事よりも、実は薬草を栽培していてね。ゆくゆくは薬草を売りに出したいと思っているんだ」
「なにっ!」
思わず立ち上がろうとしたラッシーがあいたたた、と痛みに悶えて蹲る。
止血も良いが、回復力を高める意味でもヤトラは先ほどの薬草ハーブ茶を差し出した。
「茶か」
「乾燥させた薬草とハーブでつくったお茶だよ。少しは痛みにも効くはずさ」
「ほんと、何から何まで準備が良いな」
「準備が良いのは確かだが、その代わり君は運がいい。魔物から助かり、今こうして私からは薬草の取引を持ち掛けられているのだから」
ずずっと啜るラッシーを横目に、ヤトラはリュックから数束の薬草を取り出した。持ってきている薬草はこれで全部だ。
「薬草を育てるのは非常に難しいのは知っているね?私も手探り状態なのだが、小規模ながらも安定的に育てるところまで漕ぎつけたんだ。とはいっても森の中で長いこと暮らしていてね。この辺りの地理も分からなければ今の世の経済も分からない。だからこうして街道で誰か通るのを待っていたというわけだよ。もっとも、薬草がそこまで希少品になっているとは思わなかったけど」
「……そうだな。少し前だったら薬草なんて二束三文だった。子供のお使いで買いに行くようなものだったんだ。それが今となっちゃあ貴族様が押し寄せて全部買い占めていくんだからな」
「問題はそれなんだ。世間知らずの私が薬草を売りに行ったところで安く買い叩かれるかどこかの貴族に捕まるかと心配していてね。だからこそ君に頼みたい。商人の君なら安全に捌けるルートもあるだろう?」
「うーん……」
ラッシーは毛深い手で顎を擦りながらうんうんと唸る。
「俺が普段扱っているのは宝石と絹だからなぁ。薬草を捌けるルートか」
「宝石と絹なんて物を扱っているのに、護衛もつけないなんて流石に私でもおかしいと思うんだけど」
「こちとら事情があるんだよ。それにファーシュタイン王国とガジャル連邦の交易は規模が小さくてな。街道も往来が少ないから盗賊もいないし、護衛なんてそんなに要らないんだよ」
「——まって。ファーシュタイン王国っていった?あの勇者出身の?」
「……おまえさん、ほんとに何も知らないんだな。ここはファーシュタイン王国とガジャル連邦を結ぶ街道で、ちょうど中間地点くらいだが、位置的にはファーシュタイン王国側だな」




