同じクラス?
目の前には息を切らした王子様がスカートを履いていた。重要だったので二回言いました。よく見たら制服はこの高校の女生徒の制服を着ている。
さっきはあまりの背の高さとイケメンさで彼女(?)の服装をよく見ていなかった。
「アハハ、間に合ったって感じかな?」
「バカ野郎。完全に遅刻だ!」
校門に教師がいたことに安堵したイケメン少女におっさん教師が叱る。
教師の反応を見る限り遅刻の常習犯のようだ。
悪びれずに校門を通ろうとする彼女に思わず声をかけてしまった。
「あなたは」
「さっきの子か!さっきはごめんね。文句をいいにここまで来たのかな?私は謝ろうとしたんだよ。でも君が逃げるから、はい無効。自分の学校に行きな?」
彼女も僕を中学生と勘違いしているようだ。
「僕は高校生です!今日からこの学校に転校してきた転校生です!」
彼女の勘違いをただすだけなのに大声をあげてしまった。少し恥ずかしい。
おっさん教師は僕達のやり取りを生易しい目で見待ってくれている。青春をしているなって思っているのだろうか?こっちは真面目に真剣にやっているのに失礼しちゃうな。
「そりゃ、ごめんごめん。一年生なんだね。じゃあね。私急いでいるから」
彼女は勘違いのまま颯爽に行ってしまった。
僕高二なんだけど。
「まあ、なんだ。へこむなよ。アイツはああいうヤツだけど意外と気がいい奴だ」
おっさん教師に慰められた。
おっさん教師に職員室の場所を聞いて、気を取り直して歩み出した。
遅刻してしまったおかげか一人も生徒とすれ違うことはなった。
教えてもらった職員室にノックをして入る。
「失礼します」
先生方は見られない制服を着た小さな僕を見て戸惑いを隠せないようで、扉の近くにいたおっとりしたジャージの女性の先生が声をかけてきた。
「君?迷い込んだの?ここは中学校じゃなくて高校なのよ」
予想していた反応に僕は準備していた返答する。
「いえ、あってます。今日この学校に転校してきた鈴木裕です。遅刻してすみません」
戸惑う先生達を無視して勢いよく頭を下げた。
「え?君が?今日転校してきた鈴木君?背が・・・」
おっとり系の先生が僕の禁句を口しようとして言葉を飲み込んだ。
その先を口にしていたら手が出ていたかもしれない。危ない危ない。転校して早々先生を殴り飛ばしていたかもしれない。
「ごほん。もうホームルームが終わってもうすぐ一時間目の授業が始まるのよ。しょうがないわね。転校生の紹介はホームルームですると思うのだけど、遅刻してしまったからには一時間目の時間を使ってパパっと終わらせてね」
ごまかすように咳払いをした先生はもうすぐ授業が始まると言う。その時に手早く自己紹介を済ませるように要望された。
どうやら目の前のおっとりした先生が自分の新たなクラスの担任のようだ。見た目は二十代後半くらいの年齢に見える。のほほんとした表情からして綺麗な女性というよりも可愛いお姉さんな感じだ。
よかった厳しい先生が担任じゃなくて。でもどこか抜けていそうで不安な感じがするのは気のせいではないはず。
「さっそくクラスに案内するわね」
先生は僕を引き連れて教室へ向かった。
ホームルームが終わったせいなのか廊下にはちらほら一時間目の授業へ向けて移動している生徒の姿が見えた。僕が今着ている制服が前の学校の制服のせいで奇異な視線を向けられている。中には僕のことを見ながらこそこそと言い合う生徒達もいた。
「あの子すごく可愛くない?見たことがない制服を着ているけど転校生かな?」
「でもすごく背が小さいから違うんじゃないの?いくら何でも小さすぎて高校生かどうか怪しいんだけど、どこかの中学校と間違えて入っちゃったんじゃないの?」
僕こんな見た目ですけど、ちゃんと高校生なんです。中学生とか小さいって言わないで。マジで傷つくから。
先生に教室まで案内されている僕は僕を見ていろいろ言う生徒達に反論できずにいた。我慢していた。
「今日からあなたの新しいクラスはここよ」
奇異な視線から頑張って耐えて案内されたのは1-Cの教室だった。教室の中はまだ休憩時間なのかがやがや騒がしかった。
この中の教室で僕の新しい青春が始まるんだ。
君はちょっとここで待っててと言い残した先生が教室のドアを開けた。
「みなさん。授業始めますよ。席についてください」
先生の声を聴いた生徒達が素直に自分の席に着く。
みんなが席に着いたのを確認した先生は一回頷いて口を開いた。
「授業を始めたいと思いますが、その前にホームルームで紹介できなかった転校生が来ましたのでこの時間で紹介します。入ってきてください」
先生の声に背中を押されて緊張しながらも教室へと足を踏み入れた。
急なサプライズにクラスメイト達はテンションが上がり、プチお祭り騒ぎが起きた。そして僕の姿を見た生徒達の反応は様々だった。僕が男か女か迷う男子や可愛いと叫ぶ女子、ただ一人だけ固まる子が一人だけいた。
僕も固まる子を見て教卓の前へ歩く足を止めざる負えなかった。
その子はスカートを履いた王子様、間違えた。先ほど偶然にも出会った背が高い女子がいた。
まさか僕と同じ一年とは思わなかった。