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アネーデス王国の出来事

連載小説が煮詰まったので、息抜きで書きました。

連載小説や他の小説も読んで頂けたら嬉しいです♪



※誤字報告ありがとうございます!

オーラシア大陸の南に姉妹国と呼ばれる二つの国があった。


西側のアネーデス王国

東側のイモート王国


過去にはお互いの王族を嫁がせていた事もあり、お互いにそれぞれの王族の血が受け継がれている。


そして、アネーデス王国で周辺国を驚かすニュースが大陸を駆け抜けた。


その国のとある男爵令嬢が、王太子に見初められ【正しい正規の手続き】を踏んで、【王太子妃】になったのである。


その出来事から1年後、隣のイモート王国でも、その国の男爵令嬢が王太子の【婚約者】になったと騒がれたのだった。



しかし、この二人の男爵令嬢には大きな違いがあったのです。


それは────




アネーデス王国にあるエチゴヤ男爵家。


家名でわかる通り、過去に異世界転生者が居た家系であり、他の小説同様に日本にあったアイテムを作り出し、巨万の富を得た男爵家である。過去には陞爵の話もあったが、庶民に寄り添った商いがしたいと言う理由で、丁寧に断った過去があった。


そして、【問題を起こした王女】が数代前に降嫁した事もあり、実は王族の血も混じっている由緒正しき男爵家だった。


今回、シオン・エチゴヤ男爵令嬢は、両親からおしみなくお金を注ぎ込まれて、最上級の教育を受けてきた。それは上位貴族と同じ教育を受けさせられた事を意味する。


何故か?


エチゴヤ男爵家の商売相手には他国の貴族、王族も含まれており、両親の仕事の関係上、連れて行かれる事もある為、恥を掻かないように教育されたのだった。だが、厳しいだけではなく、ちゃんと愛情も注がれて大事に育てられた為、礼儀正しく、今どき珍しい『強く、気高く、美しく、清らかな心』を持った令嬢へと成長したのでした。


そのシオン男爵令嬢がその国にある学園に入学する事で話が進む。


この大陸のほとんどの国では12~18歳までの貴族が学園に通わなければならない。

それは、学園にいる間に社交界への人脈作りや、派閥の顔つなぎ、婚約者を探す為など重要な役目があるからだ。


学園と言う小さな社交の場で、シオン令嬢は目立った。それは、派手とかではなく、生まれ持った気品などのせいである。


ただ歩くだけで、他とは違う優雅さがあった。

動作の一つ一つにスキがなく、公爵令嬢や侯爵令嬢なども一目置く存在と自然となった。


「本当にシオンさんは所作が綺麗ですわね。私も見習いたいですわ」

「本当に勉学も素晴らしい成績ですのに、驕る事もなく性格もよく礼儀も正しいので好感が持てますわね」


上位の令嬢達に囲まれ、礼儀正しく、マナーも完璧で、相手に不快感を与えない性格に自然と人が集まっていった。


そこに、アネーデス王国の王子も近寄って行くのは自然の流れだった。


最初はクラスメートとして、他の令嬢と一緒にお茶を楽しんだりしていたが、それが段々と【恋】に変わっていくのに時間は掛からなかった。


そして、アネーデス王国のゼノン・アネーデス王子はシオン令嬢に告白した。


しかし、シオンは真っ当な感性と【常識】を持っていた為に丁重に断った。


もし、ゼノン王子が本気であれば、まず国王様と王妃様に許可を取り、更には【現在の婚約者】にスジを通して向こうの了承を得てからにして下さいと言った。


決して自分勝手に振る舞ってはいけない。王族としての義務と責務を忘れないでとも付け加えて伝えた。


そして、その時に初めて検討しましょう。


シオンの言葉に、ゼノン王子はまず国王様と王妃様にお願いに行った。

無論、大激怒されて許可されなかった。


1週間の時間を掛けて説得した事により、婚約者である公爵家が了承すれば認めると言われた。

そして、こちらの有責での【婚約解消】の為、賠償金は王子の個人財産から支払う事が決められた。


ゼノン王子は婚約者であるリッシュ公爵家に向かった。婚約者であるアリア・リッシュ公爵令嬢は8歳の時に婚約者になった幼馴染である。



ゼノン王子は父親を説得している時に、アリア令嬢が王妃になる為に厳しい教育を受けている事を改めて知った。


自分も王族としての教育を受けてはいたが、自分の我が儘で、今までのアリアの頑張りを、それに費やした時間を無駄にしてしまう事に改めて気付かされた。


いや、シオン令嬢に言われて考えさせられた。

そんな簡単に婚約解消を言える訳では無かったのだ。


緊張した様子でリッシュ公爵家へ向かうと、そのままアリア嬢と部屋で二人にさせられた。そしてアリアから言葉が発せられた。


「殿下のご要件は察しがついております」


ゴクリッ喉を鳴らすゼノン王子だったが、その後にアリアから言われた言葉は予想外なものであった。


「シオン令嬢を愛してしまったので、婚約を解消したい。そうで御座いましょう?」


!?


「…………気付いていたのか?」

「はい。何年婚約者をしていたと思いですか?私も【とある理由】からシオン令嬢の事は目を付けていたのです。そこで殿下に提案がありますの」


アリアは一枚の紙を渡した。


「まず、殿下との婚約は『解消』ではなく、『白紙』にして欲しい事」


婚約自体無かった事にする。

それは可能だ。

解消よりは、白紙の方が女性側にもデメリットは少なくなる。


「了解した。それで他には?」

「シオン令嬢を当家へ養女として迎え入れ、うちから………リッシュ公爵家から王妃を出した事にしたいの」


!?


確かにそうすればリッシュ公爵家としては、王妃を輩出した家名として面目が保たれる。


しかし、良いのか?

私が恋心を抱かなければアリアがそのまま王妃になったのに、その相手を家に迎え入れるなんて。


アリアはゼノン王子の考えを察して、理由を話した。


「ご安心下さい。すでに両親は了承済みです」

「えっ、それは本当かい?私の我が儘のせいで君を傷付けてしまったのに?」


アリアはテーブルに出された紅茶で舌を濡らせてから話した。


「理由は2つあります。1つはシオン令嬢なら王妃が務まると納得している事。更に言えば、過去に王女様が降嫁しているので、血筋も問題ない事です。他の貴族も納得するでしょう。そしてもう1つの理由なのですが、正直、家名の恥なので秘密にして下さい」


急に真剣な眼つきになったアリアに動揺したが頷いた。


「実は、少し前に事業で大コケしまして、莫大な負債を抱えてしまったのです。しかし、シオン令嬢を養女として迎え入れて、エチゴヤ男爵家の後ろ盾になれば資金援助してくれると言うのです。正直、このまま殿下に嫁いでも、持参金すら用意が出来ない所でした」


両親の失敗の事とはいえ、少し自虐的に笑うアリア何も言えなかった。


せめてもの救いは、両親は浪費家ではない事だろう。しかし公爵家と言う家柄の為に、ドレスや装飾品など、それなりのものを身につけなければならないので、必要経費は他家より多かった。


「それで君は納得しているのか?私の事を恨んではいないか?」


「フフフッ、殿下とは正直、恋愛と言うより、友愛や家族愛を感じていました。それに、私にもお慕いしている殿方が出来ましたの♪」


!?


「それは誰なんだ?」

「まだ秘密です。でも殿下と一緒にしないで下さい。私は胸に秘めて、殿下と一緒になる覚悟をしていたのですから」


ゼノン王子は再度頭を下げて、公爵家を後にした。そして、様々な根回しを行い、遂にシオン令嬢と婚約する事が出来たのだった。


「正直、ここまでされるとは思っていませんでした。アリア様のご実家には、条件なしで援助する予定もございましたので。………殿下の本気の気持ち、受け取りました。私などで宜しければよろしくお願い致します」


「ああっ!絶対に幸せにすると約束する!」


二人は顔を赤くしながら抱き締め合うのでした。




「上手く行きましたね」


「ああ、正直ゼノン王子は最悪の場合、王族から抜ける気持ちもあったようだ。しかし、平民になってシオンが苦労するのは、御免被りたいから裏から手を廻して良かったな」


アリアは微笑みながら言った。


「でも、必要最低限の手しか貸してないでしょう?」

「当たり前だ。大事な『妹』を任せるんだ。覚悟を見せて貰わないとな。それに──」


アリアを見て照れくさそうに言った。


「兄である私が、ゼノン王子の元婚約者であるアリアと幸せになるのに、ゼノン王子が不幸になったら寝覚めが悪いだろう?」


「まぁ!嬉しいですわ♪レイン様」



そう、シオンとゼノンの関係に、気持ちに気付いた二人は、お互いの情報交換を行っているうちに、恋心に目覚めたのだ。


「私は殿下を恨んでも怒ってもいません。だって、貴方の様な素敵な御方に出会える切っ掛けをくれたのですから」


そうかと、こちらも抱き締め合い、口づけを交わすのだった。


『でも、あのシオン令嬢と姉妹になるのも本当に嬉しいのですよ?』


アリアは新しい家族に胸をときめかせるのでした。そして、家族ぐるみで良き関係を築いていき、すぐに負債を返済してより大きな権力を握る事になる。




これがアネーデス王国に起こった出来事の一幕でした。



『よろしければ感想、評価、ブックマークよろしくお願いします!』



現在連載中の小説もよろしくお願い致します!

挿絵(By みてみん)


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