1日目②
森の中を無警戒に進む。本来なら川や水辺等を探すのがセオリーだろうと頭の片隅で考えるものの、ぼーっとした、どこか夢見心地の、まるで徘徊のようにただただ進む。
「貴様!?止まれ何者だ!」
道なき道を突き進むことしばらく。茂みから現れた俺。襟元をつかまれ、押し倒される。
「あいたっ!」
受け身も出来ず顔面を地面に押しつけられる。ぐりぐり
「急に現れおって!貴様も盗賊の一味か!?」
西洋の騎士のような甲冑を身に纏った人物。剣を帯刀しており、かなり興奮している様子。
「いえいえ、盗賊等滅相も無いことです。怪しい者ではございません」
殺されたくはない俺は、言葉遣いに注意しながら、西洋騎士に弁明。
「怪しいかどうかは貴様ではなく我が輩が決めること…まずい!?」
俺を茂みへと素早くひきづりこむ西洋騎士。片手で。大した怪力の持ち主である。
「一体、どういう状況なのでしょうか騎士様」
騎士っぽい見た目なのでそう声とかけると
「大声をだすな、出したら殺す」
「はい、承知しました」
恐らく本当に声をあげたら剣でばっさりだろう。死にたくはない俺は素直にうなずく
「…あれを見ろ」
騎士の向くその先にはログハウスのような建物。入り口付近には複数人の、怖そうな男たちが武装。辺りを警戒している様にみえた
「あれは?」
「盗賊の一味だ。そしてあの建物の中には、町から攫われた女たちがいる」
「差し迫った、状況なのですね」
「貴様が盗賊の一味ではないというなら、我が輩に協力しろ」
襟元を掴み上げ、凄む騎士
「私に、何ができると?」
「逆に貴様は何ができると?」
俺が出来ることなど何もない…いや、神(仮)から貰ったチートな能力【催眠呪文(極)】がある
「催眠呪文が使えます」
「何だと!?本当か?」
「はい、本当でございます」
「しかしあのような使えぬ呪文を…いやしかし贅沢は言えぬか…」
使えない、というのはどういう意味だろうか
「わかった。とりあえずあの見張りの連中に、魔力が続く限り催眠呪文を放て」
「恐らく奴らの魔力感知に引っかかるだろうから、敵を引きつけてから離脱せよ」
離脱といっても、どこに逃げれば良いのだろうか
「はあ」
「ではやれ」
「はあ…【スリープ】」
そう言って何となく右手をログハウスのような建物に向ける
すると建物入り口に居た男たちは、糸が切れた人形の様に次々と倒れていった
「は?うそでしょ?」
隣の騎士のきょとんとした声を聞き、声の主が女性であったことを知った。