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SIDE:エミリア
フェリ。
彼女の魔力はすごいのはわかった。
しかし、彼女の本職は冒険者ではなく冒険者ギルドの職員なのだ。
本当なら早くイリオゴストに戻してあげたい。
転移の方法としては、一つは魔道具「転移門」を作る方法がある。
これは全く同じ形の門が2つ存在するもので、片方の門からもう片方の門へ瞬時に移動できるというもの。
ただ、片方をイリオゴストに置かないと、イリオゴストには転移できないのだ。
どうしたものか。
・・・そうだ。私が最近覚えた魔法に、転移魔法があったのだ。
転移魔法。
あれは過去一度来たことがある場所であれば、場所を覚えていれば瞬間移動でその場所に移動できるというものだ。
ただ、この魔法は欠点もある。それは相当量の魔力を使用する。あとは、当然だけど、一度も行ったことのない場所へは転移できない。
そもそも今の私には魔力が足りないのではないかという心配があった。
だけど、彼女の魔力を借りれば、イリオゴストへ瞬時に移動できる。
(よし、これで行こう。)
「実は私、イリオゴストへすぐに戻れる魔法を知っています。でも、かなり魔力を食うので・・・そうだあなたの力を貸してくれる?」
複数人の魔力を一つの魔法にすることもできるのだ。
「はい、構いませんよ!私も転移魔法というものに興味がありますし、一旦覚えれば私もすぐにここに来れますからね。」
「でも難しいよ?覚えられるかな?」
「うーん、かなり難しそうな顔をしていますね。でも大丈夫ですよ」
「では、私が転移魔法を唱えるから、あなたは私の肩に手を添えていて。」
私は転移魔法を唱える。
そしてイリオゴストのギルドの入り口近くに転移する。
「成功!」
「そうですね!まさしくここはギルドの入り口の・・・横にある道路です。」
フェリは泣いて喜んでいた。
「あ、大丈夫です。これで転移魔法は覚えたので。次は私があなたのアトリエに行きますよ!」
フェリは私と別れ、ギルドへ走って行った。
「こっちはもう夕ぐれね」
これは誰にも言っていないのだが、実は私は前世の記憶を持っている。
私は前世では地球という星の日本という国で生きていた。
もしあの世界を超えて転移することができたら。
きっとフェリの魔力なら、世界を超えて、前世の世界へ転移できるのかも知れない。
今度フェリに相談してみようか。
(・・・あ)
私はうっかり失敗してしまった。
私も魔力を使ってしまい、私のアトリエに戻る魔力がなかったのだった。
いや、私にはまだ転移魔法を唱えるだけの魔力がないのかもしれない。
「アトリエに戻ったら転移門を作って、フェリの家に置いてもらおうか」
・・・というか、よくよく考えると、フェリと一緒にアトリエに行けばいいのではないか
という考えに至り、急いでギルドに向かいフェリに今度の休みの約束を取り付けるのであった。
そしてもそもそもの依頼達成報告もしないと。
SIDE:ギルマス
気づけば夕刻になっていた。
「それにしてもフェリシアをさらったあいつ、イリオゴストから出ていないはずだ。門からも出たとの報告がない。いったいどこへ」
そう呟いてると、なんと拐われたはずのフェリシアの声がするではないか。
流石に幻聴だろうと思っていたのだが。
「ただいま戻りました」
フェリシアが戻ってきた。
「一体、どうやって抜け出してきたんだ」
「簡単です。抜け出してきたんです」
よかった。とにかく無事だった。
「皆のもの、フェリシアは無事だぞ!」
そこにいた冒険者やギルド職員一同大喜びだった。
それはそうだろう。ギルドの一員が何事もなく無事だったんだからな。
そしてなりたてCランク冒険者のエミリア・ガーランドが現れた。
しかし、彼女確か、最低でも往復8日かかる場所へ行かなければ採れない素材収集依頼を受けていたはず。もう採れたのか?
「あの、依頼分の天使草となります。査定をお願いしたいのですが」
「はい!こちらへどうそ」
真っ先にフェリシアが案内する。拐われた身で仕事していいのか?疲れていないのか?と心配するが。
「大丈夫です。ちょっと疲れたぐらいなので」
そして、それが終わるとフェリシアとエミリア、Cランク同士のパーティー申請をギルドに出してきたのだ。
「あのな、フェリシア。お前さんはギルド職員だろう。パーティー組むと簡単にいうがかなり
力がいるぞ」
「その辺なら大丈夫です。なんなら私もランクアップ申請を受けます」
「おいおい数日前に冒険者になった者がいう言葉か?それこそ元宮廷魔術師ならわかるが」
「はい。私は元宮廷魔術師ですが、彼女は問題ないですよ」
「あ、そうなのか・・・はい。」
彼女たちのパーティー名、それは「ステラの箱庭」だった。
そしてフェリシアが。
「言い忘れていました。実は先ほどデモンズ魔王城を攻略しましたので報告しておきます」
「あ、そうか。じゃあ魔王の王冠を見せてくれ」
フェリシアはアイテムボックスから魔王の王冠を見せてくれたのだ。
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これは想定外だった。
デモンスは、確かに西のデモンズと言われるなど、急速に強さが増している魔王とされていた。
そのデモンズを倒したというのだ。
フェリシアが?いや彼女は場所的に無理だろう。
おそらくもう一人のエミリアが倒したと言っても間違いない。元宮廷魔術師だと言っていた。
やっぱり相当の強さがあると見ていい。
さてと、この件はお上に報告しよう。
彼女たちは思ったよりも早く昇格するだろう。
そしてまたしても、フェリシアが。
「あと、魔王城で出た魔物の買取は・・・・」
「しょうがない、いつもの倉庫に置いておいてくれ。」
また倉庫が満杯になってしまう。
(・・・しかし気になる。あのエミリア、なんでこんなに早く戻れたのか?)
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SIDE:フェリシア
ギルド名のステラの由来はって?
ステラと言う単語がパッと出てきたんです。
多分”ステラの木の実”が由来?
そうそう。
今日はもう夜になったので、今日エミリアさんは、私の家に泊まることになりました。
・・・なんか人を泊めるの初めて。
と思っていたんだけど。
「あー思い出したんだった。実はアトリエをアイテムボックスにしまったときに、アトリエないに転移門の一つを置きっぱなしだったんだった」
「そうだったんですね。こっからかなり距離が」
「いや大丈夫よ。もう一つの転移門、アイテムボックスにあったから」
「あ、そう・・・・・・えー!じゃあ、すぐに戻れるんじゃないですか」
エミリアさん、笑いながら転移門を出して、私の家の廊下にセット。
そしてアトリエへと向かっていったのでした。
「よかった、すぐに戻れて。でも、なんかちょっと残念だったかな。」
そして私は思い出す。エミリアさんに見てもらいたいものがあったことを。
「あ・・・・でも私も転移門をくぐれば・・・?」
はい、私もアトリエに戻ってきてしまいました。
なぜまたここに来たかって?実はエミリアさんに渡したいものがあったんです。
実は、あのステラの木の実。ノアくんの家?いや、魔王城ね。そこで2つもらっていたんでした。それぞれ赤いのと黄色いのと。
せっかくものがあるので、エミリアさんにも一度効果とか見てもらいたかったんです。
「へーこれがさっき散々言っていた木の実ね」
「そうなんです。美容にいいのに美味しくて」
エミリアさん、「鑑定」というスキルが使えて、これで人やアイテムを鑑定できるのだが。
「2つとも成分は同じだけど・・・・美容の効果もそうだけど、少なくとも魔力の上昇は間違いなさそう」
私が生まれつき超巨大な魔力を持っている・・・さっきの測定結果は実は信じたくなかった。なので外部的要因で魔力がついたと心の中で思っていたのだが、やっぱりそうだったのか。
「あ、この内容だと魔力は+10程度の増加ね。あ、黄色のやつのユニークなところは”ユニークスキルをランダムに付与する”ね・・・」
この木の実を食べて魔力上昇したのは150程度。
(150は人並みよりちょっと上の魔力)
「・・・でもこの黄色いのこれとてつもなく貴重な木の実よ!」
「え!?」
「だってこれはユニークスキルを後付けするものよ。ユニークスキルというのは、本来なら生まれつきなもので、後天的に着くものはないとされていたの。ランダムとはいえ、今までありえないとされていたことよ・・・!」
エミリアさんは私そっちのけで大喜び。世紀の大発見をしたみたいだった。
でも魔力増大とは関係なさそうだった。
「じゃあ、私の魔力が突然強大になったのは」
「やっぱり、信じられないけど・・・あなたは生まれつき強大な魔力があった、と言うことになるよね。」
私はやっぱり強大な魔力を生まれつき持っていたのか・・・・
やっぱり信じられなかった。でも信じるしかない。
そして私は気になっていた。
私はこの「鑑定」はなぜかどうやったのかがわからなかったのだ。大体の魔法はすぐにわかるのに。
「でも、あなたが大体の魔法を見てすぐに取得できるの、あなた、多分”スティール”というユニークスキルを持っていると思うの」
"スティール"スキル。これは魔法の多くや一部スキルを盗み取って自分のものにできると言うもの。ただし、このスキルは魔力を使うので魔力がなければただの宝の持ち腐れになる。
あと、スキルは魔力を使うもの・使わないものがあるらしくて、例えば「鑑定」は魔力を使い、魔力を使わないスキルとしては、アイテムボックスが代表例。
ただアイテムボックスでも、手持ちの魔力によって収納量に影響する。どっちにしろスキルと魔力は切っても切り離せない。
待って。
実は私、学校の時でも少しばかり魔法やスキルを見てきたはず。
なのにその時は全く構造を理解できなかった。見てすぐに理解できたのはあの木の実を食べてから・・・・。
つまりこうだ。
元々私には強大な魔力があったが、測定の結果魔力がないことにされて魔法を勉強してこなかったから魔法の唱え方を知らなかった。
しかし、木の実の「ランダムのスキル付与で」"スティール"スキルを手に入れて、スキルで魔法を覚えて魔法の力を手に入れた・・・こう考えるのが一番自然なのかもしれない。
・・・そしていろいろ話していたが。もう夜遅くになっていたのだ。
明日もお仕事でした。私は帰ります。
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あ、そしてもう一つ気になっていたことがあった。
「エミリアさん、今回の素材の報酬はどうします?」
「全部あなたのものよ。倒したのはパーティー組む前のことしょう?」
SIDE ケーブル王国 王室
「国王、報告があります。」
「なんだ」
「かねてより魔王討伐のために修行の旅に出ていた勇者候補の一人、アラン・スミスですが、彼はダンジョン攻略中に失敗し、帰らぬ人となりました。」
「なんだと・・・あれほどの技力を持った者として攻略できぬダンジョンとは。これはパーティーでの攻略は不可なダンジョンとみた。これはすぐに軍を向かわせた方がいいのでは」
「ご安心ください。ダンジョンはCランク冒険者により殲滅済みです。イリオゴストのギルドはSランクでさえ失敗するダンジョンをCランク冒険者に攻略することは不可能だ、攻略したのは勇者ではないかと言っていましたが」
「わかった。はあ...彼はまだ15歳だったからな。しかしこれで・・・」
「その点も安心してください。こちらも大事なことです。もう一人の勇者候補の ジン・ジェフレッドですが、彼は準備ができたのでライゼン城を目指すということでした。」
「それは本当か。いよいよライゼン討伐の日も近くなったか」
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「あと、これも朗報の話です。魔王、デモンズの件ですが」
「なんだ。」
「はい。すでに冒険者により殲滅済みです。報告によるとエミリア・ガーランドが倒したとのこと」
「なんだと?あのエミリアか・・・こいつには称号は与えたくない・・・はあ。」
(*魔王の王冠の扱いについて改編しました)




