201910061330
「そういえばゆい。ギルドに届ける住所は決めてないよね?」
「あ・・・そうだった。僕は竜球では住所不定状態だった」
「しょうがないわね。私のメリングーンにある住居を譲るわ。アパートの一室、しかも部屋が狭くてアトリエへの入り口としてしか使っていなかったけどね」
「そうだね、ありがとう。どちらにしても僕も東京が生活のメインだからね・・・あ、そうか。僕はまだイリオゴストにいる扱いだったんだ。」
「ユイシアさん?もしかして明日馬車に乗りますか?」
「いや無理だよ。明日も明後日も東京の方で仕事だよ?」
「そうですよね・・・。」
「まあ僕はあっちの方を優先だからね。」
「そうすると・・・6日後の馬車に乗ってメリングーンへ向かいます?」
「それも困ったわ。物件を譲るにはメリングーンの商業ギルドで当事者二人ともいないといけないからね・・・私も明日にはここを出るから・・・困ったわ」
「はあ・・・」
「そういえばフェリシアとトオルは転移や移動魔法が使えるだろう?」
「そうですけど」
「なのに、なんでギルドや門の警備を気にしないといけないんだ?」
「決まっているじゃないですか。ギルドで大騒ぎになったからです。そして私の場合、魔王デモンズを倒した時は(ノアくんのせいだけど)私はイリオゴストにいた扱いとなって、私が魔王デモンズを倒していないことにされたんですよ?まあ報酬はギルドとしてもらって実質私のものになってはいるんですけど」
「そうそう。あの時どうやってあんな速度で移動したんだとギルマスに怒鳴られたけど・・・私の説明で納得してくれなかったわ。結局"超強力な早馬で"誤魔化したけど、ギルドは"その早馬はどこだ"と今も探し回っているらしい・・・」
「つまりだ。ギルドや門の警備が納得できる移動方法であれば転移や高速移動でも問題ないと思うんだ。」
「まあ、確かにそれはあると思います。」
「それならだ。例えば高速移動できる魔物を使ってイリオゴストからメリングーンへ移動するのはどうかな」
「うーん。私はちょっとまずい気がするわ。敵として攻撃してきて、倒される可能性もあるわ」
「確かに弱い魔物なら攻撃でやられる可能性大ですね。なら強い魔物ならどうでしょうか。強ければ強いほど攻撃もびくともしないと思いますよ。」
「攻撃されてもびくともしない・・・それだわ!強い魔物と言ったらクロエ!」
「でも流石に近くにブラックドラゴンが来ると大騒ぎになるから、できるだけ街から離れてからクロエに乗って・・・」
「でもそれだと結局移動手段が見えないから・・・移動方法について門の警備に疑われる気がしますね」
「うーん・・・やっぱり絶妙の位置で門の警備に気づいてもらうしかないか。そしてブラックドラゴンに連れさわれたように見せかける。この強力な魔物に懐いていると疑われる可能性もありうる」
「それだったらいけるかもしれないわね。失敗するかもしれないけどやってみる価値はありそうね。」
「私もそれでいいと思います。ではやりましょう!」
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SIDE:ローラ
あたしはローラ・ワトソン。イリオゴストのギルド職員をしている。
フェリシアが旅に出てしばらく経った。
イリオゴストは相変わらず平和だ。
ダンジョン依頼も全くない。魔物もあれ以来全く出ていない。
あるのは薬草収集がメイン。
今は門にいて警備さんとすり合わせをしている。
そんな中、一人の人が門を通り抜けようとした。
最近登録したばかりのユイシアさんだった。
そういえばユイシアさんはギルドパーティーとしても個人としてもあまり活動をしていない。
「あの、すみません、個人での活動をするために一旦街から出るのでしょうか。」
やっと個人で活動をするのかなと思っていた。
「違うかな。今日をもってここを出て、メリングーンに住むことにした」
「はい、そうだったんですね・・・」
メリングーンへ行くことになったユイシアさん。やっぱりあそこの方が街も栄えているし、ギルドも繁盛している。
魔法が使えないと入れない街にいくユイシアさん、魔力値20くらいしかないけど大丈夫かな。
まあ、あたしはかつてのフェリシアみたいに魔力値1もないのであの街に行けないのだ。
「あの、歩いて行くんですか?明日なら馬車がありますけど」
「いいんだ、歩いて行く。ちょっと気分の問題でね。」
あたしはメリングーンへ出ていくユイシアさんを見送っていった。
・・・ここから街を去るのを見て、ちょっと悲しかった。
メリングーン方面を見ていたあたし。
すると、何やら黒い物体が・・・
「ちょっと警備さん。なんか見えますよね?」
「なんだ?あれか。あれって・・・おい!ブラックドラゴンだぞ!」
「なんだと!大事だ!ローラ、一緒にギルドへ行くぞ!」
ブラックドラゴン、超大物魔物だ。するともう一人の警備さん。
「おい!・・・あれって冒険者だよな。口で咥えられて攫われたぞ!」
「・・・嘘でしょ!ユイシアさん!!」
ユイシアさんがブラックドラゴンに攫われたのだ。
「急ぐぞ、ローラ。これは大事だ」
「はい!」
ところが。
「おい・・・ブラックドラゴン・・・離れていくぞ。」
「・・・てっきりこの街を襲うかと思ったよ。なんとかそれたか」
「でも冒険者が攫われたのは事実だ。行くぞ」
この後ギルドでは緊急招集、もとい緊急クエストが発生した。
この中でギルマスが興味深いことを言っていた。
「だが気になる。なぜユイシアを殺さずに口で咥えて攫ったのか・・・もしかしてあの魔物は人間を餌にするのか?今まで見つかっていない新しい習性なのだろうか?気になる。」
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SIDE:アドルフ
俺は今メリングーンの西門にいて警備と話をしていた。
すると、西の門から何やら魔物が近づいてきた。
「おい。あれはブラックドラゴンではないか?」
「はい、そのようですね。」
「ではすぐ攻撃にかかれ。ブラックドラゴンをこの街に入れるな。入れた時点で大惨事だからな」
「はい!しかし、あのブラックドラゴンはSSランクと言われる魔物です。我々だけでは」
「だからこそ、あるだけの冒険者を集めて総力で戦うのだ。俺はすぐにギルドに向かい緊急招集をかける」
そして俺が動こうとすると警備が。
「すみません、マスター。どうやらブラックドラゴン、冒険者らしき人物を咥えています。いや冒険者が抵抗しているようです」
「マスター!、ブラックドラゴンが街から離れていきます。そして冒険者を離しました!」
「そうか・・・なんとか襲わなくてよかった。問題は冒険者が無事かどうか」
すると。
冒険者は普通に立ち上がり、こちらに向かってくる。
俺は安堵した。
ブラックドラゴンで生きていられる者、つまりブラックドラゴンと健闘した者ということだ。
これはAランク以上の冒険者だろう、と思っていた。
「ようこそ、メリングーンへ。俺はここのギルドマスターだ。先ほどブラックドラゴンに咥えられていたが、大丈夫か?」
「大丈夫です。はい、ギルドカード」
なんと冒険者になりたてのFランク冒険者だったのだ。
まあ確かに元宮廷魔術師などが冒険者になることはあり、その場合でも最初はF。きっとその類だろう。
メリングーンに入る条件は魔力は10以上、もしくは魔法さえ使えればいい。
フェリシアみたいに、魔法が使えるのに魔力測定値が1未満になるケースがあるためだ。
そして彼女の魔力は20程度。
・・・とギルドカードよくみると男性だった。失礼した。
「ところで、商業ギルドはどちらにありますか?」
「商業ギルドか。こっち方面だな。それよりも、まずは今回のブラックドラゴンに襲われていた件について、冒険者ギルドの方で話を聞かせてもらえないか」
俺は任意で事情を聞こうとした。
「すみません。急ぎで不動産の話があるので」
そちらも急ぎなのか。まあ仕方がない、後で話を聞こう。
これは大ごとになりそうな予感?
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