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彼の正体は!!!

 あいつがバスタブの私の横に滑り込んだその時、私は恐怖ではなく風呂に逆上せて意識を失い、目を覚ましてみれば、私はリビングルームのソファに仰向けで横たえられていた。

 私の目元には冷たいタオルが置かれていて、どうやら彼が私を介抱をしてくれていたようだ。

 しかし、ププルが私の胸の上に乗って私のろっ骨を圧迫骨折しようと企んでいるのに、この重い彼女をどかしてくれないという点で、実は拘束されている状態なのかと訝しんでいた。


 タオルを外して視界を取り戻して状況を把握するべき?


 でも、周囲で男は歩き回っているようだし、このまま意識を失った振りをしていた方が安全じゃない?


 あ、でも!全裸だった私はバスローブを着ている!


 あの男が若い私の身体に何もしようとしないって事は、あの男は実は紳士だったのでは無いだろうか?

 こうして介抱もしてくれているのだし。


 プチっとテレビモニターが点いた音と、同時にプシュッと炭酸らしきものが入っているらしき缶を開けた音が聞こえた。

 私に何かする気は全く無いらしい。

 いや、いい事なんだけど、……さ。


――なんだその体は!気味が悪いくらいにバキバキじゃないか!


 婚約者ジーゼルの言葉が頭にフラッシュバックして、私はこの男もそうなのかと認めた。

 ジーゼルにあんなこと言われたってお父さんに泣きつきながらお腹を見せたら、お父さんもそっと私の腹から視線をそらしたではないか、と。


 こら、マルファ。

 あんな無頼者に何とも思われていなくて良かったと思いなさい!


 専業主婦の母は当たり前だけど、銀行員の父や公務員で福祉関係だったお祖父ちゃんと同じ職場だったらしいお祖母ちゃんが絶対に付き合いそうもない、あんな入れ墨を入れた大男じゃ無いの!


 ……もしかして強盗?

 でも、私の名前を知っていたわ。


 脅えながら目元のタオルを動かしてリビングルームの様子を伺えば、家族の写真が飾ってある棚の上に主役級として幼い頃の私の写真が飾ってあった。

 ああ、よく覚えている。

 母が誕生会に縫ってくれた、どピンクなドレスを着た十歳の私の写真だ。

 大きく引き伸ばして、私が女優みたいにサインして祖父母に手渡した写真だ。

 愛を込めて、マルファ。


「――次のニュースは麻薬王の――。」


 あら、ボリュームが大きくなった。

 この男が興味があるニュースって、え!三か月前に一斉検挙された麻薬組織のニュースよね!

 昨日だったか一昨日だったか、幹部が数名脱獄したって話の!


 私も耳を澄ませたその時、ププルは自分が猫であったと思い出したらしい。

 急に私に向かって鳴き出したのだ。


「にゃあああああ、うにゃうにゃうにゃ。うにゃあああああん。うーにゃんうにゃにゃ。にゃああ。」


 普段だったら、お喋りさん、で可愛がるが、ちょっとププル!今はうるさい!!


「――依然として逮捕には至りませんが、近隣の方は以下三名の逃亡犯を――絶対に近づかずに近隣の警察へご相談ください。麻薬組織キマイラの構成員はとても危険です。」


 キマイラ?

 ああ!あの入れ墨はキマイラだ!


 完全にビビってしまった私に空気を読まない猫が思いやってくれるはずはなく、逆に構って貰えないと怒ったププルが私の額に猫パンチをお見舞いしてきた。

 どでかい猫の体重をかけた両手攻撃だ。

 どかんとパンチを受けた私は、きゃあと叫んで飛び起きた。


 テレビを見ていた男は、不機嫌そうな顔を私に向けた。

 寝たふりはもうできない!

 私の中で人生の終了のベルが鳴った気がした。

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