ハッピーエンドは一緒につくろう!
カイルは半人前だったそうだ。
リビングの床に四つん這いになり、ダラダラと汗による水たまりを作っている彼は、JJの振り付けについて行けずに全身をガクガクを痙攣させてもいた。
確かにあれは凄い振り付けだった。
私だって五分の一ぐらいでリタイヤしたのである。
しかしカイルは頑張った。
最後まで踊り切ったかに見えたのに、残り数秒で足を絡ませて倒れたのだ。
「わお!ごめーん。最後の声掛け、少しわかりにくかったかもだね~。転んじゃった子もいるかな?ざんねーん!では、よい子の皆、また今度ねぇ~!」
ぶつっと映像は消え、エンディングロールが流れ、それも終わると真っ暗な画面に戻った。
ソファに座る私と、ソファの前で四つん這いになっているカイル。
物凄く残念な姿のカイル。
情けないぐらいの、カイル。
でも私は、彼が可愛い、なんて見つめていた。
時々パパが情けないと思う時もあったが、今ここでそんな姿のパパにこそママが惚れ直していたんだと気が付くくらいにJJにしてやられたと嘆くカイルが可愛らしかった。
私はソファから立ち上がるとカイルの横にしゃがんだ。
「すまない。はあ。俺は君との幸せを守りたかったのに。ちくしょう、まだ半人前だ。君と今すぐに結婚が出来なくなった。畜生!俺はいったいいつ君とウエディングベルが鳴らせるんだ!」
「ふふ。それは一緒に悩みましょう。でね、今日のこの今は汗びっしょりじゃない?ええと、一緒に汗を流しっこしない、かな?」
嘆いていたカイルはぴたっと嘆きを止め、私に顔をあげて彼の顔を見せつけて来た。
とっても嬉しそうな、ミルクを見つけた時の仔猫の顔のような、そんな幸せ溢れた素敵な笑顔だ。
私はそれだけですっごく幸せになってしまった。
「シャワーに、行く?」
「君と一緒ならどこにだって行くよ。結婚できなくても君の後を追いかけて、君の傍にずっといるだろう。君が嫌がってもね。」
私達は微笑みあうと手を繋ぎ合った。
どこまでも一緒に行こうって、そんな気持ちで。
とりあえずはシャワールームだけど。




